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ナイター競馬を考える

  • 2011年04月08日(金) 00時00分
 来週12日(火)から川崎競馬が開幕。大震災から1か月経って、ようやく南関東地方競馬が再開されます。JRAも23日からの東京、新潟競馬開催へ向け準備を進めているところ。少しずつではありますが、東日本の競馬も動き出しました。

 この春の南関東や東京の競馬は、ありとあらゆる節電策を講じた上で開催されます。川崎では、ナイターから昼間の開催への移行、レース数の削減、レース間隔の短縮、使用するスタンドの限定、ドリームビジョンの使用中止などで電力消費量を極力抑えます。その後に再開される他場の競馬も、これにならって行われるはずです。

 東京電力管内での計画停電は当面実施されないことになりました。競馬にとっても、まずはひと安心。よほどの事態の急変がなければ、春のシーズンはどうやら乗り切れそうです。しかし、問題は夏。まだ先の話とはいえ、電力不足が起こるのは必至で、春以上に大胆な節電策が求められます。

 ただ、ご存知のとおり、夏の電力消費のピークは「平日の昼、1時頃から3時頃」と言われています。一日のうちで気温が最も高くなる時間帯に、職場や商業施設、家庭などで冷房の使用が集中するため、とのこと。電気を使う側は、節電と同時に、この時間帯に電力需要量が供給量を上回らないよう、“ピークを外す工夫”をしなければなりません。

 だったら、夕方5時頃からのナイター競馬はOKですよね。競馬場や東電管内の場外発売所の開場時刻を極力遅くすれば、「平日の昼、1時頃から3時頃」を外して開催できます。もちろん、夜なら電力は使い放題というわけではありません。馬がコースにいるとき以外のナイター照明を暗くする、イルミネーションや空調完備の“特観席”の使用を制限する、といった節電策は必要不可欠です。

 大井と川崎はこれでしのぐとして、船橋と浦和、それに中央はどうしましょう。中央は開催日が土日なので、平日のピーク時とはバッティングしません。しかも夏は、福島、新潟競馬のシーズンです。これはともに東北電力の管内。両競馬場で予定どおりに競馬が開催されれば、東京電力の供給不足は回避できます。ただし、福島は地震の被害と原発事故の影響が大きく、開催は難しそう。JRAとしては、売上が見込める東京か中山で代替開催を実施したいところでしょうが、ここは、新潟か札幌、函館、小倉に持っていくのが妥当と思われます。いずれにしても、首都圏のウインズをすべて平常どおりにオープンさせるのは無理かもしれません。

 一方、船橋と浦和は、薄暮競馬にするくらいしか手がなさそうです。いっそのこと、船橋、浦和の主催競馬を大井か川崎のナイターで実施、地元は場外発売所にする、なんていうことはできないものでしょうか。

 とにもかくにも、今年は特別な夏になることを、今のうちから覚悟しておきましょう。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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