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南関東の新年度開催がスタート

  • 2011年04月16日(土) 00時00分
 大震災から1カ月。12日には南関東の新年度開催がスタート、16日(土)からは関東地区のウインズ(新宿を除く)が再開されるなど、競馬界でも徐々に“復旧”が進んでいます。休止中のマイナスを取り戻すのはなかなか難しいでしょうが、とりあえずホッとする話題です。

 一方、被災地のまっただ中にある岩手競馬は、ある程度予想されたこととはいえ、深刻な状況に陥っています。今週、岩手と宮城の地方紙、「岩手日報」と「河北新報」に、その経営危機を伝える記事が相次いで掲載されました。

 両紙の記事によると、岩手競馬の被害総額は10億円以上。内訳は、津波で全壊した釜石場外が約6億円、機器が浸水した宮古場外が約750万円、地震でスタンドが大きく損壊した水沢競馬場が約3億円などとなっています。だだしこれは、先月11日の地震・津波の後に算定された金額。今月7日の余震でさらに約1億円の被害を受けており、その分を含めた総額がいくらになるかは精査中だそうです。

 県競馬組合では「昨年度の売上高5億5000万円だった釜石は再建しない方針で、宮古も被災地の住民感情も考慮し当面営業を見合わせ」ます(河北新報)。

 また、「水沢競馬場は大規模な耐震補強工事が必要」(岩手日報)で、それにはかなりの期間と多額の経費がかかると予想されます。今後の水沢競馬は、当分の間、盛岡に振り替える予定にはなっているものの、中止された4月分の代替開催は行われません。昨年の開幕1カ月分の売上高=27億7000万円が、今年はゼロになってしまいました。

 5月の盛岡から競馬が再開されたとしても、被災地にの競馬ファンには「馬券どころではない」という方が多いはず。本場や各場外で震災前の見込みどおりに売上を確保することはできないでしょう。組合では「本年度、179億円の売上を見込んでいた」とのことですが、この額は大幅にダウンします。

 こうした状況の中で、岩手競馬は存続できるのか。水沢競馬場のある奥州市の小沢市長は、「『競馬廃止は地域経済へのダメージが大きい」と存続の必要性を強調」、「『赤字を出しては復興競馬にならない。単年度の収支均衡は守っていく』と述べ、存廃条件維持を前提に他県の関係団体の支援を得て経営再建を模索する考えを示した」(岩手日報)そうです。しかし、見通しはかなり厳しいと言わざるを得ません。

 ここは、岩手競馬の廃止が、小沢市長の言う“地域経済に与えるダメージ”だけでなく、日本の競馬界全体に及ぼす影響も考える必要があります。JRAにとっても、福島競馬場での開催が困難な状況にある中、岩手の事態は他人事と言ってはいられないでしょう。

 日本が1つにならなければ乗り越えられない危機。競馬にも、地方と中央の一致団結が求められているはずです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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