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中山グランドジャンプの名物

  • 2011年07月02日(土) 12時00分
 当コラムが更新される7月2日(土)、中山競馬場では「中山グランドジャンプ」が行われます。本来は4月に開催されるレースですが、今年は震災の影響でこの時期に移行されました。暑い中、4260メートルもの長丁場を走る出走馬の“みなさん”、ご苦労様です。

 ご存知のとおり、「中山グランドジャンプ」のルーツは「中山大障害」。1934年に創設された伝統の障害重賞で、今でも秋には同名のレースが行われています。

「中山グランドジャンプ」と「中山大障害」の名物といえば、最難関の障害「大竹柵」と「大生け垣」ですが、実は、われわれの間では、ここに出てくる「大」の字を「だい」と読むか「おお」と読むかが議論の的になっていました。

 私は「大障害」は「だいしょうがい」、「大竹柵」と「大生け垣」は「おおちくさく」、「おおいけがき」と読んできました。一方、ラジオNIKKEIの実況では、「大竹柵」は「だいちくさく」になっています。また、「ウイニング競馬」でおなじみの原良馬サンによれば「昔は『おおしょうがい』とも言っていたよ」とのこと。さぁ、どれが正しいんでしょう?

 私の読み分けの根拠は、ズバリ“雰囲気”。私の中では、いわゆる音読み熟語の前は「だい」、訓読み熟語の前は「おお」というのを“原則”としていました。実際、漢語の前は「だい」、和語の前は「おお」と読む原則があるそうです。なので、「大障害」は「だいしょうがい」、「大生け垣」は「おおいけがき」。その“原則”に従ったまでで、迷うことはありませんでした。

 問題は「大竹柵」。私は「竹(ちく)」は音読みで「柵(さく)」は訓読みと思っていたんです。前が音読み、後ろが訓読みのことを“重箱読み”と言いますが、そのパターンだな、と。で、こういう場合は「おお」でも「だい」でも、どっちでもいいというのが私の“原則”。ただ、なんとなく収まりがよさそうなのは「おお」かな、ということで「おおちくさく」と読んできたわけです。

 ところが、漢和辞典を調べたら「柵(さく)」は音読みでした。つまり、ラジオNIKKEIのほうが正解。原則的には「だいちくさく」と読むべきなのです。

 でも、岩波書店の「日本語使い方考え方辞典」には、漢語の意識が薄い熟語(例えば、地震、火事、所帯、騒動など)の前では「おお」と読んでも問題ない、ということが書かれています。「竹柵」も、漢語の意識が薄い熟語、と考えてもいいんじゃないですか?

 ちなみに、番組スタッフがJRAに問い合わせたところ、「『おおちくさく』でも『だいちくさく』でも、どちらでも構いません」という“公式見解”が出たそうです。

 以上の理由により、今後も私は、「だいしょうがい」、「おおちくさく」、「おおいけがき」と読むことにさせていただきます!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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