“夏の甲子園”、第93回全国高校野球選手権大会が開幕しました。野球好きにとっては待ちに待った季節の到来です。私がテレビ中継の実況と決勝(勝利監督・主将)インタビューを担当している埼玉大会では花咲徳栄が優勝、甲子園への切符を手にしました。
その花咲徳栄と春日部共栄が対戦した決勝戦。勝負の分かれ目は、花咲1点リードで迎えた8回表、春日部の攻撃にありました。
春日部共栄は2死から反撃。2人が相次いで出塁して1、3塁のチャンスを迎えます。1塁ランナーが帰れば逆転です。
バッターは、この試合それまでに2本のシングルヒットを打っている選手。守る花咲徳栄は外野手を後ろに下げ、逆転ランナーの本塁生還を防ぐ守備隊形を取ります。さらに1、3塁手も、外野手同様に長打を警戒してベース後方のライン寄りに位置しました。
これを見た春日部共栄は、1塁ランナーが2塁へ盗塁、シングルヒットでも逆転できる形を作ります。
すると、花咲徳栄の外野は前進守備に変わり、前へのヒットを打たれても2塁ランナーを本塁に帰さない態勢を整えました。
で、結果は…。バッターが打ったセンター右前のヒット性の当たりを、前進守備の外野手が好捕。春日部共栄はチャンスを逸し、花咲徳栄がそのまま逃げ切ったのです。
ここまでご説明した両チームの一連の動きは、いわゆる野球のセオリーに従ったもの。野球ファンからは「それがどうした?」と言われてしまう、ごくフツウの出来事です。
でも、もし攻撃側が1塁ランナーを盗塁させずに1、3塁のままで攻めていたら、(外野手は深い守備位置だったわけですから)あのセンターフライは同点のタイムリーヒットになっていたと思います。
「それは結果論」?。ハイ、そのとおりです。とはいえ、高校生の打撃力からすれば、一打逆転の長打よりもミートを心がけて単打を狙ったほうが、ヒットの出る確率は高まるはず。まして、1、3塁手がライン寄りにいて、外野手が深い守備隊形を取っていれば、単打のヒットゾーンは広がります。ヒットゾーンが広ければ、バッターのプレッシャーも違うでしょう。まだまだ書きたいことはありますが、ここはこのへんでやめておきます。
とにかくあの場面では、単なる「結果論」ではすまない、野球の奥深さを感じました。端的に言えば「セオリーは絶対か?」ということです。
騎手の騎乗フォームも同じこと。日本では、馬の首の付け根に小さく収まり、ヒザをギュッと締め、上下動の少ないスムーズな動きで馬を追うのがセオリーのようです。しかし、大井の的場騎手やJRAの岩田騎手、川須騎手の騎乗フォームは、それとはちょっと違って見えます。
セオリーの先に何かがあるような、そんな気がするんですけど…。