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「7冠馬」の在りし日の姿

  • 2011年10月08日(土) 12時00分
「7冠馬」シンボリルドルフがこの世を去りました。

 何を隠そう、私の競馬実況デビュー戦は1985年の有馬記念。シンボリルドルフが「連覇」を果たした、あのレースでした。文化放送に入社して3年目。日曜夜6時からのスポーツ番組の中で、実況録音が放送されました。

 当日は小雨まじりの空模様。場内がかなり暗くなって、帽子や勝負服の色が見分けにくかったのをよく覚えています。ところが、肝心のレースをどんなふうに喋ったか、なかなか思い出せません。

 とはいえ、ミホシンザンとニシノライデンの際どい2着争いを尻目に、シンボリルドルフが1頭だけ抜きん出てゴールしたところは、どうにか無難に喋ったはずです。録音はそのままオンエアされましたし、ミスを指摘された記憶がありませんから。

 私が同馬のレースを実況したのはこれが最初で最後。でも、1レースでも実況できてよかったと思っています。

 話はガラッと変わりますが、シンボリルドルフにちなんだお酒があるのをご存知ですか? その名も「七冠馬」という銘柄。島根県仁多郡奥出雲町の簸上(ひかみ)清酒さんが造っています。同馬のオーナーだった故・和田共弘オーナーの奥様、容子さんは、この酒蔵のお嬢様。その縁を元に、簸上清酒の田村明男社長が、今から15年ほど前にこの新ブランドを立ち上げました。

 実は私、東京での「七冠馬」のお披露目パーティーで司会をさせていただいたんです。以来、何度か田村社長とお会いしていますが、そのたびに「ルドルフは元気ですよ」というお話をうかがってきました。

 簸上清酒のホームページには、牧場で撮影された同馬の写真が数多くアップされています。それを見ると、まさに社長のおっしゃるとおり。同馬は貫禄十分に余生を過ごしていたようです。残念ながら今では「在りし日の姿」となってしまいましたが、同馬を忍ぶには絶好のコレクションだと思います。

 それともうひとつ、中山馬主協会のホームページにある「ホースマンサロン」というコーナーでは、去年12月から今年6月まで、容子さんのインタビュー記事を連載していました。シンボリ牧場にまつわる様々な秘話の中に、当然ながらシンボリルドルフも出てきます。こちらも必見です。

 シンボリルドルフを相撲にたとえれば、1年先輩の3冠馬ミスターシービーと一足早く日本馬初のジャパンC制覇を果たしたカツラギエースを「露払い」と「太刀持ち」に従えて土俵入りした大横綱、と言ってもいいでしょう。こんな「ぜいたく」、ディープインパクトにもできなかったことです。

 今年、オルフェーブルが、シンボリルドルフ以来となる新潟デビュー馬のダービー制覇を果たし、3冠制覇に王手をかけています。これも、何かの因縁でしょうか?

簸上清酒のホームページ=http://www.sake-hikami.co.jp/
中山馬主協会のホームページ=http://nakayama-racehorseowners.or.jp/

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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