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レースに本格的な“冠”スポンサーを

  • 2011年11月05日(土) 12時00分
 プロ野球・横浜ベイスターズの経営権譲渡問題、ようやく決着したようですね。DeNAが経営権を取得して、日本のプロ野球史上初めて、ゲーム業界の企業が球団を経営することになりました。

 かつて、プロ野球のオーナー企業と言えばほとんどが新聞社か鉄道会社でした。そもそも、1936年(昭和11年)の日本職業野球連盟(現在の日本プロ野球機構の前身)発足時に名を連ねたのは、東京巨人軍、大東京軍、東京セネタース、名古屋軍、名古屋金鯱軍、大阪タイガース、阪急軍の7チーム。このうち、巨人はもちろん読売新聞、大東京は國民新聞、名古屋は新愛知新聞、名古屋金鯱は名古屋新聞、大阪タイガースは阪神電鉄、阪急は阪急電鉄が親会社になっていました。つまり、7チーム中6チームは新聞社か電鉄会社の経営だったわけです。ちなみに東京セネタースは、貴族院議員の有馬頼寧氏(有馬記念のあの有馬氏です)が所有、西武鉄道(今の西武新宿線などを走らせていた会社。今の西武鉄道は池袋線などを持っていた武蔵野鉄道が前身で、この当時の西武鉄道とは無関係)が後援するチームでした。

 これがプロ野球のルーツということですが、ここに競馬との共通点があります。JRAの重賞や特別レースの“冠”になっているのも、ほとんどが新聞、テレビ、ラジオのマスコミ各社と電鉄会社ですよね。

 それ以外のレースの“冠”となると、アメリカジョッキークラブ、韓国馬事会といった海外の競馬団体や、アルゼンチン共和国、ブラジル、サウジアラビアなど、国そのものが思い浮かびます。でも、一般の企業は皆無。以前は中京記念にトヨタ賞というタイトルが付いていましたが、これは希有な例と言っていいでしょう。

 プロ野球は、戦後になって映画会社(松竹、東映、大映)や食品業界(大洋漁業、ヤクルト、ロッテ、日本ハム)などが参入。さらにパリーグでは、電鉄会社が次々と撤退し、それに代わって、ダイエーやオリックス、ソフトバンク、楽天といった新しい企業が球団経営に乗り出すようになりました。

 一方、JRAの“冠”会社は、相変わらずマスコミと電鉄会社に限られたまま。さらに、“冠”が付いているとはいっても、レースの賞金はJRAが馬券の売り上げの中から拠出しているので、企業側が提供するのは、本賞金とは比較にならない程度の副賞にとどまっています。

 もしJRAが、海外の競馬のように本格的な“冠”スポンサーの導入を解禁したら、はたしてどんな企業が名乗りを上げるでしょうか?「馬主サンが絡んでいる会社がスポンサーになると、いささかややこしいことになるかも」という話が出てきそうですが、じゃぁ「エミレーツ航空の“冠”レースはどうなの?」ですよね。レースに本格的な“冠”スポンサー、私はアリだと思うんですけど。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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