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地方競馬場のウインズ化

  • 2011年11月12日(土) 12時00分
 来月3日(土)から、川崎競馬場でJRAの馬券が発売されます。

 同競馬場の発表によれば、JRAの全日程、全レースでWIN5を除くすべての賭け式を発売するとのこと。場所は同競馬場の1号スタンド(ゴール前のメーンスタンド)と内馬場の投票所で、1号スタンド4階は1席1000円の特観席とするそうです。まさに本格的な場外発売所。「ウインズ川崎」と名乗るだけのことはあります。

 来年3月までの南関東地方競馬の日程を見ると、JRAと開催が競合する日はありません。おそらく来年度(2012年4月)以降もそういう日は作らず、土日(と祝日の一部)はJRA、平日は南関東というスケジュールが定着していくでしょう。川崎競馬場を「ウインズ川崎」にしても、問題はないわけです。

 それなら、「大井や船橋、浦和もウインズにしちゃえばいいのに」という話になりますよね。でも、船橋は中山に近すぎる、とか、住宅街の中にある浦和は近隣住民の了解を取り付けられるかどうかがわからない、など、それぞれに“お家の事情”を抱えています。これら3場のウインズ化は、川崎ほど簡単には進められないかもしれません。

 園田や名古屋についても同じことが言えます。園田は浦和に似たような状況。まず、住宅街のまっただ中にあるので、周辺住民が「OK」を出すかどうか。園田ではいまだにナイター競馬の同時場外発売さえできないんですから、土日のウインズ使用なんて「もってのほか」と言われてしまいそうです。

 さらに、最寄り駅(阪急園田)に特急が止まらないとか、駅からの距離が遠い(送迎バスがあっても乗り換えの手間がかかる)といった条件も不利。ファンにとってはウインズ梅田や神戸のほうが行きやすいはずです。

 名古屋も、アクセスの点ではウインズ名古屋のほうが便利。同競馬場をウインズにしても、どれほどの集客ができるかどうか疑問です。

「ウインズ川崎」のオープンは、「平成22年に合意した『中央競馬と地方競馬の勝馬投票券の相互発売の拡大について』に基づく取り組みの第1弾」とされています(川崎競馬場の発表)。地方の競馬場で本格的にJRAの馬券が発売されるのは平成24年度以降と聞いていましたから、今回はずいぶん早く話がまとまったものだと思います。でも、その後はどうなるでしょう?

 先に書いたように、南関東や愛知、兵庫の、いわゆる“3大都市圏”の地方競馬場の中には、ウインズ化する際にクリアしなければならない(あるいはクリアできない)問題を抱えているところがあります。中央と地方の相互発売拡大は、方向としては間違っていないのですが、その話に乗れない地方競馬場があるとなると、一筋縄ではいかないなぁと思ってしまいます。問題解決の妙案を考えないといけませんね。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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