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勝負の仕方

  • 2011年11月26日(土) 12時00分
 先週の当コラム、野球の話が長すぎて、競馬の話が言葉足らずになっちゃいました。なので、今週はその続きです。

 私が言いたかったのは、馬券で大きく儲けるためには、どこかで思い切った勝負をしなければならない、ということ。例えば、馬複で買うところを馬単にするとか、3連単ボックスで買いたい気持ちを抑えて頭を決めたフォーメーションにするとか・・・。

 でも、そういう勝負を何度もやっていると、なかなか当たらなくなるのがふつうです。そこで再び“安全策”を取りたくなる。でもそれでは、大儲けすることも少なくなってしまいます。競馬に限らず、ギャンブルってそういうものですよね?

 そこでまた野球の話に戻りますが、今回の日本シリーズを見ていて、「勝負って何だろう?」とあらためて考えさせられたんです。それは、中日・落合監督のおかげと言ってもいいでしょう。

 先週も書いたように、今回の日本シリーズで落合監督が攻撃で思い切った仕掛けをした場面はほとんどなかったように見えました。結果はソフトバンクの優勝。これで同監督は、中日を率いた8年間で5回も日本シリーズに出場しながら、日本一になれたのは1回だけに終わってしまいました。しかもその1回は、セリーグ2位からクライマックスシリーズを勝ち上がってのもの。セリーグ優勝して進出した日本シリーズは1度も勝てませんでした。どうしてでしょう?

 シリーズ後の退団会見で、同監督は「(選手には)基本に忠実に、ふつうのことをふつうにさせた」と語っていました。この姿勢で守り重視の“負けない野球”を続けられれば、半年以上に及ぶ長いペナントレースは確実に勝っていける。ところが、わずか数戦のうちに勝負が決まる日本シリーズでは、どこかに思い切った仕掛けをしなければいけないところがある。しかし、同監督はそうすることが苦手なのではないか、と思ったわけです。

 これは競馬にも当てはまるような気がします。長く馬券を買い続けて、トータルが少しでもプラス(あるいはトントン)になればいいと思うなら、穴狙いより堅い馬券を地道に当てていったほうがいいはず。冒険することを控えた“負けない馬券作戦”が有効です。反対に、短期間に大儲けしたいなら、ここぞというところで一発勝負をかけなければなりません。思い切りよくそういうことができる度量が必要です。

「どうしたいか?」より「どういうタイプの人間か?」で勝負の仕方=馬券の買い方を決めないと、ロクなことはない。今回の日本シリーズを見て、ふとそう思ってしまいました。負けたくないし、大儲けもしたいというどっちつかずのタイプで、しかも基本的なところが未だによくわかっていない私のような人間は、どうすればいいんでしょう?「馬券を買うな」ですって?それは切なすぎます!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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