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荒尾競馬場に行ってきました

  • 2011年12月03日(土) 12時00分
 1日(木)、レディースジョッキーズシリーズ=LJS第2ステージが行われた荒尾競馬場に行ってきました。

 ご存知のように、今月23日をもって競馬開催が廃止される同競馬場。最後の日には別の仕事があって行けないので、この日に狙いを定めました。当日の場内は、LJSを楽しみにしている追っかけファンや、私のような見納め組、さらにJRA交流競走に騎乗しトークショーにも出演するという武豊騎手目当てのご婦人方などが入り交じって、平日とはいえけっこうな賑わい。そのせいか、これが見納めという寂しさを、いくらか和らげてもらったような気がします。

 実は、私の地方競馬場巡りや、さらにその先の海外競馬場巡りの“スタート地点”になったのが荒尾競馬場です。このことはあちこちでお話ししたりコラムのネタにしたりしてきましたから、「またその話か」という方もいらっしゃるでしょう。25年くらい前、大相撲九州場所中継の仕事の合間を縫って行ったんですが、中央と南関東以外の競馬場に足を踏み入れたのは、それが初めてでした。

 見たこともないスタイルの競馬新聞(今でも『荒尾競馬ホース』という専門紙にその名残が見られます)や、本馬場入場の時に流れる行進曲(『五木の子守歌』をアレンジしたもの。一時、ふつうの曲になったので、私がどこかに『それはつまらない』と書いたら、それが効いたかどうかわかりませんが、また復活しました)、聞いたことのないお国なまりのヤジ、そしてなんといってもスタンドから見える風景(海をはさんでその向こうに山=正面は多良岳、左手奥は雲仙。これほどダイナミックな借景を持つ競馬場は世界的にもまれです)。どれをとっても新鮮で、「こんなに個性豊かな競馬場があるなんて。だったら、他の地方競馬場にも行ってみたい」と思ったのが、私の“ライフワーク”を決めるきっかけになったと言ってもいいくらいです。

 中津、益田、三条、上山、足利、旭川・・・。いかにも地方らしい競馬場が次々に廃止される中、荒尾は私にとって“原点”であり“最後の砦”でもありました。賑わいを見せていた競馬場を後にして、(馬券もサッパリ当たらなかったので)トボトボとJR荒尾駅に向かって歩いていると、あらためて寂しさがこみ上げてきました。

 それを紛らわせてくれたのは、斎藤修サンがコラムに書いていたうなぎ屋さん。時間があったので立ち寄って食してみたら、これがなかなかの美味。大正5、6年頃創業という、知る人ぞ知る名店だそうです。おかげで財布の中身はさらに寂しくなりましたが。

 それはさておき、センチメンタリズムだけで地方競馬が持ちこたえられるはずはありません。競馬を取り巻く環境が今のままなら、地方競馬場の数はさらに少なくなってしまうでしょう。“効率優先”の時代は、曲がり角に差しかかっていると思うんですけど。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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