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ばんえい競馬の「あり方検討会」

  • 2011年12月10日(土) 12時00分
 4日と5日、帯広のばんえい競馬に行ってきました。このところ一段と寒さが厳しくなりましたが、それとともにばんえい競馬も佳境を迎えます。年末は大井のふるさとコーナー、年始は正月開催の川崎競馬場でも何かしらのイベント付きで馬券が発売されますから、お近くの方はぜひ、“世界で1つだけの競馬”をお楽しみください!

 ところで、ばんえい競馬を主催する帯広市は、今年、「ばんえい競馬の継続開催に向けて、学識経験者や市民等から意見を求め、これを行政に反映させることを主な目的として」、「帯広市ばんえい競馬検討委員会」を設置しました(同市のホームページから引用)。いわゆる「あり方検討会」です。

 その委員会が、半年に及ぶ議論を積み重ねてきた末、先月、「報告書」をまとめあげたのですが、これが“画期的”と言ってもいいくらいの内容でした。そこで、今回の当コラムで一部をご紹介させていただきます。

 とにもかくにも何が“画期的”かと言えば、その締めくくりに「北海道の開拓の歴史を伝える文化であり、貴重な地域資源であるばんえい競馬を、(中略)未来に引継いでいくことを切望するものです」と書かれているから。さらに、報告書の中には「世界で唯一のばんえい競馬を無くしてしまうことは、帯広・十勝にとって大きな損失と考えます」という文言まであるんです!

 ご存知のとおり、各地の地方競馬は深刻な経営難のため次々に廃止、あるいはその瀬戸際に追い込まれています。今年はついに荒尾の廃止が決まってしまいました。これまで、そういう地方競馬の将来について議論する「あり方検討会」はあちこちで設置されましたが、そこでまとめられる提言は、「経営改善の見通しが立たなければ廃止もやむなし」というものばかりでした。しかし、今回の帯広の報告書には「廃止」の文字は書かれていません。これは“画期的”でしょう?先にも書いたように、この委員会は「ばんえい競馬の継続開催へ向けて」議論することを目的に設置されたわけで、「当たり前」と言ってしまえばそれまでですが。

 ただ、報告書には「継続開催していくための道のりは、決して容易ではありません」とも書かれています。大きな足かせとなっているのは、もちろん馬券売り上げの低迷。それに、農用馬(重種馬)生産の減少も極めて深刻です。生産頭数はここ15年ほどで4分の1にまで減少したとのこと。「このままでは、競走馬の不足により、ばんえい競馬の継続が不可能になることが懸念されています」。報告書は、表現こそ穏やかながら、すぐそこまで迫っている危機に対してあらためて警鐘を鳴らしました。

 ともあれ、ばんえい競馬の存在価値が、ようやく地元市民のみなさんに認められつつあるようです。この流れを途絶えさせないようにしなければいけません!

◎帯広市ばんえい競馬検討委員会の情報サイト

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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