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JBCの舞台裏・敗戦を糧に新たな挑戦へ!

  • 2012年11月06日(火) 18時00分
 今年もダート競馬の祭典が華々しく開催されました。当日の川崎競馬場にはたくさんのファンが詰めかけ、熱気と興奮が渦巻く中で行われたJBC3競走。レディスクラシックではミラクルレジェンドが女王らしい堂々とした走りで連覇を飾り、スプリントではタイセイレジェンドが、クラシックではワンダーアキュートが新王者の称号を掴み取りました。

 そんな眩しい栄光の陰で、悔しい想いをした馬たちがたくさんいます。今回注目したのは、スプリントに出走した兵庫の雷・オオエライジン。彼は偉大なる名牝クリフジの子孫であり、デビューから無傷の10連勝を達成してダートグレード戦線に乗り込んできた、園田の王様なのです!

剛腕・キムタケ騎手

剛腕・キムタケ騎手

JBCスプリントの本馬場入場

JBCスプリントの本馬場入場

 まずお話をお聞きしたのは、パートナーである木村健騎手。あの岩田康誠騎手が、「日本一追えるんちゃうか」と評価する、兵庫の剛腕ジョッキーです。

赤見 :今回は初の左回り、好位に付けましたが6着という成績でしたね。

木村 :「いや〜ダメでした。1コーナーから外張って、飛んでっちゃうかと思いましたよ。ずっと外から肩ムチ入れることになって、馬が息入れる場所がなかったです。状態は良かったし、普通に走れていれば違ったと思うんですけど…。人間も馬も左回りはダメですわ。もっと経験積まんとね」

赤見 :前走の東京盃では砂を嫌がって怒って走ってましたが、今回はそういう素振りはなかったですね。

木村 :「前走ガッツリ揉まれたことで成長してくれました。この馬は経験するとすぐに覚えるし、本当に頭がいいんです。毎日調教に乗ってるんですけど、乗りに行くと噛みついたり蹴ったり攻撃して来よるんですよ。僕が乗ると走らされるってわかってるんで。だからしっかり馬を押えててもらって、横からコソッと行かないと乗れへんのです(笑)」

赤見 :前はソラを使うところがあって、その矯正のために追い切りの時にムチで叩いたら、もんのすごく怒ったそうですね。

木村 :「馬から下りたあと、「ごめんな〜」って顔を撫でようとしたら、メッチャ睨まれて噛みつかれそうになりました(笑)。そういう気の強いところが、レースに行っていいんでしょうね」

赤見 :ダートグレードはかなりハードルが高いですが、ライジンくんなら手が届くと信じてます!

木村 :「ありがとうございます。僕もそう思ってます! 今日は返し馬から気合いが乗ってて本当にいい感じだったんです。結局返り討ちに合ったけど、でもこの馬と一緒に走れて楽しかった。地元の馬同士やと、力が違い過ぎてレースが楽過ぎるんですよ。こうやって負けることも、大切な経験ですから。また地元に戻って頑張ります!!」

レース後のライジンくん

レース後のライジンくん

続いては、担当の橋本忠明調教師補佐。レース後、ライジンくんの手入れ中にお話を伺いました。

赤見 :お疲れ様でした。今日は初の左回りが大きかったですね。

橋本 :「状態は良かったけど…残念です。この馬はデビュー前から弱いところあって、なかなか攻められなかったんです。絶対に壊したくないし、守りに入ってたというか。そんな中で10連勝してくれたんで、相当走ると思ってました。

 今回は今までで一番負荷を掛けたんです。園田の馬場やから負荷掛けるのも限界あるでしょう。コースで走らせることだけじゃなくて、曳き運動や乗り運動をじっくりやって、毎朝4時間くらい掛けてます」

赤見 :ライジンくんて表情が豊かというか、怒ってる顔の印象が強いんですけど。

橋本 :「猛獣なんですよ(笑)。馬屋の中は僕じゃないと入れませんね。襲ってきますから。気性的にちょっと難しいところあって、自分でストレス溜めて行くんですよ。初めて厩舎に来た時は、人も馬も大嫌いでしたから。

 でも本当の所は繊細なんです。怖がりなんですよ。調教中に他の馬がいると逃げたりするし、木村騎手をやっつけに行くのも「やられる前に行く」みたいなとこありますもん。木村騎手に気合い入れられたら、入れ返しに行きますしね(笑)。もう2年半くらい一緒にいますけど、この馬に対して僕は一度も怒ったことないんです。それが僕の自慢ですね」

ライジンくんを曳く橋本補佐

ライジンくんを曳く橋本補佐

赤見 :橋本さんにとって、どんな存在ですか?

橋本 :「妻より子供より上です! 順番で言うと、ライジン→子供→嫁さんですね(笑)。でも僕一人じゃ出来ませんから、周りのみんなに感謝してます。みんな協力してくれますから。プレッシャーは大きいですけど、大きな存在です。

 この後は、地元の金盃(12月6日)から、兵庫ゴールドトロフィー(12月26日)を目指す予定です。地元のダートグレードだし、ホームとアウェーじゃ全然違いますからね。ここは絶対に逃したくないです!」

 兵庫のトップホースとして君臨するオオエライジン。各地の遠征で積んだ経験を糧にして、大きなタイトルを掴み取ると信じています![取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
次週の「競馬の職人」は、角居勝彦調教師をピックアップ。牝馬のダービー参戦や積極的な海外遠征など、競馬界をリードし続けるトップトレーナーに、常石勝義さんが迫ります。公開は11/13(火)18時、ご期待ください。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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