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全国競馬場行脚して考えたこと

  • 2012年11月17日(土) 12時00分
 実は今年、1月から10月までの間に、日本国内すべての競馬場を一回りしました。

 その数26。先週の当コラムに、ここ30年くらいで日本の競馬を取り巻くさまざまなことが大きく変わったと書きましたが、競馬場の数もしかり。25年ほど前、私が(当時、競馬を開催していた)国内全競馬場の踏破を果たした時には、中央・地方あわせて37か所もありました(その後、新しい盛岡競馬場と門別競馬場ができて、私が踏破した国内の競馬場は39か所に達しています)。しかし、1988年に和歌山・紀三井寺競馬場が廃止されて以降、11か所の地方競馬場が姿を消してしまいました。なんとも寂しい限りです。

 で、今年は、新・中京競馬場がオープン、姫路競馬が2年ぶりの開催(来年は開催されない可能性大)、札幌競馬場が改修工事に入る前の見納めと、全26か所を見て回るにはまたとない(かもしれない)チャンスでした。37か所もあると1年間にすべてを回るにはスケジュール調整が大変ですが、26か所なら仕事のついでも含めてわりとスムーズに行けちゃいました。

 全競馬場を回ってあらためて感じたことがあります。それは、使われていないスペースがやたらと目立つこと。昔の馬券売り場や営業をやめた食堂の跡など、言葉を換えれば“競馬場の中のシャッター通り”みたいになっているところがけっこうありました。

 競馬場に今では想像もつかないほどの人たちが詰めかけ、押し合いへし合いしながら馬券を買っていた時代には、多くの窓口や飲食施設が必要でした。ところが、馬券発売・払戻機の革新に加え、場外発売ネットワークや電話・インターネット投票システムの拡充が進み、競馬人気がピークを過ぎてしまったことなども影響して、入場者数はほとんどの競馬場で減少の一途。その分、場内には“空きスペース”が一気に増えてしまったのです。

 でも、これ、どうにも見栄えがよくありません。温泉街に廃業したホテルや旅館が取り壊されずに残っているのと同じ。「昔はにぎわっていたんだけどねぇ」とわざわざPRしているようなものです。

おそらく、「どういうふうに再活用したらいいかわからない」「改修しようにも予算がない」というところがほとんどでしょう。とはいえ、何にもしなければ、ますます“立ち枯れ”の色が濃くなってしまいます。今こそ知恵を絞って、見栄えをよくする必要があると思うのですが。

 大規模な改修が無理なら、まずはそこを人目につかないように隠してしまうことです。街中のテナントでさえ“空き”が目立つ時代にスポンサーを探すのは一苦労なので、企業や商店のPRスペースとして無料で場所を提供するなど、競馬とは一線を画した発想があってもいいでしょう。

 基本は、明るくきれいに。競馬場はエンターテインメント施設なんですから。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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