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馬券売り上げ増に関する提言

  • 2012年11月24日(土) 12時00分
 先週末「福山競馬廃止へ」というニュースが飛び込んできました。「黒字開催は困難で、来年度の予算は組めない」とのことです。この方針が覆るような、起死回生の打開策は見い出せないものでしょうか?

 福山に限らず、全国各地の地方競馬場は経営難に苦しんでいます。JRAでさえ“長期低落傾向”に歯止めがかけられないでいるのですから、当然と言えば当然です。

 しかし、地方競馬全国協会が公表している開催成績によると、IPATでの地方競馬の馬券発売は、多かれ少なかれ、各競馬場にプラスの効果をもたらしています。小さな地方の競馬場でも、電話・インターネット投票に活路を求めれば“全国展開”が可能になる。これって、あの楽天市場が日本の流通を大きく変化させたのと同じですよね。

 ただし、そのネットワークに乗れば安泰、とは言えません。楽天市場にたとえると、同じものを売っている店がたくさんあれば、どこで買っていいか迷ってしまい、結局は価格が安いか、なじみのある店で買う人が多くなるはず。そうではない店は、ますます経営が苦しくなってしまいます。つまり、売り手には他店との差別化、競合を避ける取り組み、効果的なPRなどが求められるわけです。

 そこで、東日本大震災直後の状況を思い出してください。あの時、JRAの中山、南関東、岩手・水沢が休催を余儀なくされ、西日本の地方競馬場が軒並み売上げを増やしました。理由は単純。ふだんは南関東などに注ぎ込まれているお金が、開催されている競馬場に流れ込んだためです。

 これを逆手に取ったらどうなるでしょう? 中央の開催がない祝・休日は地方競馬にとっての“かき入れ時”。各地の主催者はこぞって競馬を開催、平日には見込めない高額な売上げを確保してきました。でも、もしその日の地方競馬が1か所しか開催されていなかったら、そこに全国の競馬ファンのお金が集中して流れ込んでくるかもしれません。

 競馬ファンの財布の中身には限度があります。よく「“パイ”=総額が決まっている」と言うでしょう? 同日に開催する競馬場の数が多ければ多いほど、この“パイ”の奪い合いがし烈になります。だったら、“パイ”の配分がうまくいくように、各地の競馬場間で祝・休日の開催日と休催日を調整したらどうか、というのが今回の提言です。

 地方競馬が1か所しか開催されていなければ、スポーツ新聞に中央並みの出馬表を全レース掲載してもらえるかも。これをIPATのネットワークに乗せて発売すれば、かなりの売上げが見込めると思います。

“単独で開催する日”の増収分が“休催に充てる日”の減収分を補って余りある状況を作り出せるかどうか。それがなければとんでもないことになってしまいます。「とりあえずやってみれば」なんて軽々に言えないのはわかっているんですけどね。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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