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有馬記念3年連続3着を巡るトゥザグローリーの辻褄

  • 2012年11月29日(木) 12時00分
トゥザグローリーは本当にダート路線を歩もうと言うのだろうか?
「前々からダートを使ってみたかった」というコメントには嘘偽りはないとは思う。
実際、その期待があっての参戦なのかもしれない。
けれど、それだけじゃないのではないか?

本当の狙いは、2年連続で3着してる有馬記念ってことはないのか?
(できればそうあってほしい)
だってそうでしょう。
もったいないでしょう。
せっかく3年連続有馬記念3着というナイスネイチャ以来の偉業に挑めるというのに、そのチャンスを放棄してしまうなんて。
もし、ジャパンCダートで馬券圏内に入ろうものなら、次はおそらく東京大賞典か? ここがオーストラリアなら有馬も大賞典も両方出る選択肢もあるんだろうけど、ここはジャパーンだからそれはあり得ない。
(有馬記念12/23日曜日、大賞典12/29土曜日。日曜日にレースに出た馬が土曜日に出るのと同じ。つまり連闘。おっと、日本でもよくある光景だった)

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有馬記念3年連続3着を巡るトゥザグローリーの闘い
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こういうのが有馬記念では許される気がする。ナイスネイチャのときはどうだったかな? レース後は盛り上がっていた気がするけど、ビフォーで盛り上がっていたかは、う〜んぜんぜん思い出せない。でも今でもナイスネイチャと言えば、3年連続有馬3着と浮かぶくらいだから、強烈な印象を残したことに間違いはない。

仮に、池江調教師の腹の中もそうだったとする。
3年連続有馬記念3着を狙ってみたいなぁ〜と思っていたとする。

でも調教師として、それはきっと発言しにくいはず。
有馬に限らずだけど、レースに参加する以上は1着を目指して頑張ると発言するのがスジだ。
っていうか、「3年連続3着を目指します」と堂々と言われても、それはそれで困る。ミーハーの自分でもちょっと引く。いや、そういうコメントが似合うであろう調教師はいる。ここでは触れないけれど、そういうのが許される調教師はいる。けれど、池江師は違う気がする。

だから腹の中では有馬であっと言わせたる! ナイスネイチャしたる! と考えていたとしてもそれを表には出さないはず。

そう考えると、有馬でネイチャと決めつけてみると、今回のジャパンC・ダート参戦表明はいろいろと辻褄も合う。

前走の天皇賞(秋)の3.1秒差の負けは惨敗もいいところ。
いくら休み明けとはいえ、あそこまで負ける馬のイメージはない。

もしかしたらトゥザグローリーにはまだ戦闘意欲が戻りきってないのかもしれない。
ならばそのカンフル剤としてジャパンCダートを走らせてみるのはわかる。

真意はもちろんわからない。けれど、 次、どこを使おうが取りあえず走る気を促す必要はある。

伏線めいたものはある。
同じ厩舎のダノンカモンは3走前、2走前に突如として芝を使った。
ダノンカモンはそもそも芝デビューだったから、初芝でどうこうはなかったけど、4走前に砂のGIフェブラリーSで4着するような馬だ。そのような馬に22戦ぶりの芝レースを課した。しかも2戦連続で。
結果は8着、15着。
久しぶりの芝がダノンカモンに刺激をどれだけ与えたのかはわからない。
けれど、芝2戦後の休み明けの武蔵野Sでカモンは3着した。

ダノンカモン 直近の流れ

砂・フェブラリーS 4着(5人気)

休養4か月

芝・米子S(芝1600) 8人気8着

芝・中京記念(芝1600) 8人気15着

休養約4か月

砂・武蔵野S 3着(6人気)

トゥザグローリーの母がいきなりのダート、それもGIのフェブラリーSで3着したからといって、
子供もいきなりのGIで活躍できるものだろうか? ゆくゆくならばわかる。もしくはGIIIくらいの重賞での肩ならしならばわかる。
だいたいトゥザヴィクトリーはフェブラリーでは8枠16番だった。いきなりのダートだったけど、砂を被りにくい8枠に入って、先行して粘りこんだ。つづくドバイでもノーマークで逃げられての2着だった。ちょっとした幸運もあった。

だから余計に思う。いきなりのGIで上手く行くものなのだろうか?
グランプリボスもフェブラリーSで初ダートした。あのときもたしか「適性はありそう」的な、「前々から一度使ってみたかった」的な、あくまでも的なことを言っていた気がする。しかし6番人気で12着だった。
グランプリボスに適性がなかったと言いたいわけではない。初ダートがGIというのはやっぱり厳しいのではないか? そう言いたいだけ。

たとえば、池江厩舎は、オルフェーヴルを凱旋門賞に勝たせるために、フォア賞を使った。ロンシャンの芝に慣れさせたかったからだろう。ぶっつけで挑んだディープインパクトの経験がそうさせたのか? 芝→芝でも慣れさせる必要があるのだとしたら、芝→砂はもっと必要なのではないか? (あくまでも頂上レベル、GIでの話です。念のため)

そんなことは百も二百も三百も承知でしょう。池江師が承知してないはずなし!
ゆえに辻褄を合わせたくなるのです。

腹の中は有馬記念3年連続3着のための参戦ではないか? と合わせたくなる。
池江流新しい形の有馬ローテではないか? と合わせたくなる。

そういえば、トゥザグローリーは3歳時に中日新聞杯を勝って、有馬記念に出走し、14番人気で3着した。ハンデ戦の中日新聞杯から有馬記念。それだって十分ヘンテコ・ローテだ。

あ〜ますます辻褄を合わせたくなる。トゥザグローリーという馬はそもそもそういう刺激に敏感な馬なのではないのか? と合わせたくなる。

その中日新聞杯も今は3月に移行してしまった。その替りに今週は金鯱賞が中京で行われる。

金鯱賞といえば、今までは宝塚記念に出走する馬のための重要参考文献だった。
その金鯱賞が今週ある。なぜ今週なのか?

ごくふつうに考えれば、
宝塚記念の金鯱賞と同じように、今後は有馬記念の金鯱賞と認知されたくって、
できれば、されたくって、してほしくって、
そんな思いが中京競馬場関係者の中にはないか?

ハンデ戦の中日新聞杯→ハンデ戦中山金杯
別定の金鯱賞→定量の宝塚記念
今まではそんな流れでもあった。
でもこれからは
別定の金鯱賞→定量の有馬記念で、中京競馬場の存在感を示したいのではないか。

もちろん王道はジャパンC→有馬記念だろうけど、
別路線としての存在感は立たせたいのではないか。

直線が伸びて、東京以上・中山未満の坂も出来て、生まれ変わったニュー中京。中山・有馬への肩ならしにも、もしくは最終便としてもお誂えか。
2週目に開催されることの多かった中日新聞杯だったけど、金鯱賞は今年1週目に開催される。
やっぱり有馬記念から逆算してるように思える。

その金鯱賞に池江厩舎の馬は2頭登録している。
オーシャンブルー ルメール
ダノンバラード 騎手未定

ダノンバラードは前走ルメールでアンドロメダSを1着した。今回ルメールが騎乗するのはオーシャンブルー。
なるほど!

金鯱賞には金鯱賞の馬が用意されている。なるほど!
で、ますます高鳴る。
「有馬記念3年連続3着を巡るトゥザグローリーの闘い」が高鳴る。

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ちなみに金鯱賞には
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アーネストリーとオウケンブルースリ(連闘!出走するのか!?)の2頭の賞金いっぱいホースが登録している。この2頭は「有馬出ます!」と手をあげれば出走が叶う馬に思えるけど、あえてここに使ってきたとしたら、俄然気になる。

特にアーネストリーの佐々木晶厩舎といえば、金鯱賞を使って、宝塚へ進むような厩舎だったからだ。金鯱賞が12月に移動したら、それならそれで有馬のために使っちゃおう!してくるような気がしてならない。一応、過去歴的には佐々木厩舎の馬は金鯱賞で馬券圏内に入って、宝塚でも好走していた。アーネストリーもここでいいレースが出来るようなら、脚質的にも有馬でやっかいな存在になりえるか。

金鯱賞はデムーロとルメールとコスモオオゾラが気になっている。デムーロとルメールは今さら書くまでもないので割愛して、コスモオオゾラの復活があるのかないのか、そこが気になってしょうがない。

コスモオオゾラがこの次に有馬を狙っているのか、中山金杯を狙っているのかわからないけど、できれば有馬に出てきて欲しいと思っている。だから注目。前走、岩田騎手で7.3秒差で大惨敗した馬が柴田大でどう変わってくるのか。

そういえば、池江厩舎はステイヤーズSにもフォゲッタブルを出走させそう。
鞍上はムーア。
おー!なるほど!(ってここはそれほどなるほど感はない)

けれど、フォゲッタブルは3年前にこのレースを勝っている馬で、そういう意味では適材適所的でもあり、「トゥザグローリーの闘い」とも遠くでつながっていそう。

アルゼンチン共和国時にも書いたけど、フォゲッタブルはここ5戦すべて外国人騎手。
京都大賞典 ピンナ 5着
アルゼンチン メンディザバル 8着
ステイヤーズ ウィリアムズ 7着
京都大賞典 ピンナ 5着
アルゼンチン オドノヒュー 12着

さらにステイヤーズSにも3歳から出走し、これまたすべて外国人騎手。
09年 スミヨン 1着
10年 デムーロ 5着
11年 ウィリアムズ 7着

ベルギー人のスミヨンで1着
イタリア人のデムーロ&ピンナですべて5着
オーストラリア人のウィリアムズで7着
スペイン人のメンディザバルで8着
アイルランド人のオドノヒューで12着

今回騎乗はイギリス人のムーア。
おー!なるほど!

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ちなみにステイヤーズSはバリアフリーだ!
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去年のここで書いたか忘れたけど(鴨川と神田川の秘密結社では書いた)、ステイヤーズSは日本で一番ユニバーサルでバリアフリーなレースだと思っている。

この12年で6頭のセン馬が馬券に絡んでいる。外国人騎手はこの12年で8人が馬券に絡んでいる。
と同時に、最近は
若いのと年取ったのが歩み寄ってもいる。そういうバリアフリー。

去年は3歳と8歳と9歳(当てちゃったよー!)。
一昨年は3歳と7歳と(4歳)
3年前は3歳(スミヨン)と9歳のセン馬と(4歳)。

極めつけは4年前。
08年
1着 セン馬(5歳)
2着 3歳馬
3着 8歳馬

セン+若+老!
ユニバーサルだ! 実にバリアフリーだ!

その観点で今回の出走馬を眺めると、想定ではあるけれど実に多彩であることがわかる。

3歳1頭 コスモグレースフル
7歳以上 6頭 7歳イケドラゴン・メイショウクオリア 8歳グラスゴッド 9歳ネヴァブション・マイネルキッツ 10歳トウカイトリック
セン馬 1頭 ファタモルガーナ(4歳)

3歳馬のコスモは前走1000万だから一枚割引、7歳以上は沢山いてわけわかんないからヒモに回すと、残るはセン馬のファタモルガーナ1頭に。

ファタモルガーナは前走1600万条件5着だったけど、その闘い方は距離伸びても期待できそう。デビュー以来ずっとそう。ディープインパクト産は去年3歳で2着したし、ディープ産のセン馬なんてそれだけでスペクタクルだし、注目する価値は断然ある。

セン馬は最近ご無沙汰だし、今年のバリアフリーはセン馬とイギリス人に注目してみよう。

おっと、結局、金鯱賞(ルメールのオーシャンブルー)もステイヤーズS(ムーアのフォゲッタブル)も池江厩舎の馬に注目してしまった。

で、ジャパンCダートの辻褄だ。
いや、トゥザグローリーの辻褄だった。

おそらくトゥザグローリーに騎乗するウィリアムズさんへの指示は先行だろう。ウィリアムズ得意の前で折り合う競馬。
ウィリアムズさんは1400ダートでしか勝ち鞍のなかったサトノジョリーを、
それまで差しでまあまあの成績だったサトノジョリーを、関東オークス(ダ2100)で騎乗して、番手から早め先頭に立って、2着させた。

そういう意味では辻褄は合う。最後はウィリアムズさんの先行力で辻褄を合わせようという作戦か。
う〜ん…なんだか頼もしい気がしてきた。

今回のJCDではどの馬が逃げるのだろう。
実はそこがよくわからない。

直近3走で逃げた馬はイジゲンしかいない。
イジゲンは出遅れ系の馬であるのと同時にムーア騎手でもある。西欧系外国人騎手GIでチャンス系ホースに騎乗して逃げを選択するはずない。
エスポワールシチーは番手から3〜4角で先頭に立つ競馬をみっちり教えてきた。武豊騎手には大逃げをいつも期待してるけど、フェブラリーSでの騎乗を見ると、むしろ3番手くらいで折り合わせようとする気もする。
トランセンドのスタートダッシュは年々重くなってきてるように見える。

そう考えると結果的に行きたい馬がいなくて、トランセンドが先手を奪えてしまう可能性もある。
思ったよりはゆっくり進む可能性もないとは言えない。
仮にそうなれば、初ダートでも無理なくスムーズに馴染めてしまうことはないか?
ウィリアムズさんの腕が馬券圏内に持たせてしまうことはないか?
う〜ん…なんだか頼もしい気がしてきた。なんだか辻褄が逆回転してきた気もする。

トゥザグローリーはジャパンCダートを有馬のための実戦調整の場にするはずだから、お客さんだ! と決定付けるはずだったのに自分自身が逆回転してきてしまった!

こういうときは、いったんノーカウントだ。きれいさっぱり忘れてしまおう!
そして大きく深呼吸だ。
初ダートはいらない! という空気を吸い込めたら買おう。
初ダートだけど母のダート実績もあるから面白い! という空気を吸い込んでしまったら消そう。
空気の押し出し・引き出しだ。
空気の目安は6番人気だ。グランプリボスはフェブラリーSで6番人気で負けた。ここを参考にしよう。

週の真ん中水曜日〜木曜日。
実は意外に枠が気になっていたりもする。
内枠に入ったがために逃げを決意する馬もいるかもしれないし、エスポワールとトランセンドの位置関係で各々の作戦も変わってくるかもしれないし、外国人騎手が内枠に集結したら、それはそれで面白そうだし。

イジゲンは出遅れる可能性があるけど、それは1番人気必至のローマンレジェンドにも言える。
最近は「デムーロでデマーケ」に思った以上に遭遇するからだ。いくら2段階スパートのデムーロとはいえ、1着という意味では出遅れはヤバイはず。

イジゲンはわかりやすく2角系で強いダート馬に思える。けれど、たとえそうだとしても、それを克服するためのムーアではないのか? 
この馬も3歳ということで人気が少しでも引き出されれば、それはむしろ買いな気がする。

JCD注目どころ
トゥザグローリーの人気
ローマンレジェンドのスタート
イジゲンの角4競馬度
グレープブランデーのもうひと踏ん張り
トランセンドとエスポワールシチーの枠

金鯱賞注目どころ
アーネストリーとコスモオオゾラの立ち振る舞い
アドマイヤラクティのスタート(前走デムーロでデマーケで3着。再びデムーロ!)
ルメールのオーシャンブルー

ステイヤーズSの注目どころ
若・老・セン・外国人!
ファタモルガーナ(セン馬)
フォゲッタブル(ムーア)

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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