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新裁決ルール、新たなB2が出たらどうする!?

  • 2013年01月26日(土) 12時00分
 今回のテーマは、先週のAJCCの一件について。すでに柏木集保さんや細江純子さんが書かれていますが、私もこれを取り上げさせていただきます。

 今年から適用された降着、失格の新ルールについて、JRAはビデオやホームページを通じてさかんに広報しています。ホームページには「到達順位どおりとなるパターン」として「AがBを追い抜く際にBの走行を妨害した。その後被害馬Bは他の馬にも抜かれ、加害馬Aに大きく後れてゴールした」ケースが例示されていました。

 今回のレースで言えば、ダノンバラード(=A)とゲシュタルト(=B1)の関係はこのケースに当てはまるようです。でも、Aとトランスワープ(=B2)の関係は、これとはまるで違うものでした。B2は被害を受けた後も立て直して、いったんは広げられたAとの差を縮めていましたからね。

 そこで、「降着となるパターン」の例を見てみます。そこには「最後の直線コースでAがBの走行を妨害し、その影響で被害馬Bが大きく後れをとった。その後、被害馬Bは勢いよく追い上げたが、加害馬Aに僅かに届かなかった」ケースが挙げられています。

 これを考え合わせると、あの日の裁決委員は「今回のケースは上記の『到達順位どおりとなるパターン』の例とは違う。しかし、AとB2の間についた1+1/4馬身の着差は『僅か』ではなく、『降着となるパターン』にはあたらない」と判断したようです。

 これは私の推測にすぎません。言い換えれば、こうした判断に至った経緯の説明がほとんど行われていないのはいかがなものか、ということ。先に書いたように、せっかくビデオやホームページで新ルールについての解説をしているのですから、今回のケースについても、それと照らし合わせた上での、ていねいな説明が必要だと思います。

 そもそも、今回のケースを裁決委員が審議の対象とせず、「降着にならない」と“即断”したところに問題はなかったのでしょうか。ていねいな説明が必要だというのは、それほどややこしくて微妙なケースだったからです。

 Aの斜行によってB2が不利を受けたときの脚色、それがもとで開いた差、その際とその後の両馬の勢い、ゴールでの着差などなど。これらを総合的に見極めてからでないと判断できないケースだったように思えます。

 もっと言えば、今回の新ルールは本当に従来のルールからの改善になっているのか、という疑問も沸いてきます。ダノンバラードが“ささる馬”というのはベリー騎手も認識していたとのこと。

 新ルールは、こうしたクセを承知で騎乗した騎手が、イチかバチか“クセ”を直すことなく隣の馬の前に割り込んで先着する、なんていう“荒技”を許してしまうのではないか。今回のケースを見ると、新ルールにはそんな危険性が潜んでいるような気がしてならないのですが…。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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