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オルフェーヴルはヴィルシーナの誘惑に勝てるか?

  • 2013年03月28日(木) 12時00分
現在発売中の競馬王3月号にオルフェーヴルに関する興味深い記事がある。

ウマの習性から検証
「オルフェーヴルはなぜ牝馬に競り負けるのか?」

たしかにそうだ。
オルフェーヴルは何度か負けているけれど、っていうか初期の頃は何度も負けていたけれど、惜敗したときは牝馬ばかりだ。

芙蓉S 1着ホエールキャプチャ 「クビ差」2着オルフェーヴル
凱旋門賞 1着ソレミア 「クビ差」2着オルフェーヴル
ジャパンC 1着ジェンティルドンナ 「ハナ差」2着オルフェーヴル

オルフェーヴルは今までに8敗しているけれど、1馬身以内に負けたのは他には大逸走して盛り返した阪神大賞典しかない。
あのときはギュスターヴクライの1/2馬身差2着だった。
あの逸走をスペシャルと考えると接戦で負けたときはたしかに牝馬ばかりだ。

オルフェーヴルはなぜ牝馬に競り負けるのか?

この検証記事は、
装蹄師の世界に迫って馬事文化賞を受賞した城崎哲さん(カリスマ装蹄師 西内壮の競馬技術)が、農学博士で「野生馬を追う」で同じく馬事文化賞を受賞した木村李花子さんに疑問質問を投げかける形で進められている。
取材を得意とするその道の第一人者とフィールドワークを得意とするその道の第一人者が観察と想像とほんの少しアソビ心を交えながら本気で取り組んだ対談だ。面白いに決まっている。

だから当然説得力がある。もちろん競馬の世界と野生の馬の世界は違うことを前提にしての対談だ。
けれどそこには、なるほど! もしかしたら! そうなのかも! に満ち溢れている。

「ハレム的な群れの中では種牡(たねおす)は群れに君臨する唯一の存在」(基本的に群れには種牡以外には牝馬と若い馬しかない)

「種牡は群れの動きをコントロールする立場だから全体が見える後ろから群れを追いかけていく」

「(群れで)一番前にいくのは牝の中の順位の高い馬、あるいは生まれたばかりの子供を持っている馬であることが多い」

「いくら速く走れても種牡が群れを追い越してしまうわけにはいかない」

つまり、めちゃくちゃ端的に言ってしまえば、
オルフェーヴルにハレムの種牡という自覚があるのならば、牝馬を追い越すわけにはいかないというわけだ。
(他に牡同士の喧嘩の仕方等の項目あり。興味のある方は競馬王3月号をどうぞ。)

ヌヌヌ……!!
自覚ありか!? オルフェーヴルよ!!

てなことを頭に入れて、オルフェーヴルが惜敗したレースを今一度見てみた。

ホエールキャプチャに負けた芙蓉S。
逃げるホエールキャプチャに対して、オルフェは中団を進む。
逃げ込みをはかるホエールを中団から一気の脚で差し切る!! と思いきや最後はヒンバちゃわ〜んとばかりに脚色同じくしてクビ差でゴール。

凱旋門賞とジャパンカップは記憶に新しい。
っていうか、種牡だと思ってしまうと、すべてそう見えてしまう。

凱旋門賞は大外から猛然と追い込み、内へ切れ込んでいき、最後ソレミアの逆襲にあうけれど、内へ切れ込むときにソレミアの面前を横切っている。
そのときにヒンバちゃわ〜ん!と種牡としての自覚が顔を出してしまったのではないか? だとするとあのゴール前でのブレーキングも納得できる。

ジャパンカップは内からジェンティルドンナにぶつけられるけれど、その瞬間にヒンバちゃわ〜〜んしてしまったのではないか? 弾かれる不利はあったとしても、ゴール前は叩き合いになった。外オルフェーヴル、内ジェンティルドンナ。一般的には外の馬の方が叩き合いでは有利だ。けれど、内の牝馬を抜かせない? いやあえて抜かさなかった? そんな解釈も今ならできる。

この3頭の牝馬に共通したことは位置取りか。差し・追い込みが信条のオルフェーヴルが最終的に認知しやすい前方にみな位置取っていた。
ホエールは逃げ、ソレミアは先行、ジェンティルもこのときは先行していた。
そして最後の直線でみなオルフェーヴルとなんらかの接近遭遇をした。
ゴールまでちょっとしたツーショットの時間帯があったわけだ。少なくとも牝馬を目視するに十分の時間はあったと言える。
つかの間のランデブー…………? 今ならばそう言えてしまう。うは。

うむ、なるほどだ! もしかしてだ! そうなのかもだ!
だけどそうなると今度は、現在進行系で確かめたくなる。

本当にオルフェーヴルはレディーファーストなジェントルな種牡なのか、そのことを念頭に置きながらレースを観戦したくなる!

って、カンのいい皆様はもうすっかりおわかりでしょう。
自分が今どこに向かっているのかすでにお見通しのことでしょう。

もうね、グッドタイミングにもほどのあるスーパー・グッド・タイミング(ベストタイミングとも言うけど)で産経大阪杯ですよ。

3系大阪杯。

---------------自分的には3系大阪杯---------------

1か3の倍数人気の馬しか1着しない不思議なレース。

去年、6番人気のショウナンマイティが1着して、18年連続で根多が継続してしまい、むしろこっちがドギマギっつーか、とにかく俄には信じがたいけれど、きっとなにがしかの真実があるような、ないような、そんなレース。

論より証拠、この18年間の1着馬の人気を羅列してみる。
95年 12人気 インターマイウェイ
96年 1人気 タイキブリザード
97年 1人気 マーベラスサンデー
98年 1人気 エアグルーヴ
99年 1人気 サイレントハンター
00年 1人気 メイショウオウドウ
01年 9人気 トーホウドリーム
02年 1人気 サンライズペガサス
03年 3人気 タガノマイバッハ
04年 1人気 ネオユニヴァース
05年 1人気 サンライズペガサス
06年 3人気 カンパニー
07年 1人気 メイショウサムソン
08年 1人気 ダイワスカーレット
09年 3人気 ドリームジャーニー
10年 6人気 テイエムアンコール
11年 1人気 ヒルノダムール
12年 6人気 ショウナンマイティ

ほら、1か3の倍数人気の馬しか勝ってないでしょ。
ちなみにこのことを3年前からこのコラムで書いているけれど、ぜんぜん記憶にないでしょ(ここが自分の不徳の致すところ。ぜんぜん馬券浸透力がない! イエス!)。

こういうのを数術師みたいな方に聞くと、絶対「数の魔力です。森羅万象あらゆることがらはすべて数字に置き換えられます」とか言うに決まっている。
だからといってそのような方に産経大阪杯だから3系人気の馬が来るのでは? とでも言えば、「ふざけるな!」と怒られそう。
だから不思議なまま放ってある。

ただ一応、自分なりの仮説はある。
産経大阪杯は実力馬が春の始動戦として選びやすいレースである。それゆえに1番人気の勝率が高い。当然だろう。
逆に2番人気の馬は18年間未勝利だ(正確には2番人気は24年間未勝利。その前はわからない)。3着以内にもこの10年で3回しか入っていない。1番人気にまっこう勝負を挑みすべて弾き返されたとも言える。
実際、2番人気馬が馬券圏内に入った3回すべてで1番人気馬は先着している。つまりこのレースにおいては、1番人気と2番人気の格付けは完全に出来上がっているともいえる。
その1番人気が敗れるとそれに引っ張られるように2番人気も沈没してしまう。まっこう勝負で共倒れになったところを3番人気がひょっこり現れ、おいしいところを頂戴していく。
一応、ここまでは理屈になってると思う。問題は6人気と9人気についてだけど、そこはもはやスジでいいのではないか。
1・2がダメで3人気。
3がダメだと3をマークしてた4・5が同時にダメになり6人気。
6がダメだと6をマークしていた7・8が同時にダメになり9人気。
1・2・3の3
4・5・6の6
7・8・9の9
おいしいところは3番目が持って行く。

競馬とは3頭立てで駆け引きの生まれるゲームである。

とか言ってみたりして。

でもふつうこの手の根多は紹介したときがおしまいのときなのに、6番人気テイエムアンコール→1番人気ヒルノダムール→6番人気ショウナンマイティと、その後も断続的に1か3の倍数人気が勝ち続けている。テイエムアンコールが勝ったときは6番人気・9番人気・1番人気で決まってひっくり返った。もちろん今年も注目しないわけにはいかない。

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とにかくその3系大阪杯にオルフェーヴルですよ!

そのオルフェーヴルが出走する産経大阪杯に牝馬のヴィルシーナが出走ですよ!

唯一の牝馬ですよ!

しかもヴィルシーナはお誂え向きの先行タイプですよ!

芙蓉S  ホエールキャプチャ54 オルフェーヴル55 1キロ差
凱旋門賞 ソレミア58 オルフェーヴル59.5 1.5キロ差
ジャパンカップ ジェンティルドンナ53 オルフェーヴル57 4キロ差

今回はヴィルシーナ54、オルフェーヴル58で、ジャパンカップのジェンティルドンナと同じ4キロ差ですよ!

ヴィルシーナはジェンティルドンナとは直線の短い京都内回り2000でハナ差を演じた馬。
京都内回り 直線約328M
阪神内回り 直線約356M

内回りで、オルフェーヴルと4キロ差ならば、けっこうな戦いができるのではないか?
秋華賞でジェンティルドンナに挑んだときと同じような闘い方ができれば面白いのではないか?

前述の対談記事を担当した競馬王編集部のカキハラの話では、
「馬体が合わさるほど牝馬を抜かなくなる習性が顔を出す可能性はあります」
「内田博騎手が同じステイゴールド産のゴールドシップであのような豪快な競馬をするのも、馬体を併せると味が出なくなる産駒の習性を知ってのことかもしれません」
「その内田博騎手がヴィルシーナに騎乗するとなると、オルフェーヴルに合わせに行くかもしれません」

なるほど!もしかして!そうなのかもだ!

去年の阪神大賞典での逸走があったがゆえに今回のオルフェーヴルは万全を期して出走するはず。
しかも牝馬と接戦を演じたレースでは大きな悪さはしていない。
むしろ本能で楽しく走っている可能性もある。
つまり今回のオルフェーヴルは鉄板級の走りを見せる可能性大。

それゆえにお楽しみは広がる。
ヴィルシーナを前方に置いて、種牡としての習性を見せずにいられるか?
っていうか種牡としての習性を見せがちという前提で言うならば、レースで牝馬を我慢することが凱旋門賞に勝つためのオルフェーヴルの課題とも言える。

だからこそ逆にヴィルシーナにはオルフェーヴルを誘惑するような接近遭遇をかまして欲しい。
秋華賞のときのように、ジェンティルドンナより先に抜け出して、最後馬体を併せたようにオルフェーヴルに身を寄せていって欲しい。

オルフェーヴルの走りはいつだってドキマギするけど、今週の大阪杯もいい意味で胸騒ぎだ! 胸騒ぎの放課後だ!ホチョ!

ちなみに現在の予想オッズを拝見。
1か3の倍数だけ抜粋すると、

1番人気 オルフェーヴル 当然。

3番人気 ヴィルシーナ ワオ!!

6番人気 トウカイパラダイス(ローズキングダム)
9番人気 スマートギア

そのままー!
もはや1番人気のオルフェーヴルと3番人気のヴィルシーナしか見えない!
そのままー!
(本当はヴィルシーナは6番人気がいいけれど、それが望めないならば、致し方なし。)

ちなみにヴィルシーナの54キロにはそれだけで可能性を見いだせる。

この10年で牝馬の出走は以下の3頭・4回。
カワカミプリンセス 55キロ 3着
ダイワスカーレット 56キロ 1着
アドマイヤグルーヴ 57キロ 4着
アドマイヤグルーヴ 57キロ 7着

牝馬の出走がそもそも少ないレースだけれど、54キロでの出走もそもそもなかった。15年前まで遡っても最低でも55キロのばかり。去年から重量換算のシステムが変わり、牡馬の59キロがいなくなったかわりに牝馬の54キロも実現しやすくなったのだろう。
牝馬はG1・1着で1キロ増だけど、ヴィルシーナはG1で2着4回。ゆえに54キロで出走できる。

積極的に逃げたい馬がいないメンバー構成でヴィルシーナ陣営がどう考えるか?
もしダイワスカーレットみたいに逃げたら、自分はふつうに面白いと思う。

6番人気にトウカイパラダイスとローズキングダムのどちらかが入りそう。
トウカイパラダイスは逃げの経験あり。
低迷打開を狙って、ローズキングダムも川田騎乗で逃げてきたら、それはそれで面白い。
今年も6番人気にはちょっと目をかけておきたい。

産経大阪杯の注目どころ
オルフェーヴルの我慢対ヴィルシーナの誘惑
1・3・6人気(9は今年はないと見た)

ダービー卿
ダイワファルコン
スマイルジャック
善さん

競馬王3月号

競馬王3月号

競馬王3月号は創刊20年&200号記念!
今号は競馬王創刊20年&200号記念! 巻頭では200号スペシャルインタビューとして、200勝投手の山本昌(中日ドラゴンズ)が登場。競馬王との意外な接点、競馬にかける情熱を語ってくれています。

また特集では、過去に本誌で紹介して、今でも使える馬券必勝法を200コ分ドドドーンと紹介しています。特別企画コーナーでは、2007年度の馬事文化賞作家である城崎哲氏と木村李花子氏の夢の対談が実現。「オルフェーヴルはなぜ牝馬に競り負けるのか?」という壮大なテーマについて検証してくれています。今号も競馬収支ノートDX 春・夏バージョンが付いてお得な内容となっています。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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