スマートフォン版へ

35秒で武豊、34秒で武幸

  • 2013年04月04日(木) 12時00分
今年の3歳重賞は人気があるだけで心配だ!

そう書いたのはFレビューの週だった。
今年になって3歳牡馬中距離戦線と3歳牝馬戦線のトライアル系は1番人気が馬券圏外に飛びまくっていたから、ノービジョンで叫んでみた(1番人気が勝ったのはマイル戦線のシンザン記念とアーリントンCのみだった)。

そのFレビューでも1、2番人気は凡走した。で、その結果を受けて、さらに調子に乗って、翌週のスプリングS、フラワーC、若葉ステークスでは「いよいよ人気があるだけで心配だ!」としてみた。もちろんノービジョンで。

結果は1番人気1勝2馬券圏外だった。つまり自分としては2勝1敗だったわけだ。けれども、1番人気が来るか来ないかだから1つでも来たら、そりゃアウツ! 全敗みたいなもんでちょっとした敗北感にまみれた。

スプリングS 1人気1着 2人気5着
フラワーC  1人気7着 2人気1着
若葉S    1人気8着 2人気3着 1着7人気

スプリングSでロゴタイプが1番人気で1着して、散らかり気味だった牡馬戦線は一応の緊まりを見せた。こういう流れはつづくもので、翌週の毎日杯でもキズナが1番人気で1着して、牡馬戦線はちょっとした落ち着きを取り戻したように見える。

とはいえ、それはあくまでも牡馬戦線でのもの(牡馬だってまだわかったもんじゃないけど、それは来週で)。
牝馬戦線は落ち着かないままに桜花賞を迎えたように思う。

だから当然、今週も

「桜花賞は心配だ! 人気があるだけで心配だ!」

としなければならない。

予想では1番人気はクロフネサプライズ。

3番人気だったとはいえ、前走チューリップ賞を逃げて圧勝した。今回1番人気になるのもわからないではない。
でも今年の流れから言えば、無条件に切っていいはず。

だとしても、今回はG1の桜花賞。そうそうノービジョンってわけにもいかない。だから一応、検証はしてみる。消しの安心材料を上乗せする必要もあると思うからだ。

材料はもちろんチューリップ賞。

チューリップ賞1着馬が桜花賞でどうであったかチェックしてみる。

03年 オースミハルカ 桜花賞5人気6着
04年 スイープトウショウ 桜花賞2人気5着
05年 エーシンテンダー 桜花賞5人気6着
06年 アドマイヤキッス 桜花賞1人気2着
07年 ウオッカ 桜花賞1人気2着
08年 エアパスカル 桜花賞7人気9着
09年 ブエナビスタ 桜花賞1人気1着
10年 ショウリュウムーン 桜花賞5人気4着
11年 出走なし(レーヴドソール)
12年 出走なし(ハナズゴール)

1着しているのはブエナビスタのみ。
チューリップ賞1着馬は実は本番では勝ちにくいことがわかる。
しかしよくよく見ると、少し気になることもある。

チューリップ賞1着馬が桜花賞で1番人気になると頑張れているからだ。
というより、チューリップ賞1着馬は桜花賞で1番人気にならないと頑張れてない!!

アドマイヤキッス 桜花賞1人気2着
ウオッカ 桜花賞1人気2着
ブエナビスタ 桜花賞1人気1着

阪神改修前がアドマイヤキッス、改修後がウオッカとブエナビスタ。だからそこは気にする必要もないだろう。そもそもチューリップ賞も同じ阪神1600で行われているからだ。

っていうかチューリップ賞1着馬が思いのほか桜花賞で1番人気になれてないこともわかる。
つまり、チューリップ賞を1着して、桜花賞でも1番人気になることはその時点で相当な評価とも言えるわけだ。

クロフネサプライズの1番人気はほぼ、だいたい確定的。1着はともかく馬券圏内ではむしろ安心できる臨戦とも言える。

ムムム。クロフネサプライズの心配材料を上乗せしようと思ったのにちょっとした安心材料を乗せてしまった。

困った。ではもっと単純に桜花賞1番人気馬はどんなだったかをチェックしてみる。そこにこそ新しい心配材料があるはずだ。

以下は過去10年の桜花賞1番人気馬の成績と臨戦

03年 アドマイヤグルーヴ3着←若葉S1人気1着
04年 ダンスインザムード1着←フラワーC1人気1着 
05年 シーザリオ2着←フラワーC1人気1着
06年 アドマイヤキッス2着←チューリップ賞2人気1着
07年 ウオッカ2着←チューリップ賞1人気1着
08年 トールポピー8着←チューリップ賞1人気2着
09年 ブエナビスタ1着←チューリップ賞1人気1着
10年 アパパネ1着←チューリップ賞1人気2着
11年 ホエールキャプチャ2着←クイーンC2人気1着
12年 ジョワドヴィーヴル6着←チューリップ賞1人気3着

1人気成績(3−4−1−2)
前走1着している1番人気は100%馬券圏内には入っている。
圏外2頭はチューリップ賞を1番人気で敗れた2頭。
前走を1着して、桜花賞でも1番人気に支持される馬は馬券圏内だけでなく、高確率で連対していることもわかる。

クロフネサプライズは前走チューリップ賞1着からの参戦。全体で見ても、1着はともかく馬券圏内、いや連対圏内でも頼りになりそう。
ヌヌヌ…。また安心の上乗せだ。

阪神JF2着馬から桜花賞で1番人気になった馬といえば、2年前のホエールキャプチャがいる。
そのホエールは父クロフネで、強いクロフネ牝馬特有の気質「カッタリーノ」を持ち合わせている馬だった(新馬をやる気のない感じで負けて、その後すぐに勝ち上がる)。クロフネサプライズもホエールと同じように新馬を4着に負けて、次の未勝利で勝ち上がった馬で、強いクロフネ牝馬の資質を持つ可能性を感じさせる馬でもある(2/28コラム参照)。

阪神JF2着(クビ差)Hペース 2−2−2 前半34.3 
チューリップ賞1着(0.6差)Sペース 1−1−1 前半35.9

桜花賞は前半35秒を切ると差し馬が1着し、前半35秒以上かかると先行馬が1着する傾向あり。
だとすると、クロフネサプライズのHペース&Sペースのダブルで2着1着した先行力は力強いと言わざるをえない。

チューリップ賞でクロフネサプライズを本命に推した理由は騎手が武豊だったから。メンバーと騎手を見て、武豊に絡めるような騎手はいないと判断してのもの。実際、そのとおりだった。

これは一般論だけど、逃げ先行で強い馬にはヤングジョッキーよりも多少パワーは落ちてもベテランジョッキーの方が成功する傾向にある。もちろんベテランならば何でもいいわけでなく、腕と顔、両方立つ名手系ベテランが理想。

先行馬で大事なのはペースと先行合戦に巻き込まれないこと。名手系ベテランはパワーは落ちても、ペース配分は間違えないし、無駄な先行争いを抑制させる「顔」も持っている。

今の日本ジョッキー界で顔で騎乗できる騎手といえば、東は横山典、西は武豊が双璧。その武豊が鞍上にいることはクロフネサプライズには大きな安心ではないか。ってまた安心を上乗せしてしまった! 安心をサポートする保険会社の広告みたくなってるよ。ひひ。

実際、今年の武豊騎手の連対脚質は(逃9先8差6追7)。逃げの割合が一番多い。ふつうは先と差が多い。リーディング上位で他に「逃」の割合が一番多いのは中舘騎手しかいない(逃8先5差2追2)。武豊騎手自身も脚質を前方にシフトチェンジしてるようにも思える。

以下は武豊騎手の逃・先・差・追を割合で示したもの。
2009年 .150ー.308−.463−.077
2012年 .213ー.256−.367−.162
2013年 .300ー.266−.200−.233

4年前に比べて、逃げの占める割合は倍に増えて、占有率も一番高くなっている(割合的には逃げと追い込みが増えているのが面白い。つまり一番前と後ろからの競馬が増えて、馬ごみ競馬は減ったということ)。

逃げ先行馬は距離適性も大事。桜花賞はときに1400の快速先行馬もやって来るけど、そういう馬は最終的には1600では持たなかったりする。クロフネサプライズは1600(1−1−0−0)。その点でも頼もしく、名手がごまかしごまかし距離が持つように操縦するのとは意味合いがぜんぜん違う。

こういう馬が敗れるときは出遅れたときか、馬が勝手に暴走したときか、勝つ気のない馬に差し違いのやり合いに持ち込まれたとき。そういう役目は最近は外国人騎手だったりするけれど、今年の外国人騎手騎乗馬は差し系で、しかも人気もあって、武豊騎乗馬に差し違いを仕掛けるメリットはなし。マークすることはあっても、露骨なプレイはないだろう。

ヌヌ……。

クロフネ産って開催前半よりも後半の方が強いイメージもあって、それゆえにG1でも勝てているようにも思える。むしろ2週目の阪神JF、初週のチューリップで走ってることが頼もしく思える。重馬場でどこまで走れるかは未知だけど、荒れ馬場はむしろ歓迎ではないのか?

ヌヌヌ…ムムム…。乗せに乗せてしまった。さぁどうしよう。

ノービジョンなら1番人気は心配だ。

でも検証めいたことをしてしまうとなんだか頼もしく思えてきた。

1着は断言できなくとも1着〜3着の軸ならば、安心材料でいっぱいだ。

って、1番人気なんだから安心材料がいっぱいあっても何も不思議ではない。

ただ1番人気を心配するからニュースになるのであって、1番人気だけど安心だと書いてもなんのニュースにもならない!!

そもそも自分は1番人気を必要以上に心配する派だったはず。う〜む…今年の3歳牝馬の1番人気の負けっぷりに自分の羅針盤も狂ってきたか?

-----------------------------------------------
非社台系生産馬の1着は10年ぶり。
-----------------------------------------------

予想人気
1番人気 非系生産クロフネサプライズ 武豊
2番人気 ノーザンF生産トーセンソレイユ シュタルケ
3番人気 非系生産メイショウマンボ 武幸
4番人気 社台F生産レッドオーヴァル Mデムーロ
(3、4人気は入れ替わりもありそう)

1番人気クロフネサプライズの安心を上乗せしすぎたので、2番人気〜4番人気の安心を上乗せすることで心のバランスをはかることにした。

2番人気予定 トーセンソレイユ
ディープの妹でノーザンF生産で臨戦過程がレッドディザイアといっしょ。ここは上乗せ要素だけど、馬体重が前走420で、ここは心配ポイント。
去年も書いたけれど、桜花賞の馬体的馬券境界線は430キロ。
安心は450以上で、ギリギリ境界線が430。それ以下だと苦戦必至。
去年ジョワドヴィーヴルを心配したのも馬体重420を切りそうだったから(結果6着)。

阪神改修後はその傾向はより強まり、過去6年で430以下で馬券圏内入りしたのは15人気で2着したエフティマイア1頭のみ。
トーセンソレイユは2番人気になろうかという馬で、もし430を切って出走してくるようなら、それを理由に消すのもあり。

3番人気予定 メイショウマンボ
フィリーズレビュー組とチューリップ賞組は1着2着で折り合わない。
過去10年でもワンツーは1回もなく、馬券圏内で折り合えたのは去年の1着3着の1回だけ(チューリップ賞1着・Fレビュー3着)。
つまりメイショウマンボから2連系馬券を買うならば、チューリップ賞組を消せるわけで、馬券的広がりは大きい。ここはちょっとした夢ポイント。一発大穴しか興味がないのならば、メイショウマンボからけしからん夢を追うのも手だ。

ただし武幸騎手で差し系人気馬というと、5年前2番人気で5着に負けたリトルアマポーラを思い出してしまう。
おまけにFレビュー組が連対したのは過去10年で2回のみ。大穴は狙えそうだけどその分、超えねばならないハードルは当然高い。

4番人気予定 レッドオーヴァル
デビューから4戦すべてで1番人気の馬。それで2−1−0−1の成績なら悪くない。1番人気の呪縛から開放されて、弾ける可能性も十分。この馬も馬体は小さいが今回は430キロ以上で出走できそうで、トーセンソレイユよりは大丈夫そう。

ただし、過去4戦中2回出負けしており、そこはちょっと心配。最近のMデムーロ騎手は出遅れ、出負けが多いと自分は実感しており、角4競馬ならば得意の2段階スパートで出遅れを取り返せても、角2のスピード競馬では、さすがのMデムーロでも挽回は難しい。
いくら差しが決まることの多い桜花賞とはいえ、4角13番手以後で勝ってるのは安藤勝しかいない(3回)。仮にクロフネサプライズが35秒以上で前半進んだら、差し系は万事休すだ。

2番人気〜4番人気の買い材料を並べて、1番人気の心配指数を高めるつもりだったけど、なかなか上手くはいかなかった。それなりに美味しそうな部分はあったけど、不安な部分もちゃんとあるからだ。

ところで、武幸騎手が桜花賞で人気馬に騎乗するとリトルアマポーラを思い出しがちと書いたけれど、
逃げ先行馬の武豊と差し馬の武幸をセットにすると自分は桜花賞ではなく菊花賞を思い出してしまう。
7年前、武豊騎手がアドマイヤメインで逃げて3着し、武幸騎手がソングオブウインドで追い込んで1着したあの菊花賞を。

前半35秒を切らなければ先行馬が1着し、35秒を切ると差し馬が1着できる桜花賞の特徴を考えると、
武兄弟の馬から買う意味はそれなりに立つと思っている。

前半35秒を切らなかったら、つまり35秒台で武豊、35秒を切ったら、つまり34秒台で武幸。

リトルアマポーラのときは武豊騎手がいなかった。本当はポルトフィーノで出走予定だったけど出走取り消し。ポルトフィーノは逃げ先行馬で人気もある馬だったから、仮に出走できていたら、レースの流れも確実に変わったはずで、また別の結果になったかもしれない。

かつての威光は兄弟ともに失われつつあるかもしれないけれど、逆にそれでも1人気、3人気を取るとしたら、それは馬の実力を買われてのものであり、そこに感情的期待はあっても過大すぎる評価はないはず。少なくとも昔よりはないはず。

ならば純粋に買える。社台勢相手に武兄弟が非系で挑む構図は悪くないし、マッチメイク的にも大歓迎だ。武幸メイショウマンボの人気がもう少し下がるとベストだけれど、それは仕方がない。Cデムーロが出走できたら、兄弟対決がもっと引き立つけれど、それも仕方ない。

今週は天気が不安定で週末、どんな馬場になるのかわからないけれど、8日発売の競馬王5月号の特別付録「馬体シート」でクロフネサプライズとメイショウマンボの足下を透かしてみると、荒れ馬場でクロフネ、重馬場でマンボが上手そうに見える(POGの2歳馬馬体チェックにも使えるシートのようです。何でもオルフェーヴルの2歳時の馬体がディープインパクトにそっくりだったとか。そういうことがシートがあるとわかりやすいのだとか。けっこう使い勝手はよさそうだ)。

桜花賞は7枠を見よ、8枠を見よ、1番人気を見よ。そこから始めるのが自分のルーティン。だけど今年は武兄弟の枠を見よ、外国人騎手の枠を見よ。そこから始めてみようと思う。

桜花賞
武豊は、ペースは間違えない・クロフネサプライズ
それでも武豊がペースを間違えたら・メイショウマンボ

ヒモ注目馬
コレクターアイテム…3戦連続1番人気で、この馬もレッドオーヴァル同様に1人気の呪縛に開放されそうだから。また唯一の重賞1番人気1着経験馬。
アユサン…スタートさえまともなら、まだわからない。丸山騎手も阪神16にそろそろ慣れそうで、まだわからない。
ローブディサージュ…阪神JF1着馬だから。

競馬王5月号

競馬王5月号

競馬王5月号は「馬体メジャー」に注目!
4月8日発売の競馬王5月号、今回の目玉は綴込付録「馬体メジャー」です。特殊デザインを施した透明フィルムを馬体写真に重ねるだけで、各馬のスケール&適性が見抜けてしまう“POGファン必携のアイテム”の登場です! なんと、ディープインパクトと2歳初期のオルフェーヴルのシルエットはほぼ同じだったことも明らかになりました。

特集ではこの「馬体メジャー」を使い、大混戦の3歳GIをぶった切ります。有力馬の距離適性、コース適性、スケールを大胆にジャッジし、皐月賞、NHKマイルC、オークス、ダービーに最も適した馬の抽出を行なっています!

また、山本昌投手(中日ドラゴンズ)の「中京馬券勝負 密着レポート」、亀谷敬正&藤代三郎の「GIの裏でボロ儲け作戦」、グラサン師匠がノーザンファーム天栄に潜入した「鉄板競馬」など、盛り沢山の内容になっています。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング