スマートフォン版へ

G1レースでの“関東馬攻勢”はいつまで続く?

  • 2013年05月04日(土) 12時00分
「3歳秋に菊花賞と有馬記念を制した馬が、4歳になって阪神大賞典から天皇賞・春に向かうと勝てない?」。先週の当コラムでちょっとだけ心配していたことが現実になってしまいました。96年のマヤノトップガン、去年のオルフェーヴルに続いて、今年はゴールドシップが…。

 柏木集保さんの「重賞レース回顧」を読むと、ゴールドシップの敗因がよくわかります。歴史的ハイペースが歴史的な結末を招いたと言っていいでしょう。大本命に推されたゴールドシップの内田騎手には、どんな流れになっても勝たなければいけないという意識が働いていたはず。一方、フェノーメノの蛯名騎手は、ゴールドシップに勝つにはこれしかないと腹をくくっていたと思います。そこに、馬の能力、得手不得手が相まって…。いやぁ、勝負の世界は奥が深い!だからおもしろいんですよね。

 ところで今年は、桜花賞、皐月賞、春天を関東馬が制しました。これは、04年にダンスインザムード(藤沢和厩舎)が桜花賞、ダイワメジャー(上原厩舎)が皐月賞、イングランディーレ(清水美厩舎)が春天を勝って以来のこと。その前となると、86年〜桜花賞=メジロラモーヌ(奥平厩舎)、皐月賞=ダイナコスモス(沢厩舎)、春天=クシロキング(中野厩舎)〜までさかのぼらなければなりません。そういう意味では歴史的な出来事なのです。G1レースでの“関東馬攻勢”はいつまで続くのでしょうか。

 04年はNHKマイルCでキングカメハメハ(松田博厩舎)が優勝、連勝が止まってしまいました。

 一方、86年はNHKマイルCがなかった時代。春天の次のG1は安田記念でしたが、ここもギャロップダイナ(矢野進厩舎)が勝って関東馬4連勝。さらにオークスではメジロラモーヌが“2冠馬”となり、ダービーもダイナガリバー(松山康厩舎)が制覇します。それだけではありません。宝塚記念はパーシャンボーイ(高松厩舎)が勝ち、関東馬が春のG1タイトルを独占したのです(フェブラリーS、高松宮記念はG1昇格前)。

 秋になっても勢いは止まらず、天皇賞はサクラユタカオー(境勝厩舎)が優勝、エリザベス女王杯(3歳牝馬限定)はメジロラモーヌが勝って“3冠”を制覇。前年の朝日杯をダイシンフブキ(柴田寛厩舎)、有馬記念をシンボリルドルフ(野平祐厩舎)が制して以来続いていた関東馬のG1連勝は11にまで伸びました。ちなみにそれを止めたのは菊花賞のメジロデュレン(池江泰郎厩舎)でした。

 栗東トレセンに坂路コースができたのは85年のこと。85〜86年の関東馬の大攻勢を、関西の関係者はどういう思いで見ていたんでしょうね。それはともかく、3連勝しただけでは“関東馬の時代到来”とは言えないと思いますが、関東か関西か、どっちが勝つかを意識してG1を見るのもおもしろそうですよ。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング