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G1の週に東京競馬場で追うなんて、ジャパンカップにやって来る外国馬みたいじゃないか!

  • 2013年05月23日(木) 12時00分
今年のダービーは2つの鉄のような掟に照らすと超簡単であることがわかる。

1. 過去20年間で1着馬18頭が該当した掟
2. 過去26年間で該当馬ヴィクトワールピサ以外のすべてが1着した掟

1. 前走・前々走で人気か着順に「1」が2つ以上ある馬から勝ち馬は出る。
つまり直近で1人気か1着をたくさん集めた馬が勝つというもの。ただし前2走ともにオープン以上のレースであることが望ましい(該当1着馬18頭のうち、例外は3戦目で1着したフサイチコンコルド1頭のみ。それでも新馬・すみれSと1人気で連勝し。1を4つ集めていた)。

今年該当する馬はロゴタイプとキズナの2頭のみ。ロゴタイプはスプリングS・皐月賞を連続で1人気で1着した。キズナも毎日杯・京都新聞杯を連続で1人気で1着した。1は2つでいいのに両馬ともに1を4つ集めた。ひじょうに強力な2頭だ。

ダービーに勝つ馬はダービーに向かって、グングン調子が上がっていくと言われている。この掟がシンプルなのに成功率が高いのは、そこと(ダービーに向かっての上昇と)シンクロしているからではないか。

2. 皐月賞を1番人気で1着した馬がダービーに出走すると自動的に1番人気になって、そのまま、超高確率で1着する。

過去26年で皐月賞を1番人気で勝った馬はすべてダービーで1番人気になっている。この条件を満たして、負けたのは3年前のヴィクトワールピサ1頭のみ(3着)。

この掟をこのコラムで3年前に書いた。書いた途端に3着に敗れた。1番人気にはなった。けれど3着。でもその一度の3着でこの掟を消すこともなかろう。そもそも皐月賞を1番人気で勝つことは難しく、過去26年でも7頭しかいない。でもそうそうたる顔ぶれだ。ゴージャスなメンツだ。

トウカイテイオー・ミホノブルボン・ナリタブライアン・アグネスタキオン・ネオユニヴァース・ディープインパクト・ヴィクトワールピサ。

この内、アグネスタキオン以外の6頭がダービーに出走し、すべて1着になった。
負けたヴィクトワールピサもドバイWCで1着した馬で、皐月賞を1番人気で勝つことがただならぬことを示した。

ちなみに1の掟を満たさずに勝った馬はタヤスツヨシと去年のディープブリランテ。

ディープブリランテの鞍上は岩田。2の掟で唯一3着に敗れたのも岩田(ヴィクトワールピサ)。掟を撃破したのも岩田ならば、掟を守れなかったのも岩田。岩田のいろんな意味での破壊的な例外力が右にも左にも振れたと思えば納得できる。

そのヴィクトワールピサ以来、3年ぶりにロゴタイプが皐月賞を1番人気で勝った。

1の掟を満たすのはキズナとロゴタイプ。2の掟を満たす権利を保有するのはロゴタイプ。

1と2、ダブルで満たせるのはロゴタイプのみ。

そうロゴタイプのみなのだ。
これで、ロゴタイプがダービーで1番人気になったら、もう鉄板じゃないか!!

今までの例にならえば自動的に1番人気になるはず。だから鉄板宣言したいところだけど、一応、念のため、いつものようにnetkeiba.comの予想オッズを見ておく。

1番人気 キズナ
2番人気 ロゴタイプ

 わお!

 恐るべしキズナ。

キズナも1着になる掟を満たしているから、驚くべきことではないかもしれない。けれど、ロゴタイプはスプリングS1番人気1着→皐月賞1番人気1着した馬で、キズナは毎日杯1番人気1着→京都新聞杯1番人気1着した馬。格的には明らかに皐月賞1番人気1着の方が上。それでも人気でロゴタイプの上を行きそうだなんて、これがディープインパクトの吸引力か、それとも武豊の存在感か、いやキズナという馬名の琴線力か? いや血統&騎手&馬名の総合力かもしれない。すごいぞ!キズナ!

それでも皐月賞を1番人気で勝ったのはロゴタイプだ。おそらく何事かの心配指数が高まって、2番人気の支持になってしまっているのかもしれない。

いったいロゴタイプの心配事ってなんだ!?

騎手がMデムーロからCデムーロに替わることか?
これは大きいと思う。

Cデムーロがダメなのではなく、ロゴタイプの素質を開花させたMデムーロが騎乗するほうがいいに決まっている。

Cデムーロの東京経験の浅さを先週のオークスで心配してみたけれど、レッドオーヴァルは2番人気で17着に大惨敗した。17着は馬そのもののデキにあったからだと思うけれど、17着は見た目にデーハーでインパクトを与えるものではある。そういうことも心配指数を高めたか?

それとも距離不安か?
ロゴタイプのデビュー函館・芝1200というのが「ダービーを目指す馬のスタートラインではない」という見方もある。
たしかに昨今の競馬の流れを見ると、納得のいく心配ごとだ。しかしその一方で昨今ではなく一昔前、昨今が21世紀だとしたら、一昔前は80年代後半から90年代前半、もっとイカしたカッコいい言い方をするならばエイティーズ〜ナインティーズの競馬に立ち返れば特別不思議なことでもない。

ひと昔前のダービー馬とデビュー

89年ウィナーズサークル 福島芝1200・4着
92年ミホノブルボン 中京芝1000・1着
93年ウイニングチケット 函館芝1200・5着
94年ナリタブライアン 函館芝1200・2着
95年タヤスツヨシ 札幌芝1200・3着

ついでに21世紀

02年タニノギムレット 札幌ダ1000・2着

デビューやローテには流行り廃りもあるが、この頃の短距離デビューが前時代的な古い競馬と言ってしまえばそれまでだ。

競馬は血統を中心に育成技術等を改良しながら紡いでいくものだ。

だから「今」が常に一番正解でないといけない。それは重々承知している。

だけど、サンデーサイレンス産以前と以後と考えるとどうだろう。
短距離を嫌う理由に馬が前向きになりすぎる、引っかかり癖がつくから等言われる。そういう心配がサンデー産登場でより浮き彫りになったがゆえの昨今の現象と考えたらどうだろう。

そういえば80年代前半のシンボリルドルフはデビューが芝1000だったけど、「1600の競馬をして勝つ」という調教師の名言があった。80年代後半〜90年代前半まではこのルドルフ・デビューがお手本になっていたかもしれない。

あえて短い距離を使って、そこで1600の競馬をして、それで勝つくらいでないとダービーを勝つ力もセンスもないと判断していたのかもしれない。それはそれで理にかなっている。

馬が前向きになりすぎないのならば、距離の短いところから競馬を始めて、徐々に距離を伸ばして行く方法でも特に問題はないはず。
ロゴタイプは母父サンデーサイレンスだけど、父はローエングリン。まだ産駒として未知のローエングリンだけに手探りでレースを選んだのかもしれないけれど、それなりのスピードがあるから芝1200を使ったはず。

そこから距離を伸ばして、2歳暮れから成績が安定し、年があけてさらに強くなったとしたら、それはそれで悪い話ではない。一昔前の流行でも、そこにはある種の真理もあったはず。

短い距離を使って、距離を伸ばしながら勝ちまくる理想の展開といえば、ミホノブルボンか。

ミホノブルボン
新馬 芝1000 1人気1着
500万 芝1600 1人気1着
朝日杯3歳 芝1600 1人気1着
スプリングS 芝1800 1人気1着
皐月賞 芝2000 1人気1着
ダービー 芝2400 1人気1着

ロゴタイプ
新馬 芝1200 1人気1着
函館2歳 芝1200 14人気4着
クローバー 芝1500 2人気3着
札幌2歳 芝1800 8人気4着
ベゴニア 芝1600 4人気1着
朝日FS 芝1600 7人気1着
スプリンターズ 芝1800 1人気1着
皐月賞 芝2000 1人気1着

函館での何回かの出走はミホノブルボンというより、ナリタブライアンのそれに似ている。
(ブライアンは函館で芝1200を3戦して、2着1着6着。6着は函館3歳。)

それでもブライアンよりミホノブルボン的な匂いを感じるのは、秋からの臨戦と先行脚質のためか。なんせミホノブルボンもロゴタイプも2歳のジャパンカップ週に東京芝1600を使い、勝っている。しかもその東京1600からダービーまでの臨戦はミホノブルボンとロゴタイプはまったく同じ。人気は一致せずとも、オール1着であることも同じ。

80年代後半〜90年代前半は朝日杯を勝って、そのままダービー馬になる馬も多かった。
ミホノブルボンもナリタブライアンもそのパターンだ。
つまりロゴタイプを乱暴にたとえるなら「ファースト・ステップはナリタブライアンで、セカンド・ステップはミホノブルボンな馬」とも言える。
どちらもスプリングS・皐月賞・ダービーと1番人気で勝っていて、そこも頼もしい。

21世紀の感覚で見るとどうしても距離不安感はつきまとうけれど、90年代前半感覚でみると、むしろ少しずつ高いレベルで成長しているとも言える。
しかもロゴタイプは社台系牝馬。母父にサンデーサイレンスがいて、21世紀の味付けも施されている。

つまりロゴタイプの臨戦からは距離不安はないのではないか? とも思える。
もしそれが原因で2番人気になると言うのならば、1番人気に最大の敬意を表すのがダービーといえども、今年は2番人気でアゲの可能性もある。Cデムーロの東京競馬場成績が心配なら、余計に2番人気の方がよろしく思える。

とはいえ。

とはいえですよ。

ダービーはやっぱり1番人気に最大の敬意を表するレースだとも思うんですよ。
1番人気は過去10年で(6-0-1-3)。
1着か3着以下。
馬単で買うなら1着付けでいい。

キズナは前走・京都新聞杯を1番人気で1着した。京都新聞杯が今の時期に芝2200で行われるようになって11年。まだ前走京都新聞杯組はダービーで1着したことはない。しかし京都新聞杯を1番人気で勝って、ダービーでも1番人気に支持された馬もまだいない。

去年、NHKマイルをカレンブラックヒルが勝ったときも、前走NZT1着馬はNHKマイルを勝ったことがないと言われていた。けれどNZTを1番人気で1着し、NHKマイルでも1番人気に支持された馬はまだいなかった。カレンブラックヒルが初だった。

その理屈は採用できる。京都新聞杯を1番人気で1着し、ダービーで1番人気になった馬はまだいない。だから「なれば」勝つ可能性大。

そういえば前走京都新聞杯を1番人気で1着して、ダービーで2番人気になった馬はいた。キズナと同じ佐々木晶厩舎のインティライミだ。そのときの着順はディープインパクトの2着。うは!

というわけで、今年も鉄の掟該当馬はなかなか蹴飛ばせない。
キズナもロゴタイプも消せないことがわかった!

わかりました!!!

(って1番人気・2番人気を争う馬なんだから消せなくて当然だ! なのに声高らかに消せない!などと言ってしまいました。これがダービーの魔力ってヤツでしょうか?)

こういう場合は2着しそうな馬からキズナとロゴタイプに流せばいい。
けしからん夢を見せてくれそうな馬の3着を狙えばいい。

けしからん夢といえば、今年は藤沢和厩舎で決まりか。
東京競馬場の芝コースにダービーに出走する3頭だけでなく、総勢10頭で乗り込んで,追い切るなんて、けしからんにもほどがある(すべていい意味で、です)。

G1の週に東京競馬場で追うなんて、ジャパンカップにやって来る外国馬みたいじゃないか!
いや、外国馬だって帯同込みでも2頭だ。10頭での追い切りなんて、ちょっとしたレースじゃないか!
ん〜なんだか、けしからん匂いがプンプンする!

コディーノはウィリアムズさん騎乗で、そもそも香ばしい匂いが漂っていたけれど、フラムドグロワールからもレッドレイヴンからも香ばしさが漂ってくる気がする(すべていい意味で、です)。

東京競馬場の芝コースで追うことにどんな効能があるかは自分にはわかりません。
けれど、その道のプロがダービーを前に仕掛けて来る(競馬王編集部のカキハラによると、藤沢和厩舎はかつては芝追い切りの名人だったらしい)。その“仕掛ける”行為そのものにテンションがあがる自分がいる。

夏だからこうなった! 開放的になったとき、全部、夏の太陽のせいにするアレと同じ。
ダービーだからこうなったのだとしたら、それこそがダービーの魔力であり、魅惑のはず。

今年は、ダービーだからそうなったと決めつけ、藤沢和厩舎の3頭でけしからん夢を見るのも面白いのではないか? そんな第80回日本ダービーの週の真ん中でございます。

吉と出るか、凶と出るかではなく、丁と出るか半と出るかで、自分は丁に張る。
丁が出たらブラボー! 半が出たらドボン! 

ダービー注目馬
1着 ロゴタイプ・キズナ
けしからん夢 藤沢和の3頭 メイケイペガスター 
おさえ 蛯名 福永

メイケイペガスター…世はまさにゆるキャラ戦国時代。くまもんが頭1つ抜け出たところを、全国の精鋭たちが追う構図か。
鴨川と神田川を地下で結ぶ秘密の寄合所に出入りする名古屋系の方に中京競馬場のペガサススタンドをモチーフにしたキャラのペガスターについて質問したところ、名古屋でペガスターを認知してる人は100人中一人か二人との答えが大半を占めた。名古屋系特有の奥ゆかしい返答と受け止めたいけれど、どうやら本当にペガスターはあまり認知されてない様子。おっと!

今年はダービー80周年記念で、当日は東京競馬場では「シンザン、タケホープ、ワカタカ、シンボリルドルフ」といった名馬でレースが組まれ、京都競馬場でも「トキノミノル・ナリタブライアン・ディープインパクト」でレースが組まれている。東西でフェスティバル。真ん中名古屋では何があるんだ? 少なくともレースはない! おっと!おっと!

メイケイペガスターがダービーであっと言わせることは、いろんな意味で大きいと思う。この馬もまたけしからん材料でいっぱいだ。

蛯名騎手と福永騎手については、もはや勝つまで抑えずにはいられない。意地? 強迫観念? よくわかりません。

ペガスター
ペガスター
ぺガスターの人形。くまもんに勝てるゆるいオーラが出てるかはわからないけれど、これが第80回メモリアル・ダービーに中京競馬場から送り込まれた刺客だと思うと、けしからん殺気いっぱいに思えてくる………。がんばれ〜

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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