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ロードカナロアはスーパー・スプリンターの域に達しているか? 梅雨は日曜日も梅雨か?

  • 2013年05月30日(木) 12時00分
1番人気をないがしろにできるG1はいくつかあるけれど、春は天皇賞春と安田記念が双璧ではないか。

天皇賞春の1番人気成績(1-0-0-9)
安田記念の1番人気成績(1-0-1-8)

天皇賞春は、昔ほど重きを置かれていない長距離G1だから、力関係に誤解があってもおかしくない。1着できたのもディープインパクト1頭というのも頷ける。

しかし、安田記念は東京マイル。馬のポテンシャルが発揮されやすいと言われる東京競馬場だけに力関係の誤解も生まれにくいと思いがちだけど、こと人気に関しては誤解が生まれやすいようだ。つまり自分の中ではこの2レースは、1番人気をないがしろにしていい指数、略してナイガシロ指数の高いレースの双璧という解釈だ。(どう感じるかは個人の主観によるけれど、自分は10年で一度も1番人気が勝たないレースよりも、1回くらい勝つときがある方がリアリティとナイガシロティが相まって好き。)

ちなみにこの10年で安田記念を1番人気で1着したのはウオッカで、3着したのはローエングリン。

この2頭に共通することは前走1番人気で1着していたこと。
ウオッカはVマイルを1番人気1着して、安田記念を1番人気1着。
(前年も1着しているけれど、そのときは前走Vマイルを1番人気2着→安田記念を2番人気で1着)

ローエングリンは前走マイラーズCを1番人気1着して、安田記念を1番人気3着。
(ローエングリンは翌年も1番人気になっているけれど、そのときは5着。前走マイラーズCは1番人気2着だった)

つまり、前走1番人気で1着して、安田記念でも1番人気になった馬が、過去に上記した2頭以外にいなければ気軽にないがしろれるわけだ。1番人気が弱いレースなのだからそういう馬はそうそう………おっと、もう1頭いた。いてしまった。

スズカフェニックスが前走・高松宮記念を1番人気1着してた。で、安田記念は1番人気5着。おっととっと!

高松宮記念を1番人気1着といえば、今年はロードカナロアがいる。

ロードカナロアは、全成績(10-4-1-0)で、国内のみならず、香港でもG1を勝っている強い馬。だからスズカフェニックスと比較するのはちょっと違う気もするけれど、1600はデビュー2戦目ジュニアC2着の1回のみで、1600重賞は初挑戦も事実。

仮に安田記念で1番人気になるようだと、ここは長考どころではあるけれど……………。
取りあえず結論は先延ばししてしまおう。

というわけで、まずは一旦整理してみる。

「安田記念1番人気馬は、前走1番人気で1着していないと掲示板に載れない。」
う〜む、言い得てるけれど足りない気もする。

「安田記念1番人気馬は、前走1番人気で1着していたら、1着か3着か5着できる」

うむ、これだ! 馬券圏外の5着、だけど惨敗でもない5着。この微妙さがいい。だいたいな感じがいい。このだいたいさのおかげで、安田記念は1番人気をナイガシロにしていいことがより浮き彫りになった気もする!!

なぜ、ナイガシロ指数が高いレースなのにこれほど1番人気の取捨を気にするのかというと、
今年は前走1番人気で1着した馬が数頭いるからだ。

前走1番人気で1着している馬
ヴィルシーナ ヴィクトリアM 1人気1着
ダイワマジョーレ 京王杯SC 1人気1着
ロードカナロア 高松宮記念 1人気1着

この3頭のどれかが1番人気になったら、1着か3着か5着で長考せねばならない。
だけど、恐ろしいことに前走1番人気で1着したにも関わらず、ここで1番人気になれなかったら、それは自動的に馬券圏外をも意味する。

この10年でそのような馬は1頭も馬券圏内に入ってきていない。
該当馬の最高着順は4着。マイラーズCを1番人気で1着して、安田記念では2番人気だったダイワメジャーの4着1回のみ。掲示板に入れたのもメジャー1頭のみ。

先週のダービーがいい例だ。ダービー1着の鉄の掟を満たしている馬はキズナとロゴタイプだった。
キズナは京都新聞杯を1番人気で1着して、ダービーも1番人気になって1着した。京都新聞杯を1番人気で1着した馬がダービーでも1番人気になったのはキズナが初めてだった。
逆に皐月賞を1番人気で1着して、ダービーで1番人気になれなかった馬はロゴタイプが初めてだった。そのロゴは2番人気でダービー5着。皐月賞を1番人気で1着した馬がダービーで馬券圏外だったのはロゴが初めてでもあった。

人気は基本的にはいらないはず。だけど、ときに人気があったほうがいい場合もある。
安田記念は基本ナイガシロ指数の高いレースで、1番人気は無条件にぶったぎってもいいはず。それでも、ときに大事にせねばならないこともある。

今年は、その「ときに」が生まれるのか? 生まれてしまうのか?
前記したように1番人気になるとナイガシロしにくくなる可能性を秘めた馬は3頭。

ヴィルシーナ ダイワマッジョーレ ロードカナロア 

いつものようにnetkeiba.comで予想オッズをチェック。

1番人気はグランプリボス!!

ヴィルシーナは予想8人気
ダイワマッジョーレは予想6人気
ロードカナロアは予想2人気

まだわからない。今年は混戦のはずだ。だから1番人気だって、どう転ぶかわからない。
けれど、現状ではヴィルシーナもダイワマッジョーレもロードカナロアも馬券圏外率は上昇中だ!!
ついでにグランプリボスも圏外!!

ワオ!

もうちょっと冷静に見てみる。

1番人気 グランプリボス 4.2
2番人気 ロードカナロア 5.0
3番人気 ショウナンマイティ 5.4
3番人気 カレンブラックヒル 5.4

現状、予想とはいえ接戦を演じているのはこの4頭。
ロードカナロアは1番人気を取りたいけれど、他3頭は1番人気にならないほうがいい。

このままならば前走1番人気で1着してないグランプリボスは消せる。だけどロードカナロアが1番人気になったらやっかいだ。

前述したように高松宮1番人気1着→安田記念1番人気パターンはスズカフェニックス5着の前例があるから、軽んじろうと思えば思える。けれど高松宮記念がG1初勝利だったスズカフェニックスと高松宮記念1着がG1、3勝目で、しかもデビュー以来一度も馬券圏外に敗れたことのないロードカナロアを同じ扱いにしていいものか?

スズカフェニックス
阪急杯2人気3着→高松宮1人気1着→
ロードカナロア
阪急杯1人気1着→高松宮1人気1着→

これだけ見てもロードカナロアの方が一枚上に思える。スプリンターズS1着、香港スプリント1着など出すまでもない。
人気にかぎらず高松宮記念1着馬が安田記念に挑戦して、馬券圏内に入れたことは一度もない(高松宮1着馬が大事)。
最高でスズカフェニックスの5着。
つまりロードカナロアがスズカフェニックスより強いと思えれば、さらに上の着順の期待はできる。

実績的には明らかにカナロアは上だ。けれど1600重賞勝ち(東京新聞杯)や2000勝ち経験もあったスズカフェニックスに対して、ロードカナロアには1600経験が2戦目のジュニアC2着1回しかない。そこをどう捉えるか?

で、サンプリング収集に入った。なんかいい例はないのか? もっとグローバルでユニバーサルな基準で、なんかいいサンプルはないのか?
あった。苦労するかと思いきやカンタンに見つかった。

サイレントウィットネスだ。
デビューから17連勝を達成し、当時(05年)の世界記録を作った香港の歴史的スーパー・スプリンター。この馬と強さの質が似ている気がする。

サイレントウィットネスは16連勝までは1000と1200ばかりを使われていた。
そこから活躍の幅を広めるためか、1400、1600に挑戦しはじめた。

16連勝→G2・1400・1着→G1・1600・2着→安田記念3着→スプリンターズS1着

スプリンターズSまでで、18-1-1-0
1000 12-0-0-0
1200  5-0-0-0
1400  1-0-0-0
1600  0-1-1-0

ロードカナロアは現在(10-4-1-0)
1200 9-2-1-0
1400 1-1-0-0
1600 0-1-0-0

ロードカナロアはデビュー3戦目に500万の1400で2着した。その後キャリアを積んで、G3の重賞阪急杯1400で1着した。
1600はデビュー2戦目のジュニアC2着以来。キャリアを積んできたことを思うと、ここでも通用する気もする。
っていうか、たとえベストがスプリントでも、スーパー・スプリンターに本格化しているとしたら、サイレントウィットネス同様に1600もそれなりにこなせてしまうかもしれない。

サイレントウィットネスは、香港のチャンピオンズマイル(1600)2着、安田記念3着。

はたして、ロードカナロアはスーパー・スプリンターの域に達しているか?

??????????????

あれ? 1番人気をないがしろにするはずが、なんか必死だ。サイレントウィットネスを引き合いに出したりなんかして、一生懸命だ。たは! いつからこうなった? どこからこうなった?

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関東地方も梅雨入りした。
週間天気予報によると、日曜日の東京は曇り時々雨。降水確率は60%だ。

梅雨入りしたからといって、そうそう毎日雨が降るわけでもない。
その証拠に安田記念より前に梅雨入りした年は過去10年で4回あるけれど、雨が降ったり、稍重以上になった年は1回しかない。あとはみんな良馬場だ。

とはいえ、稍重だった年の1着・3着馬が前走産経大阪杯だったことは見逃したくない。
過去10年で前走が1800以上だった馬が2頭馬券圏内に入った年はこの1回のみ。

04年 雨 稍重
1着 ツルマルボーイ 父ダンスインザダーク 大阪杯4人気6着
2着 テレグノシス  父トニービン 京王杯5人気2着
3着 バランスオブゲーム 父フサイチコンコルド 大阪杯2人気4着

時計1.32.6
この10年で7番目に遅い時計だ。
そういえば、1.33.5と一番遅い時計だった09年に2着したディープスカイも前走・大阪杯だった。
大阪杯組が馬券になったのはこれだけ。

今年は大阪杯から2頭が参戦する。
ダークシャドウ(父ダンスインザダーク)とショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)。
2000以上でそれなりに実績のある2頭だ。
特にダークシャドウはツルマルボーイと同じダンスインザダーク産だけでなく、最近、ず〜〜〜っと単勝を追いかけている戸崎騎手鞍上だ(4/18付け参照)。

安藤勝己騎手は中央入り3戦目の重賞騎乗で1着した。
岩田騎手は17戦目で1着した。
内田博騎手は13戦目。
戸崎騎手は現在(0-3-2-16)で21戦騎乗して未勝利。

今年の勝率.179を考えたら、もう勝つころだろう(って4/18にも書いた)。

ダークシャドウはレコードで決まった天皇賞秋に1.56.2で2着していて、時計勝負の裏付けもある。
仮に雨など降らなくても期待は持てそう。

予想5番人気は悪くない。お手頃だ。単勝も買いやすいし、戸崎騎手にもいい加減勝って欲しい。
できれば、前走大阪杯のショウナンマイティもいっしょに連れてきてほしい。
いやこの際拡大解釈して、前走2000仲間の新潟大賞典のナカヤマナイトを連れてきて欲しい。
ナカヤマナイトは予想12番人気! うん、こっちの方が断然おいしい!

香港について。

これは何回か書いているけど、香港の馬は前半3Fがそろっと、ゆったりと入った年にしか連に絡んでない。
過去13年で前半3Fが遅かったベスト3は、13年前の34.9、7年前の34.8、5年前の34.6。
この遅かった3回でのみ連対している。2勝2着1回。
(サイレントウィットネスは前半33.9のレースで3着)

つまりポイントは前半3Fが34秒台後半になるかどうか。
今年「なる」と思えば買えるし、「ならない」と思えば買えない(ってここ2年毎年書いている。というより待っている)。

ちなみに直近4年はすべて前半33秒台で、香港の馬は全滅。
昨今の速い競馬の東京ではなかなか買いにくい。
ただ今年はどうだろう?
梅雨入りして、日曜には雨が60%で降るそうだ。
逃げる馬も現状ではシルポートしか見当たらない。

シルポートは34秒台後半〜35秒台の逃げで好走しやすい馬で、もし多少なりとも時計のかかる馬場になって、しかもマイペースで行けるならば、34秒台後半で逃げられるかもしれない。

なぜか直近2年の安田記念では33秒台で逃げて惨敗していたけれど、今年は梅雨入りしたし、年もとったしで、ナチュラルに遅くなる可能性もある。
そういえばマイルチャンピオンシップでは35.0で逃げて、4着と見せ場を作っただけでなく、同厩舎のサダムパテックも1着した。自身のこと、サダムパテックのこと、両方考えても入りは遅いほうがいいはず。

グロリアスデイズは去年の安田記念では1.32.4で走った。14着と大惨敗だったけれど、前半が34秒台後半の年ならば、十分通用する時計でもある。だから今年もまだ見限りたくない。シルポートの逃げはあてにできないけれど、天気が崩れればまだわからない。

はたして今週日曜日、梅雨はどうしているだろう。

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安田記念注目系

■1番人気になったら、ないがしろにしよう→ほとんどの馬
■1番人気になったら、長考しよう→ロードカナロア(ヴィルシーナ・ダイワマッジョーレ)
■1番人気にならなくても、スーパー・スプリンターかもしれないから、長考しよう→ロードカナロア
■1番人気にならなかったら、長考しょう→ダークシャドウ
■ダークシャドウが走りそうだと思ったら、仲間に入れておこう→ナカヤマナイト・ショウナンマイティ
■前半3Fが遅いような気がしたら、買ってしまおう→香港勢・カレンブラックヒル

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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