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新穴男!丸田恭介の思考回路

  • 2013年06月11日(火) 18時00分
赤見:今週から函館ですけど、函館競馬場はどんな印象ですか?

北海道出身の丸田恭介騎手

北海道出身の丸田恭介騎手

丸田「季節的にも涼しくて、競馬するにはいい環境ですね。北海道出身なんで、デビューした頃から毎年行ってるんです。

洋芝のレースって北海道だけなんで、感触も違いますよね。クッションが利いてるんで、力のいる感じだから、馬によって得意不得意はあると思います。それに、ジョッキーも東と西でシャッフルになるし、その中でもトップジョッキーが多く来るので、すごく勉強になりますね。僕がいつも行ってるローカルがどうってわけではないですけど、馬のコントロールだったり、動くタイミングもしっかりしてる人たちなんでね。なかなか…思った競馬が出来ないことの方が多いです」

赤見:今は、どんなことを大事にして乗ってます?

丸田「勝つためには馬の能力を引き出せることが大事ですけど、そのためにどうやって上に乗ってあげてたら走りやすいのかなって考えてます。馬は体を大きく使って進んで行くわけじゃないですか。その動きの中で、例えば前脚を掻き込む時に前に乗り過ぎてたら、馬って肩が出るのかな…とか。後ろ脚が踏み込む時にどういう風にバランスを取ってたら馬は苦しいのかなとか。前脚の掻き込みが強かったり、突っ張って走ったり、後ろがすごく強かったり。軽くさばく馬もいるし、頭が高い低い…体の造りとかいろいろあるし。気持ちもそうですよね。何が正解かわかんないですけど、やるべきことをやって、ひとつひとつの経験を大事にしたいんです」

赤見:一頭一頭でちょっとずつバランスを変えてるってことですか?

丸田「変えるっていうよりは、こう乗ったら乗りやすいのかなって考えてて、結果的に変わってるのかもしれないですけど。調教でも意識してますね。

あとは、馬がゆっくりのペースから速いペースに行く時に、引っ張ったままからいきなり放したって動かない。やっぱり準備が必要じゃないですか。言葉にすると難しいんですけど。例えば車だとして、僕が軽に乗ってて前に外車とかすごい速い車がいるとするじゃないですか。前の車がガッてブレーキ踏んだら僕も減速するでしょ? それでまた前がスピード上げたら、軽は絶対追いつかないんですよ。それなら、もう少し離れたところにいて、前が減速して来ても詰まんないような距離感を保ったまま、前が加速した時に一緒に加速して行ければまだスムーズなのかなと。減速してからアクセル踏むって、けっこうガソリン使うし、加速するまでに時間のロスもあるので。そういうロスのないように運びたいんです。でも…あんまりこういうの言いたくないんですよ。だって、今はこういう風に思ってるけど、次聞かれた時はまた違う考えかもしれないんで」

赤見:今現在の騎乗論ということですね。まるちゃんと言えば、穴馬を持って来るイメージが強いんですけど。

丸田「今言ったみたいなことやってると、結局位置取りが下がっちゃうんです。途中でブレーキ踏まないために、位置取ってないわけですから。そういう時、前が苦しくなるような展開になると、来ちゃったりするんです。でもこれ…完全に僕の営業妨害じゃないですか(苦笑)。まぁ、今のプレースタイルなんでね。これだけじゃいけないのはわかってるんです。前に行く馬は前に行く馬で、どういうリズム刻めばいいのかとかも考えてますよ」

赤見:レース前はまず何を考えますか?

丸田「やべぇ、緊張する…って(笑)。人気とか関係なく、『こうしたい!』って想いがあり過ぎてそうなっちゃうんです。シュミレーションして、こういう形になったらこう来るんじゃないかとか。けっこう漁夫の利みたいなこともありますからね。1番人気2番人気とかの馬ならば、強気に乗ってもいいですし。でも基本的には、やっぱりスタミナのロスがないようにって思います。後ろから追い込む方が好きっていうか、結果的に追い込めると気持ちいいですし。周りが止まってるように見えて、サーっと抜けて来る感じはすごいですよね。あれはけっこう、この仕事やってて良かったなって思います」

赤見:でも逆に、詰まる危険性も高いでしょ?

丸田「詰まるリスクを冒さないで、1着取れるならそれを目指しますけど、リスクがないと取れない場合の方が多いんですよ。あわよくばって狙ってるような馬は。僕の判断でやって詰まって降ろされるなら、まぁ仕方ないです。そういう覚悟はいつもして乗ってます。1回1回が勝負なんで。仮に僕が乗って詰まって負けて、次に他の人が乗って同じ競馬してスムーズにさばけて勝ったなら、ある程度僕のやってたことは間違ってなかったんだなって思えますし。勝ち星一つ僕が積み重ねられなかっただけで、糧にはなりますよね。乗り替わりになったら悔しいけど、やっぱりそういうのも勉強になります」

赤見:後ろからさばく時、どっちに行くかってどうやって決めてますか?

デビュー1年目のまるちゃん

デビュー1年目のまるちゃん

丸田「勘に近いものがありますね。こう行こうと思ってたけど、なんか違うと思ったら逆に行くとか。結果的に後でレース見ると、その時感じてたものがあるんだなって思います。どこを見るってわけでもないですけど、全体をパッと見た時になんとなく気になることがあったら、今は早く進路を変えてますね。

詰まったらしょうがないって、あえて詰まりに行くこともあります。例えば逃げ馬の集団がいるじゃないですか。その集団の後ろに僕はいるとして、2頭目の人が外に出そうとしてて、それに釣られて3頭目の馬も外に出しそうだなと思った瞬間にもう内行きますね。1頭目2頭目は見えないことが多いですけど。1頭目の逃げてる馬がタレてこようが、内狙いに行きます。

直線向いた時に逃げ馬の後ろにいられれば究極にロスがないですから。脚は残ってるし、前が開いたらしめたもんです。これは絶対にさばくっていう競馬じゃないですけど。絶対にさばくんだったら、先行集団の後ろで待って、待って待って、行くとこ行くとこさばいて行けばいいですけど。ただ、ジッとしてることで脚をタメることも大事ですけど、踏み遅れになることもあるので。これ以上待ったらもう…ってなったら、『行け!』ってなります」

赤見:それはもう経験から来る感覚ですか?

丸田「もうね、イヤっちゅうほど1、2年目で詰まったんでね(苦笑)。『どんだけお前詰まるんだ』って言われるくらい詰まってたんで。色んな人に迷惑もかけましたし。

僕ね、本当に何にもわかってなかったんですよ。強い馬に上手い人が乗ってて、それを新人の僕が成績の劣る馬に乗ってたら、勝つにはインしかないって思ってて。今考えれば馬のフットワークによってとか、外回した方がいい馬もいるってわかるんですけど。ただ勝ちたいって気持ちだけで、内に突っ込んでって馬群をガチャガチャにして、『またお前は! 外に出せって言っただろ』ってクビになって。

例えば3コーナーの入り口って、みんな内に寄って来てグッと集団が縮むじゃないですか。入口でちょこっと開いてる隙間なんて、一瞬でグシャッと詰まるわけですよ。そこに平気で頭だけ突っ込んでって、僕が無理に入り切ったとしても、必ず誰かが割を食うんです。で、グシャッてなって、他のところへもバラバラって煽りがいく。当時は、『すみません』て謝りながらも、『だって開いてるんだもん』て思ってたんです。でも本当に危なくて、僕が落ちる可能性もそうですけど、人を落とす可能性がすごく大きかった。今も勝ちたい気持ちは変わってないですけど、もうグチャグチャにはしてないです」

赤見:こういう時はまるちゃん馬券は買いだっていうのを教えて下さい。

現在のまるちゃん

現在のまるちゃん

丸田「難しいなぁ…。ああ、詰まって負けたら次は買いです。僕、全然めげないんで(笑)。詰まって負けたからって、次は安全策で外回そうとか簡単には思わないです。もちろん、外でも勝てるなと思ったらそうしますけどね。

僕が一発勝つ馬って、近走の成績が良くない馬が多いんですよ。二桁着順が続いてても、着差が少ないとか。追い込んで来て負けてるとかね。例え5着に入ってても、1.5秒負けてたらさすがにキツイでしょ。メンバーにもよりますけど、着順より着差を見て下さい」

赤見:では、今週から始まる函館開催に向けてひとことお願いします。

丸田「2年目の福島でキッカケをもらって、その後いろんな経験をさせてもらったのが函館なんでね。成績はそこそこ出てるような気がするんです。家族とか友達の前でレースを見せられる機会も少ないんで、北海道開催は楽しみというか。僕が勝つ姿を見ると祖母が元気になるって言ってくれるんで、そういうのはやっぱり嬉しいじゃないですか。

いつもは函館と札幌の2つで滞在競馬が出来るけど、今年は札幌がないので。函館にいる馬だけの競馬にほぼなりそうなので、美浦から通いの馬もいるかもしれないですね。そういう意味でも調整が難しいだろうし、今年はとにかく変則的。開催も長いんで、目指せ函館リーディングでがんばります!」[取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
ご自身の現役時代には障害GIを勝った経験のある常石勝義さん。次週からは豪華障害ジョッキーが毎回登場し、常石さんと熱い障害トークを繰り広げます! 公開は6/18(火)18時、お楽しみに。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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