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後ろから差させない3強ならば、答えはカンタンなはずだ!

  • 2013年06月20日(木) 12時00分
強い馬の陣営コメントに「後ろから差されることはない」というのがある。

「後ろから差されることはない」

たいていこういうコメントは差し系の強い馬に騎乗している騎手から発せられる。
前方を捕まえきれない負けはあっても、何かに差されて負けることはない。だから、取りこぼししないようにせねば…そんな自戒の念のこもった、だけど自信もある趣きといったところか。

しかしこれは強い差し系の馬だけにあてはまるものでもないはず。
先行して、抜かせない。これだってぜんぜんありだ。騎手のスパートのタイミングもあるだろうが先行しても同じことは言えるはず。

ただしあくまでも「強い馬」に対してだ。
強いと思われていたけれど、そこまで強くないことも多々ある。

多々あるけれど、一般的に「けっして差させない」ことは、強い馬の条件の1つのはず!

と、力をこめたところで、澱みなく宝塚記念だ。3強対決の宝塚記念だ。
ゴールドシップ・ジェンティルドンナ・フェノーメノ
もしこの3頭がみな「差させない」条件を満たしている強い馬ならば、
この対決の答えはカンタンだ。

一番前を位置取ったものが勝つ。

そりゃそうだ。強い馬は抜かせないのだから、道中一番前にいる馬が勝つに決まっている。

どえらいペースに巻き込まれる。
道中どえらい出来事に巻き込まれる。もしくはドエライ出来事を巻き起こす。
そういうどえらい何かに巻き込まれなければ、
(差させない強い馬同士ならば)一番前にいる馬が勝つはず。

アメリカでは2頭立てのマッチレースで勝つ極意は先手を取ることと言われているそうだ。
ともすれば後ろにピッタリつけて、最後の直線で叩き合って、ちょこんと差す方が極意に思えるけれど、違うようだ。でも強い馬は抜かせないという観点で見れば、それも納得できる。

なぜ、今回このようなことを持ち出すのかというと、いわゆる3強と呼ばれる馬たちの成績と過去の対戦を見ていると、みな後ろから差させない強い馬の領域に到達しつつあるのではないか? と思えてならないからだ。

・フェノーメノ
よ〜く見ると、青葉賞からほとんど差されてない。いや厳密には差されたこともある。天皇賞・秋はエイシンフラッシュに差された。けれど形は最内からの出し抜けだった。ジャパンカップはルーラーシップ・ダークシャドウに外から一気に抜かれた。けれど自身よりすぐ内のトーセンジョーダンを最後まで抜かせなかった。その2戦はどちらも古馬最高峰との対決で、3歳だったことを思えば情状の余地あり。

4歳になっての2戦(日経賞・天皇賞・春)を見る限りでは、3歳時より「抜かせない強さ」を身に着けてきているように感じる。去年までのフェノーメノはあくまでも「怪物初期」の怪物くん段階で、4歳になって真の意味で怪物になっているとすれば、宝塚でも抜かせないはず。

・ジェンティルドンナ
後ろから差されたのはチューリップ賞のみ。これだって、ごちゃついた内にいて、前が開かず、そのスキに遠くからハナズゴールに差されたにすぎない。前が開いてからの伸びを見ると、4着ではあったけれど、差されての負けとも言えない。

熱発明けが敗因と言われているけれど、たとえそれが原因で本調子になかったとしても、位置取り次第では勝っていたようにも思える。
ドバイシーマクラシック2着も、すぐ前にいたセントニコラスアビーを捕まえきれずの負けで、差されてはいない。デビュー戦2着も逃げた馬を捕まえきれずの2着。つまりジェンティルドンナはデビュー以来一度もまともに差されたことはない馬といえる。

・ゴールドシップ 
前走の天皇賞春をどう取るか? 差されたと取るか? 差されたわけではないと取るか? 問題はそこだけ。2着以下は4回あるけれど、天皇賞春以外はすべて、前を捕まえきれずの負け。

問題の天皇賞春は最後の直線をコーナーリングで1〜3着馬に前に出られ、自身は直線入口で外から被せてきたジャガーメイルを、外から抜いて5着した。4着のアドマイヤラクティは内から突っ込んできた馬で、ゴールドシップの抜かせない意地は垣間見えた内容でもあった。

こうやってみると、3頭とも抜かせないポテンシャルを持ってることがわかるし、抜かせないポテンシャルが開化してきてることもわかる。

つまり、やっぱり、こうなっちゃうと、道中の位置が重要で、4角を回ったときに一番前にいた馬が押し切ってしまうのではないか。そんな気がしてならない。

それは過去の3頭の直接対決を見てもわかる。3強3Pはないけれど、2頭ずつの組み合わせはあった。しかもすべて前にいた馬が先着している。

・ゴールドシップ対フェノーメノ
【ダービー】
ゴールドシップ 2人気5着 9-13-11-10
フェノーメノ  5人気2着 7-7-6-7

【天皇賞春】
ゴールドシップ 1人気5着 15-13-6-4
フェノーメノ  2人気1着 7-7-3-2

・ジェンティルドンナ対フェノーメノ
【ジャパンカップ】
ジェンティルドンナ 3人気1着 2-2-3-6
フェノーメノ    4人気5着 4-5-5-7

ほら、このとおり。
そりゃそうだ。抜かせない馬たちなんだから当然だ。

では、どの馬が3頭の中で一番前のポジションを取るのか?

ムズカシイ!!

カンタンなはずなのに急にムズカシイ!!

ふつうに考えたら、フェノーメノか?
でもジャパンカップではジェンティルの方が前だった。

ミスター・マクリのゴールドシップの先行策はないのか?
それだってないとは言えない。

報道では先週内田博騎手が自ら調教にまたがったとか。
どうみても、宝塚記念を勝つことにこだわったゆえの調教騎乗に思える。

そもそも共同通信杯では3番手追走した馬だ。その記憶が陣営にないわけがない。

天皇賞春で、いつものマクリが通用しない相手がいるとわかってしまった以上は、同じ作戦は誰も望むまい。宝塚記念だけでなく、秋の東京G1を考えれば、やっぱり前で競馬をすることを試しておきたいはず。

スポーツ紙上での須貝師のコメントを読んでいても、今回は頼みますよ、内田博さん!!臭がプンプン伝わってくる。かつて、ノムさん(もちろん野球界のノムさん)はスポーツ紙を使って、選手に注文を出していたと言われていたけれど、もしやスガさんも!? と思いたくなるほどの強さを自分は感じてしまう。

これは神戸新聞杯の週にもあった。あのときも須貝師から強いメッセージが紙上に放たれていたと記憶している。(ダービー5着に納得してない臭を漂わせつつの神戸新聞杯への強い期待。天皇賞春5着を受けての今回の発言にも同じ“臭”を感じずにはいられない)

だからワカラナイ。ゴールドシップだってどう出て来るかはわからない。11頭立てだし、開き直って、またもや後方からという可能性もないとは言えない。言えないけれど、今は先行競馬にトライしてくる可能性を想定せずにはいられない。

11頭立てとはいえ枠も大事かもしれない。
3頭がお互いをライバルと見立てているのならば、頭数関係なく枠は大事はなず。
外から視界に入れたいのか、内から最短で先手を奪いたいのか。
逃げるであろうシルポートの枠も気になるかもしれない。

うむ、やっぱりムズカシイ! 本格的に難しい!

こういう場合は心配指数をあげつらえるのも有効か? そう思ったけど、そこもなかなかどうして決めてにかける。

たとえば、フェノーメノ。
この馬のスーパー最大目標が天皇賞(春&秋)であることは、天皇賞秋2着&天皇賞春1着したときの戸田師の悔しさと喜びのコメントにもにじみ出ていた。
逆にいえば、天皇賞秋2着→ジャパンカップ5着からも、ピークを天皇賞春に持ってきていたかもしれない。そもそも天皇賞春の時点ではオルフェーヴルは宝塚記念参戦だったわけで、余計に天皇賞春に全力投球した可能性もある。

たとえば、ゴールドシップ。
出遅れが心配。11頭立てでも出遅れは心配。
上がりが心配。皐月賞から有馬まですべて上がり1位だったのに、4歳になって2戦つづけて上がり1位を取れてないのが心配。デビュー以来11戦つづけて上がり1位か2位で来ていたのに前走の上がりが5位だったことが心配。

たとえば、ジェンティルドンナ。
初の56キロが心配。牡馬と2キロ差が心配。
ジャパンカップでは海外帰りのオルフェーヴルと4キロ差あって、ハナ差勝った(53対57)。しかし、ドバイシーマクラシックではセントニコラスアビーと2.5キロ差(54.5対57)あったけれど、捕らえることは出来なかった。

まあ凱旋門賞では4歳牝馬は58キロを背負い、4歳以上の牡馬とは1.5キロ差で闘わねばならないわけで、ここの56キロも、2キロ差も跳ね返していかないといけない。それはわかる。けれどそれは陣営のモチベーションの問題であって、ジェンティルが完全に克服できるかはまだわからない。時計がかかるようだと、もしくは雨が降るようだとその心配指数は上がっていく。

というわけで、心配事もそれぞれあるけれど、やっぱり決めてにかける。

っていうか、まだ枠もわからないのに、天気もわからないのに、人気もわからないのに抜かせないポテンシャルを秘めた3頭の順番を決めつける事もない。きっと失礼だ。
こういうときは3着に別の馬が食い込むことはないか? そこを吟味したほうがいい。

ゴールドシップ   全成績8-2-0-2
ジェンティルドンナ 全成績7-2-0-1
フェノーメノ    全成績6-2-0-3

3頭ともに1着比率が一番高い素晴らしい成績。
しかも2着はあるけれど、3着はない。
こういう馬たちが激突したら、当然、1着2着はあっても3着はないと考えるのがマイ癖(へき)。
負けるならば2着か4着以下で3着はないと考えるのも、3強のみなさんには甚だ失礼かもしれないけれど、ここはしょうがない。癖(へき)なんだからしょうがない。

というわけで、説得力のある根拠も出さないままに3着候補を探してみる。
3着の占める割合が一番多い、3着大好きホースは……

全成績4-1-8-26 タニノエポレッ………おっと!

水曜日の時点でまだ騎手も決まってない1600万条件の馬じゃないか。
そういう馬に過度の期待を持ちかけることは失礼だ。むしろタニノエポレットに失礼だ。

ダノンバラード 全成績5-2-6-7 阪神成績1-0-1-0
トーセンラー  全成績3-4-4-6 阪神成績0-0-2-0

ディープ産の5歳馬2頭。
3着の占める割合が多くて、阪神でも3着のある2頭。
ダノンバラードは皐月賞3着、トーセンラーは菊花賞3着と、G1での3着経験もある。
一般的にディープインパクト産は阪神内回りは向いてないイメージだけれど(古馬になると勝ててないイメージ)、
内回りながら3強が真ん中よりも前方で緊迫感を高ぶらせそうなレースならば、ディープ産も力を発散できる可能性もある。3着ならばありえる。

ディープ産でG1を勝ったことのある武豊と川田が騎乗するというのもなんだか頼もしい。少頭数での武豊騎手のインサイドワークといい線狙う競馬に徹したときの川田騎手はなんだかやりそうな気もする。

天気次第では他にも3着で狙えそうな馬もいないわけではないけれど、取りあえずは週末は雨は降らなさそうだから、この2頭で止めておこう。

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今年の宝塚記念はスタート。そして1角を回るまでが最大のお楽しみポイントではなかろうか?
ここでどんな隊列が出来上がるか?
もちろん興味はジェンティルドンナ・フェノーメノ・ゴールドシップの3頭の位置取り。
そして4角を回って直線に向いたときにその隊列がどう変化しているか?
着順が入れ替わるとしたら、直線に向いてからではなく、直線に向くまで(3角〜4角)ではないか? 抜かせない馬が抜かせてしまうとしたら、コーナーリングしか考えられないからだ。

宝塚記念注目馬
3強で一番前のポジションを取る馬。
とはいえ、それはスタートしてみないとワカンナイ。
もし枠とか週末のコメントとかでリアルに読めたら、その馬から行くけれど、
ぜんぜん読めなかったら、押し出し・引き出しを採用して、3番人気の馬から買ってみようかと思っている。

3着候補 ダノンバラード・トーセンラー

3強が道中の順番のままに1着2着3着したら、喝采だ! 馬券は買わずとも喝采だ!
3強が1頭でも直線でズルズルと抜かれてしまったら、泣くね。2頭ズルズルと抜かれたら、号泣だね。自分自身の見立ての悪さに号泣だ。ワーン! 泣いとこ。

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■読みやすさ、わかりやすさを追求したらこうなりました!
1.横組
2.オール2色
3.図解入り
4.写真多め
5.見開きで1ネタ
6.大きめサイズのA5判

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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