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私が出会った“巡り合わせ”

  • 2013年07月13日(土) 12時00分
 今週10日、プロ野球・楽天対日本ハム戦の実況を担当したら、大谷選手のプロ初ホームラン(実に見事な一発!)を目の当たりにしてしまいました。今後、長くこの世界で活躍するであろう(してほしい)大物ルーキーの記念すべき第1号。それを実況できた私はラッキーだと思っています。

 こういうのって、たまたまの“巡り合わせ”なんですね。今回の大谷初ホームランは、ひょっとしたら私の人生の中でベスト5に残る”巡り合わせ”になるかもしれません(そうなるかは、大谷選手の活躍次第です)。

 これまでに私がその場に居合わせた印象的な“初○○”は、1.松坂大輔投手のプロ初登板(テレビ中継の実況を担当しました)、2.武豊騎手の初勝利(阪神競馬場でそのレースをナマ観戦。ついでに言えば、武騎手の馬の単勝を買っていたので、馬券も当たっちゃいました)、3.桑田、清原を擁したPL学園が甲子園に初お目見えした試合(1983年夏、対所沢商業戦。スタンドで観戦していて、ヤケにデカイ選手がいるチームだなぁ、と思いました)、あたりでしょうか。松坂のデビュー戦はたまたまその日の実況担当だったから出会えたもの。あとの2つは、それを見たくて行ったわけでもないのに、たまたま見られたもの。要するに“巡り合わせ”なのです。

 アナウンサーの中には、歴史に残る試合や場面に出会ってしまう“引きの強さ”を持った人たちがいます。その典型的な例が、夏の甲子園で箕島高校と星陵高校が延長18回の死闘を繰り広げた試合(1976年8月16日、第61回大会3回戦)。朝日放送の実況はテレビが植草貞夫さん、ラジオが因田宏紀さんでした。お2人とも、当時の同局を代表する名アナウンサー。これが決勝戦の担当だったら「さもありなん」ですが、それよりかなり手前の3回戦がそういうシフトだったわけで、お2人の“引きの強さ”を感じてしまいます。

 そうそう、高校野球と言えば、春夏通じて初めての完全試合(1978年第50回選抜大会1回戦で、前橋高校の松本稔投手が達成)を実況したのも、毎日放送の“看板アナ”三宅定雄さんでした(NHKテレビは島村俊治さんだったはず。島村さんも、いまだご健在の名アナウンサーです)。その試合でそういうことが起きるなんて誰も思っていなかったのに、しかるべき人がそれを喋っていた…。なんという“巡り合わせ”でしょう。

 それはさておき、競馬のG1レースは、歴史的名勝負になることほぼ間違いなし。それを目の当たりにするのは、たまたまの“巡り合わせ”とはちょっと違います。でも例えば、ハイセイコーやオグリキャップのような馬のデビュー戦や初勝利のレースをナマで見た、というのは、一生忘れられない幸運な“巡り合わせ”になると思うのです。そういうレースに出会う確率を高めるには、足繁く競馬場に通うしかありません。だからみなさん、競馬場に行きましょうね!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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