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荒尾市が旧競馬場跡地を“ホークスタウン”候補地に名乗り

  • 2013年08月10日(土) 12時00分
 今回は、まず前回コラムの訂正から。「山形・上山競馬場の跡地は、旧スタンドなどの解体を条件に、(同地に工場を建設した)製薬会社に無償で譲渡」と書きましたが、これは言葉足らずでした。

 正しくは「馬場の部分を3つの区画に分け、その中央を製薬会社に売却(ここに工場が建てられました)、両脇を賃貸とする。そして、スタンドの部分はその解体を条件に同社に譲渡する」というもの。売却+賃貸+譲渡の“三層構造”になっていました。上山市と製薬会社の双方のメリットを追求したところ、こういう形に行き着いたのでしょう。その上で、きゅう舎跡地に場外発売施設・ニュートラックかみのやまを新築したのですから、うまい具合にまとめたものだと思います。

 さて、先週そんなことを書いたら、今度は次のような話が出てきました。プロ野球の福岡ソフトバンクホークスが公募しているファームの本拠地球場や練習施設、寮などのいわゆる“ホークスタウン”の新設用地について、熊本県・荒尾市が旧競馬場跡地を候補地として誘致に名乗りを上げた、というのです。

 今月7日付けの西日本新聞の記事には、こう書いてありました。

「荒尾競馬場の跡地活用について、市は『にぎわい創出』、『定住促進』などをキーワードに基本方針を策定しており、誘致が実現すれば、キーワード通りの地域発展と大きな経済効果が期待できるとみている」。

 言い換えれば「基本方針は決めたものの、具体案を見出せずにいた荒尾市にとっては、降って沸いたような跡地処理のチャンス到来」です。

 ただし、“新ホークスタウン”に関しては、荒尾と市(県)境を接する福岡県大牟田市がすでに誘致を表明。ほかにも興味を示している自治体があるそうで、荒尾に決まるかどうかは予断を許しません。

 単純に考えれば、荒尾より福岡に近い大牟田のほうが有利でしょう。寮生活している選手がヤフオクドームの試合に往復するとなると、少しでも近いほうがいいはず。ドームから車で移動する際の所要時間を検索すると、大牟田が約1時間15分、荒尾は約1時間25分と表示されました。わずか10分の差とはいうものの、荒尾はこの差を埋める好条件をホークス側に提示しなければならないでしょう。もちろん、大牟田よりさらに福岡に近いところが名乗りを上げたら、誘致合戦はもっと厳しくなると思います。

 荒尾が誘致に成功するためのヒント、それは上山にあるかもしれません。キーワードは、売却+賃貸+譲渡の“三層構造”。すべてをホークス側に委ねてしまうのではなく、施設の一部は市が作って賃貸するなど、市とホークスの双方が知恵と資金を出し合うというやり方です。ともあれ、上山では競馬廃止から10年でやっとメドが立った跡地処理。荒尾がそれをわずか数年で果たしてしまうかどうかは、「ホークス次第」となりました。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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