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速くても、軟らかい馬場って何だ!

  • 2013年09月05日(木) 12時00分
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はじめに 今年の芝は例年以上に素晴らしく、馬場は例年以上に軟らかい?
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 1年で一番“絶好”の馬場で始まる秋の中山と阪神。おそらくあちこちで「野芝」「エクイターフ」といった言葉が花を咲かせていることでしょう。

 そして、最終的には「行った行った」「前が止まらない」「内枠だけでいい」的な結論になるのかもしれません。

 しかし競馬王9月号のコースの鬼!(筆者・城崎哲)によると、今年はちょっと違う傾向になる可能性もあるのだとか。(コースの鬼!は7月号で「この夏の北海道競馬は函館連続開催でも馬場は持つ可能性大。外差しを待つのはやめよう」と記していたけど、その通りだった)

 もうね、エクイターフ、野芝、イタリアンライグラスといったことばを都合よく拝借して、カワイコちゃんをだまくらかそうと企んでる「馬場系知ってるつもり派」の自分としては、「今年はちょっと違う」と言われると、聞き捨てならない! とばかりについつい食い付いてしまいます。

 なんでも今年は去年以上にバーチドレンとトレマーという機械を駆使して、芝の硬度を軟らかくしようとしているのだとか。

 芝はビッシリで最高の状態。だけど馬場はパンパンではなく軟らかい。

 どうやら馬場造園課のみなさんは「馬場が硬い」と言われたくないようで、馬場整備を夏の間に懸命に施してきたそうだ。

「時計は速くても、馬場はけっして硬くない」。

 目指しているのはそこ(らしい)。

 ちなみに今では「20年前まで120Gだった芝の硬度を90G以下に抑えて管理できるようになった」のだとか。

 その馬場を軟らかくする作業を例年以上に念入りにしているとなると………

 おっと!どうなるんだ!? 今年の中山・阪神はどんな競馬、どんな時計、どんな展開になるんだ?

 ※バーチドレンとは芝に穴を空けてほじくるようにして土を軟らかくするマシーンで、トレマーとはここ2、3年で各場に導入された新兵器で、青竜刀みたいな刃を回転させて芝の根に切れ目を入れていくマシーンだとか。競馬王9月号のコースの鬼!より

 実際、どんな馬場になるのかはレースが行われてみないとわからない。つまり今週の土曜日の馬場は超注目と言えるかもしれない。

 しかも今週土曜日の競馬王×netkeiba.comコラボの馬券サバイバーにコースの鬼!城崎哲さんが登場し、土曜日の馬場を見て、この秋の開幕馬場の解説をし、予想もしてくれるのだとか。おっとー!こりゃ楽チンだ!

 おそらく、それでも絶好の馬場で開幕するのだから例年どおりのイメージ「ペースが速くなっても逃げ先行馬が持ってしまう」「差しが決まったとしても内差し」が変わることはないのかもしれない。しかし、今年の新潟は例年と馬場の傾向が違ったとも言われている。実際、去年より今年の方が開幕初週に差しが決まっていた。去年は4角先頭〜5番手くらいまでから勝ち馬が出やすかったのに対して、今年は初週から4角10番手からの差しが3つも決まっていた。
おまけに最終週には1600万条件の芝1600で1:31.7というレコードにコンマ2秒という時計も飛び出した。

 聞くところによると、新潟も熱心に馬場を軟らかくする作業をしていたのだとか。それが馬場傾向変化の直接的原因かはまだ決めつけられないが、そういう可能性をも頭に入れて、今週の競馬に望んでみてもソンはないはず。

 少なくとも今週の中山・阪神の土曜日の前半レースくらいは馬場読みの時間にあててもいいのではないか?

 この秋は、野芝・エクイターフだけでなく、バーチドレン・トレマーといったマシーン用語を使って、馬場読みを語ってみる……うむ、悪くない。
(かっこいい使用方法は競馬王9月号のコースの鬼!にて)

 といったことを頭に入れつつの京成杯AH&セントウルS。

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京成杯AHの逃げ馬
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 過去10年を見て、気づくのは脚質についてだ。

 03年〜06年の4年間は毎年逃げた馬が馬券に絡んでいた(逃げ成績2-2-0-0)。しかし07年〜去年までの6年間では逃げた馬の馬券圏内は0。ピタっと止まった。

「絶好の馬場コンディション、前が止まらない」を直接体感するのは騎手なわけで、今は騎手心理が前へ前へと向かい結果的にペースアップしてしまい、逃げた馬が最後に止まってしまう傾向になりがちなのかもしれない。

 だとすると今年も狙いは逃げる馬ではなく、2番手〜6番手くらいにつけられそうな馬がいいのかもしれない。しかし今年に限っては、そうそう割り切れない。直近データをもとにすると、逃げるであろう馬が1頭しかいないからだ。しかも鞍上は横山和。横山典の息子だ。

ルナ 横山和 杉浦厩舎 55

レオアクティブ 横山典 杉浦厩舎 57

 杉浦厩舎の2頭出しで、親子出し。

 格言的には2頭出しは人気薄と言うけれど、予想ではルナは4人気で、レオは2番人気で、とても人気薄とは言えない。

 しかもこの2頭は脚質が「逃げ」と「差し」にパキっと分かれている。

 こういう場合は、厩舎作戦を考えるのも少し悩ましい。前で引っ張って、差しを活かす作戦もあれば、後ろで牽制して、前が逃げきる作戦もあるからだ。しかも人気もそれなりにあって、何が囮なのかもよくわからない。うむ、実に悩ましい。

 とはいえ、いくら逃げた馬が残りにくいここ数年とはいえ、4人気前後に支持されそうな馬が単騎で逃げられる展開になったら、それなりの成績を残してもおかしくはない。

 また、横山和騎手は重賞2回目の騎乗で、まだ減量騎手。そのような騎手に厩舎から厩舎作戦的指示が出されるとも思いにくい。

「思い切って乗れ!」「この馬のペースで騎乗すればいい!」「バーンとスタートして、ビューンと追え!」

 指示があるとしてもこんなところじゃないか。人気薄ならば厩舎作戦も練るのかもしれないけれど、4人気前後に支持される馬での作戦は減量騎手にはしにくいはず。

 だからやっぱり悩ましい。今年は久しぶりに逃げた馬が頑張っちゃう気もするし、今年もやっぱり絶好すぎる馬場ゆえに逃げた馬が持たない展開になるかもしれない。さあどうしよう。

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京成杯AHの内枠力
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 京成杯AHの内枠はフルゲートほど力を発揮する。

 以下はこの10年の成績だけど、フルゲートのときの方が内枠(1番〜4番)の馬が頑張っているのがわかる。

16頭立て
03年
1着 7枠14番
2着 5枠10番
3着 2枠4番

07年
1着 1枠2番
2着 2枠3番
3着 3枠5番

08年
1着 8枠16番
2着 2枠3番
3着 2枠4番

09年
1着 2枠3番
2着 4枠7番
3着 7枠14番

12年
1着 2枠3番
2着 1枠1番
3着 6枠11番

フルゲート割れ15頭以下
04年9頭
1着 7枠7番
2着 1枠1番
3着 2枠2番

05年13頭
1着 2枠2番
2着 4枠5番
3着 7枠10番

06年15頭
1着 4枠8番
2着 3枠6番
3着 7枠14番

10年14頭
1着 5枠7番
2着 6枠9番
3着 3枠3番

11年14頭
1着 5枠8番
2着 8枠14番
3着 5枠7番

 16頭立てのときに1〜4番(つまり1枠2枠)の馬が圏内に占める割合は、15頭中8頭で.533。

 一方15頭立て以下のときに1〜4番の馬券圏内率は、15頭中4頭で.266。

 あきらかに内枠力はフルゲートで増している。

 今年は現状ではフルゲートのようだから内枠を重視すべきだけれど、もし1頭でも欠ければ、内だけでなく満遍なく吟味する必要も生じそう。その場合の目安としては14番まで。

 外枠は不利と言われていて、実際不利だけど、それは15番、16番の馬についてで、14番はけっこう頑張れている。14番とはフルゲートならば7枠だけど、14頭立てならば8枠に該当する。

 フルゲートに満たなかったら、当然14番まで吟味だけれど、仮にフルゲートになったとして、内枠の馬が絞れないと感じたら、14番までの外枠(6枠・7枠)からひねり出すのも悪くない。そこから内枠の馬へ全部流せばいいからだ。

 ちなみにルナ(横山和)は内枠よりも7番〜14番までの中枠〜外枠に入った方がいいと思っている。

 内から逃げるよりも、内を見ながら逃げを打つほうが無理なく先頭に立てるように思えるからだ。

 実際、過去10年で逃げて圏内に入った4頭は5枠、7枠、4枠、4枠だった。さあどうしよう。

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穴をあけるのは3歳53、54キロか7歳。
穴じゃなくても3歳は53、54キロ。
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 今年は7歳がいないから、3歳に絞っていい。3歳で53、54キロの馬は以下の2頭。

ゴットフリート 53
モグモグパクパク 53

 ゴットフリートは予想5番人気で、モグモグパクパクは予想13番人気。穴はモグモグパクパクでいい! 間違いない! と簡単に言いたいところだけど、なんか引っかかる。っていうか予想5番人気で穴とは言えないけれどゴットフリートが気になってしょうがない。

 ゴットフリートは全6戦中ちゃんとスタートしたのは3回で、他3回は出遅れ立ち遅れている。

 ちゃんとスタートして2-1-0-0、出遅れて0-0-1-2。つまり、ちゃんとスタートした時にはまだ底を見せていないとも言えるわけだ。

 朝日杯FS3着、共同通信杯2着はモグモグパクパクの実績より上だ。それでいて同じ53キロ。これで1、2人気になるなら敬遠したいところだけれど、5番人気ならば買いたくなる。

 3歳は53、54キロで穴をあけるときが多いけれど、53、54で人気に応えるときもある。

 ならばデビュー戦で騎乗して、ちゃんとスタートを決めて1着させた田辺騎手に期待してみたくもなる。

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セントウルSの外枠力
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 阪神競馬場が改修されて以後、セントウルSでは穴が飛び出すようになった。中でも穴をあける馬は8枠に多い。

08年 11人気2着 8枠16番シンボリグラン
09年 11人気3着 8枠15番コスモベル
12年 12人気3着 8枠16番アンシェルブルー

 穴じゃないけれど、

09年 5人気1着 8枠16番アルティマトゥーレ
11年 1人気3着 8枠14番ダッシャーゴーゴー

 (中山ほどではないにせよ)絶好の開幕馬場なのに8枠が頑張っている。しかも内と外の有利不利がもろに出そうなフルゲートの芝1200で。

 ふつうに考えたら、開幕の短距離の内枠は不利にはならない。実際内枠の馬も走っている。去年1着したエピセアロームは2枠4番だった。しかし同時に3着は8枠の12人気だった。

 以下は去年の阪神開幕の芝・角2系レースの枠の馬券圏内回数(芝12・14・16・18)。これを見ると阪神は満遍ないことがわかる。

2012年開幕週阪神 角2系芝レースで3着以内に入った枠の回数
1枠3回
2枠4回
3枠5回
4枠4回
5枠2回
6枠5回
7枠6回
8枠4回

 うむ、満遍ない。

一応2011年も。
1枠4回
2枠2回
3枠0回
4枠2回
5枠5回
6枠2回
7枠5回
8枠7回

 3枠は0回だったけど、基本的には満遍ない。

 だけど去年は7枠、一昨年は8枠の圏内回数がちょっとだけ他の枠より多かった。

 ちょっとだけでも多いのはやっぱり気になる。セントウルの場合はそれが人気薄でやって来るわけだから、そりゃ無視できない。

 一応、穴をあけた上記3頭はみな8月に走っており、そこそこの成績をおさめていた。そこそこゆえに人気が落ちたわけだ。

 今年、8月に走って、そこそこだった馬は、

サワノパンサー 前走小倉日経5着
マイネルエテルネル 前走北九州7着
モグモグパクパク 前走朱鷺S3着
ローガンサファイア 前走北九州4着
ビウイッチアス 前走UHB3着
(重賞は5着〜7着、オープンは3着〜5着という見立て)

 ビウイッチアスは除外濃厚で、サワノパンサーは好走歴のない前走1800で、この2頭を省くと、
そこそこホースとして期待できそうなのは、以下の3頭になる。

マイネルエテルネル 前走北九州7着
モグモグパクパク 前走朱鷺S3着
ローガンサファイア 前走北九州4着

マイネルエテルネル 予想8人気
モグモグパクパク 予想9人気
ローガンサファイア 予想5人気

 ローガンサファイアは穴とは言えないけれど、一応残しておこう。この3頭のどれかが8枠に入ったら、積極的に狙ってみたい。3着込みで絡めてみたい。

 にしても、こちらでもモグモグがいる。いったいモグモグはどっちに出走するのだろう。

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セントウルの逃げ馬
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 セントウルSもまた逃げた馬が残りにくいレースだ。この10年で2着1回、3着1回のみ。

 阪神競馬場が改修されて以後は3着1回のみで、より苦しくなっているようにも見える。だから、無条件で逃げそうな馬は消していいのかもしれない。

 けれど、こちらも京成杯AH同様に今年は逃げそうな馬を消しにくい。逃げそうな馬がハクサンムーンしか見当たらないからだ。

 ハクサンムーンは阪神芝成績3-0-0-0で、阪神芝12成績2-0-0-0と得意にもしている。

 今年はロードカナロアという馬券圏内では鉄板であろう馬がいる。そのカナロアを本気で負かそうと考えるならば、ふつうなら、中山スプリンターズSよりもカナロアが休み明けのセントウルSで、カナロアよりも前での競馬を試みるはず。

 だとすると、逃げるハクサンムーンにはうってつけだ。

 3か月以上の休み明けの1番人気が負けるときに勝つ馬は、すべて7月か8月に使われていた馬である。

 このことを考慮すると、今年は該当馬そのものが少なく、さらにロードカナロアよりも前で競馬をするとなると、ハクサンムーンかモグモグパクパクくらいしかいないことに気づく。あ〜またしてもモグモグが賑やかしている。

 あとはスプリンターズSを諦めて、ここで大勝負を仕掛けてきそうな馬の脚質転換的(差し→先行)な走りがハマるかだけど、そこは現段階では読みにくい。あるとすればシュプリームギフト、サドンストーム、ローガンサファイアといった8月に走った差し系の馬か。一世一代の走りは牡馬より牝馬の方がいい。だとするとシュプリームギフトとローガンサファイアということになる……。

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セントウルの注目馬
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今年は買わざるをえない? ハクサンムーン
8枠で期待したい? マイネルエテルネル・ローガンサファイア
あるか一世一代!? シュプリームギフト・ローガンサファイア
なんなんだチミは!? モグモグパクパク

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京成杯AHの注目馬
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ちゃんとスタートして! ゴットフリート
7番〜14番までに入ったら、ちょっと考えよう! ルナ
フルゲートならリスペクト! 1枠2枠の馬
なんなんだチミは!? モグモグパクパク

 いずれにせよ、今年は土曜日の競馬を見て、馬場読み、脚質読み、枠読みなどをするのがベターな気がする。実際、速いけれど、パンパンじゃない軟らかい馬場とはどのような馬場なのか、もしくはそのような馬場に仕上がっているのか、興味がある。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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