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ベルシャザールはどこまですげえのか?

  • 2013年11月28日(木) 12時00分


「なんだ、この馬。すげえな。」

ブラジルCで1人気で1着したベルシャザールに騎乗した柴田の善さんのレース後コメント。

趣味・レース後コメント拾いの自分だけど、このコメントには激しく揺さぶられた。
近年まれに見る「本能型コメント」に思えたからだ。

やっぱりコメントはテンションの上がりやすいレース後にかぎるし、内容も本能型にかぎる。臨場感がビンビンに伝わってくる。
自分はこのコメントをnetkeiba.comで読んだから(発信元はデイリースポーツ)、このコメントを目にした方もいっぱいいるだろうし、自分と同じようにグラグラと揺さぶられた方もいるのではないか? 実際、鴨川と神田川を地下で結ぶ秘密の寄合所でも刺さった人は多かった。

「なんだ、この馬。すげえな。かなりいいよ。最後に抜け出してからも余裕があったね。楽な競馬だった」

はたしてこのすげえはどこまで「つづく」すげえだったのか?
もちろん欲しい答えはG1レベルに決まっている。

つづく武蔵野Sをルメールで1人気1着。とりあえずG3は難なく突破した。

ちなみに、その武蔵野Sには前走・善さん騎乗馬が4頭も出走していた。しかも前走で1着だった馬が3頭、2走前に1着だった馬が1頭で、善さんが武蔵野S出走へと導いたといっても過言ではなかった。

その4頭はベルシャザール(ルメール)、ゴールスキー(浜中)、グラッツィア(田辺)、カネトシイナーシャ(北村宏)(善さんは当日エリ女のレインボーダリアに騎乗。前日落馬で騎乗できない不運に見舞われたけれど…)。

1人気 ベルシャザール
2人気 ゴールスキー
9人気 グラッツィア
13人気 カネトシイナーシャ

1、2人気と伏兵。前走・善さんホースの闘いといってもいい評価だった。
この序列が的を射たものであることは、前走の善さんのレース後コメントからも感じられた。

1人気ベルシャザール
ブラジルC1着時コメント
「なんだ、この馬。すげえな。かなりいいよ。最後に抜け出してからも余裕があったね。楽な競馬だった」

2人気ゴールスキー 
ペルセウスS1着時コメント(コメはラジオNIKKEIより。以下同じ)
「前回乗った時は、前が詰まって何も出来ませんでしたが、コース適性はあると分かっていました。距離はマイルから1800mくらいがいいと思います。さすがいい馬です」

9人気 グラッツィア
ラジオ日本賞 1着時コメント
「以前に乗ったときと比べて、『あれっ?』と思うぐらい馬が変わっていました。道中も楽でした」

シリウスS 7着時コメント
「以前よりも走りがよくなってきています。ただ、馬場は少し湿ってグリップのきいた馬場のほうがいいかもしれません」

13人気 カネトシイナーシャ 
テレビ静岡賞 1着時コメント
「1200mだと忙しいけど、1400mだとうまくついて行けます。直線で前が開いてからはいい伸びでした」

上記のコメントを煮込みに煮込むと以下のような感じか?

すげえな>さすが>あれっ?>1400?
で、
1人気>2人気>9人気>13人気だからほぼ善さんの印象どおりだ。

結果はご承知のとおり、
1着ベルシャザール
4着ゴールスキー
8着カネトシイナーシャ
16着グラッツィア

ベルシャザールがほぼ完勝した。これでブラジルC1人気1着、武蔵野S1人気1着と連続して1人気で1着したことになる。しかも先行して。つまり連勝に重みも加わっているとも言える。

ルメール騎手のコメント
「いいスタートを切り、道中も前の馬について競馬をしました。コーナーを回ってズブいところを見せましたが、直線でゴーサインを出すと素晴らしい反応を見せてくれましたし、うまく前も開いて、いい脚を使ってくれました。芝で一度乗りましたが、ダートも合っていますし、力のあるパワフルな馬で今後ダートの大きなレースでも通用すると思います」

「ダートの大きなレースでも通用すると思います」をカジュアルに翻訳すると、
「なんだ、この馬。すげえな。」になる。うむ、なってしまう!
つまり善さんとまったく同じリアクションだ!やったーーー!

今でこそ喜んでいるけれど、コメント直後はまだコメントの真意は計れていなかった。もしかしたら西欧人特有のリップサービスかもしれないとも思っていたからだ。
レース直後のコメントには、幾ばくかの真実が潜んでいると思っている。けれどベシャリに慣れっこの外国人の場合は騎手に限らずリップが盛られているとも思っているからだ。
しかしジャパンカップダートにルメール騎乗で、にわかにコメントにリアリティを感じるようになってきた。

理由は、まさにルメールの騎乗にある。
武蔵野S前にルメールはJCDでグレープブランデーに騎乗と一部スポーツ紙に出た。
武蔵野Sが終わって、すぐにベルシャザールはJCDには出走せずにフェブラリーSを目指すと発表された。
しかしその後、一転してJCD出走が発表され、ベルシャザールにルメール、グレープブランデーにMデムーロとなった。

武蔵野Sを挟んで、動きがあった。そう思わずにはいられない。
で、ルメールはベルシャザール騎乗を選択した…のならば、
ベルシャザールのすげえ度をルメールもG1級と評価したことになる。

ルメールの評価にこだわるのはそれだけではない。ルメールはJCDを勝ち負けできる判断基準を自前で持っているとも思えるからだ。

以下はルメールのJCD(阪神開催)での成績。
08年 カネヒキリ 4人気1着
09年 ゴールデンチケット 12人気3着
10年 アリゼオ 5人気16着 初ダート
11年 フリソ 13人気13着
12年 グレープブランデー 11人気5着
(06年 ヴァーミリアン 9人気4着 東京開催)

人気の1着あり、穴の3着あり。惜敗あり、惨敗あり。
ただ1つ言えるのは、G1が初ダートだったアリゼオを除けば、取りあえず騎乗馬をすべて人気以上に持ってきて、フリソ以外は人気よりジャンプアップさせていること。 4人気1着、12人気3着、11人気5着!(9人気4着!)
JCDで好走できる馬の特徴を勝ったり負けたりしながら掴み、足りない馬でも人気以上に走らせるコツを掴んでいるのではと思わせる騎乗ぶりだ。

JCDでソツのない騎乗をするルメール。
しかも今まではすべて乗り替わりでの騎乗だった。
連続騎乗は今回のベルシャザールが初。
うむ、すげえを期待せずにはいられない。

で、もう1回コメントを振り返ってみる。
「いいスタートを切り、道中も前の馬について競馬をしました。コーナーを回ってズブいところを見せましたが、直線でゴーサインを出すと素晴らしい反応を見せてくれましたし、うまく前も開いて、いい脚を使ってくれました。芝で一度乗りましたが、ダートも合っていますし、力のあるパワフルな馬で今後ダートの大きなレースでも通用すると思います」

「コーナーを回ってズブいところを見せました」。

気になるとしたらここか。ただしそれをわかっているのとわかっていないのではぜんぜん違う。それをわかった上で、去年JCDで自ら騎乗し5着して、フェブラリーSを勝った(浜中騎乗)グレープブランデーではなく、ベルシャザールに騎乗してきたのだから心配はないはず。

というわけで、今年のJCDは、
「なんだ、この馬。すげえな。」
の答え合わせのJCDとしてみる。
もちろん、こちとら、その意味を馬券で体感してみたい。

戦法としては、5年前自ら1着へと導いたカネヒキリの5-4-3-5の位置取りが理想か。
今年のメンバーは先行タイプが多いけれど、前で流れに乗れないと1着できないのもJCD。
その点、ベルシャザールは前で流れに乗れそうで、とりあえずカネヒキリな競馬はできそう。
そこからカネヒキリ同様に突き抜けることができるか?
すげえ馬ならできる。

JCD
答え合わせ注目馬
ベルシャザール

ふつうに注目馬
ブライトライン…前走でも行きたがっていたらしい。G1のペースでむしろ能力が引き出されるか?
ローマンレジェンド…藤原英のおかわり。去年と今年じゃ臨戦に雲泥の差。岩田の渾身。
大敬意…ホッコータルマエ
ヒモ敬意…3歳馬。例年より1キロ軽い55キロならヒモでおさえたい。

お楽しみ
パンツオンファイア
ホッコータルマエ、エスポワールシチーは逃げられるけれど、ここでは逃げたくないのではないか? できれば番手が理想か。今年は逃げたい馬はいないけれど、先行したい馬はいっぱいいる。だけど、みんな手の内は読めているから、案外スムーズに隊列は決まりそう。
なんかあるとしたら、そのカギはアメリカの先行馬が握っていそう。砂は湿っていた方が向いてそうだけど、良でも火を吹かしてほしい。どこで仕掛けるか? スタートから動くか? つーかそもそも日本の砂で3角まで持つか? そういう心配はあるけど、アメリカ競馬の神髄、先行合戦、脱落競馬の神髄をちょっとは魅せてほしい。

ナイスミーチュー
今週の太論にて「大一番」発言があった。善さんの「すげえな」、小牧騎手の「大一番」。今年のJCDはお楽しみだらけだ。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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