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もしクリスマスが勝ったら、デムーロは口取り写真でサンタ帽をかぶるよね。

  • 2013年12月05日(木) 12時00分


今年の人気馬たちの煌びやかな戦歴を自分がここで改めて書く必要はない。
牝馬ながらも圧倒的パワーで牡馬をなぎ倒してきた面々。
これだけで十分だ。
ただ話の都合上、一応おさらいさせていただく。

予想1人気のハープスターは、474キロで新潟2歳を最後方4角18番手から大外を回って、ぶっこ抜いた。
予想2人気のホウライアキコは、444キロで小倉2歳、デイリー杯を圧倒的先行力ですっ飛ばした。3戦3勝で2回レコードだなんて、すっ飛ばすにもほどがある。
予想3人気のレーヴデトワールは、456キロで白菊賞を最後方→4角13番手から、これまた豪快な上がりで大外から突き抜けた。
予想4人気のマーブルカテドラルは、新潟2歳ではハープスターになぎ倒されたけれど、牡牝混合の芙蓉Sを436キロで、新設重賞のアルテミスSを438キロで、連続して中団から差し切った。
予想5人気のレッドリヴェールは不良馬場でとんでもなかった札幌2歳を426キロでマクって、牡馬たちをぶっ飛ばした。

まだ行ける。
予想6人気のクリスマスはアルテミスSでは負けたけど、426キロの函館2歳では圧倒的先行力で駆け抜けた。
予想7人気のマジックタイムは、朝日FSへの裏口入学とも言われるきんもくせい特別を458キロで、まだ減量騎手の杉原騎手で、1人気で最後方→大外から差し切った。

今年は牝馬のレベルが高すぎるのか、牡馬のレベルが低いだけなのか?
っていうか、近頃はもはや牡馬も牝馬も関係ない気もする。
そもそも競馬は種牡馬のことを考えなければ、タマなしのニュートラルな馬が安定して強いという見方もできるし。

それはさておき、上記した馬7頭は前走474キロのハープスターを除けば、みな460キロ未満で、決して馬格的に牡馬を圧倒していた馬ではない。
柔能く剛を制すとでもいいましょうか?

柔道系でよく使われる「身体の小さいものでも、体格やパワーで勝る相手に勝つことができる」というあれ。
(ここに行き着きたくて旋回してました)
自分は柔道については特別詳しくはないけれど、オリンピックでは柔道を必ず見るし、田村で金、谷でも金も目撃した。ドカベンの最初の数巻は柔道漫画だったことも知っている世代だ。
「柔能く剛を制す」は自分よりも体格のいい相手に、力ではなく技で倒すときに用いられがちなこともだいたいわかっているつもりだ。

それを馬に当てはめていいかはわからないが、話の都合上、当てはめていい方向で進めてみる。
上記した牝馬たちはどんな技で持って、牡馬(一部牝馬戦のみの馬もいる)をなぎ倒してきたのか?

大外刈り…ハープスター・レーヴデトワール・マジックタイム
大内刈り…ホウライアキコ・クリスマス・レッドリヴェール
中中刈り…マーブルカテドラル

だいたいこんな分類か。
大外刈りVS大内刈りVS中中刈り!(中中刈りという技はない。後述)
はたして、本番ではどの馬のどの技が決まるのかな?
その見極めさえつけば、一本だ!

――――――――――――――
大外刈り
――――――――――――――
わかりやすいのは大外から差し切った大外刈りの3頭。
自分はときに牝馬は揉まれるよりも『逃げ』や『大外』にこだわった方が牡馬と闘えるとも思っている。
ちょっと前にドバイでペリエ騎手がレッドディザイア、ブエナビスタで用いた戦法(追い込み)は、国際的肉弾戦に慣れていない日本の牝馬を活かすために、ペリエ騎手があえて取った戦法で、けっこう理にかなっていたのではないかと妄察している(別名・ペリーエ・アプローチ)。

今回、上記3頭がどんな戦法を用いるかはわからない。
けれど、レーヴデトワールは前々走では伸びなかったのに、前走、後方から進んで、外から直線勝負に徹したら味があることがわかった。今回、馬ごみに入れる戦法をあえてするだろうか?
いや、しないとは言えない。福永騎手だしチャレンジがないとは言えない。けれど今年の阪神JFは松田博厩舎にとっては、例年以上に特別なJFにも思える。そこを慮ると大外刈り以外の技は禁止にしようと提案したくなる。

今年の松田博厩舎の阪神JFはダービー挑戦トライアルではないか?
そう思う人も多いのではないか。もちろん自分もその口。松田博厩舎番の方からは大げさに考え過ぎと叱られるかもしれないけれど、ダービートライアルと思い込みたい。なぜならその方が観戦の夢が広がるからだ。
ハープスター・レーヴデトワール、取りあえず2頭がエントリー。ダービーを賭けたエントリー。
そんな裏テーマが潜んでいるような、いないような!!
だからこそ、大外にこだわる競馬を2頭ともにしてくるような気がする。いやして欲しい。

今回のメンバーで大外刈りで一本取った方が、来年のダービーの舞台に立てる権利習得!!
勝った方がダービー、2着した方がオークス!!
そんな使い分け。
いや、ワンツーならば2頭ともにダービー!!なんてこともありえる!!
現実的には、一厩舎が牝馬2頭でダービーはけしからんことかもしれない。
けれど、定年を間近に控えた厩舎で、その師の夢がダービーならば、けしからんこともけしからん夢へと昇華するはず。

だからハープスターもレーヴデトワールも最後方からの大外刈りを掛け合うと見た!
競馬業界でよく使われる「ここで◯◯ならば、××なんて言ってられない」風にのたまうならば、
ここで大外からぶっこ抜けないようではダービーなんて言ってられない!!

うむ、ふつうに状況を考慮すればありだ。今回に限っていえば、松田博厩舎のダービートライアルはアリアリだ。

そこにデビュー以来3戦連続で出遅れているマジックタイムがナチュラルに加わっての、大外刈り合戦!!
これはスリリングだ。
マジックタイムの鞍上は今回、後藤騎手。正直、後藤騎手に豪快な追い込みのイメージはない。皆無だ。どちらかといえば、いい位置につけて抜け出す競馬のイメージが強い。もしかしたら好スタートを期待しての後藤騎乗かもしれない。それでももし出遅れてしまったら、それはそれで腹をくくれる騎手でもあるはず。だからこの合戦は成立する。三つ巴だ。三つ巴投げだ!うひょ!巴投げも出ちゃった!

前記したけれど、きんもくせい特別は新潟に移ってからは、牡馬が朝日FSに出走するための裏ルートでもあった。しかも2年前のアルフレード(朝日FS1着)、去年のゴットフリート(朝日FS3着)ときんもくせい特別勝ち馬は、朝日FSでもただならぬ成績を残した。
この2頭に共通することはノーザンF生産の馬であること。マジックタイムも同じくノーザンF生産のサンデーRホース。戦略的にきんもくせい特別に出走した可能性もある。
ちなみにハープスターはノーザンF生産のキャロット・ホース、レーヴデトワールはノーザンF生産のサンデーRホース。同門の三つ巴投げだ!

――――――――――――――
大内刈り
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大内刈りの面々は、逃げ・番手抜け出しで必然的に最内を通るホウライアキコとクリスマスに、札幌2歳で内からマクって、馬ごみでも競馬ができることを牡馬相手に証明したレッドリヴェール。

阪神競馬場が改修されてから、中〜外から豪快に差し切る馬が勝ち上がってきたけれど、去年は内をピッタリ回って、直線で内からちょっと中へ出したローブディサージュが1着した。2着は番手のクロフネサプライズで、3着は中から最内へ切り込んだレッドセシリアだった。外から伸びたコレクターアイテムは4着までだった。

コレクターアイテムのその後の成績を見ると、また器用に立ち回った1着、2着馬のその後の成績を見ると、外から差し切れないと春のクラシックの視界は開けないのかもしれない。

とはいえ、それはそれ、これはこれ。今年も最短距離を通ることが不利に働くとは言えない。馬場は今年も去年にも増していいからだ。たしかに阪神JFでは逃げた馬は馬券圏内には残れていない。しかし、ホウライアキコとクリスマスは番手競馬もできる馬で、去年のクロフネサプライズくらいの競馬ができるならば十分勝負になるはずだ。

そしてもう1頭の大内刈り候補がレッドリヴェール。馬群をこじあけるように最内から大内刈りを狙って来るのではないか?
そのための岩田(香港遠征)→戸崎か? だとしたらわかりやすい。地方出身騎手には内狙いの指示を出しやすいと思うからだ。レッドリヴェールの特徴を最大限に引き出すための戸崎騎乗。だとしたら久々でもこの馬をスルーできない。

前方の内でホウライとクリスマス、中団〜後方の内からレッドリヴェール。大内刈りの面々も侮れない。

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大外刈り→←大内刈り…………←中中刈り
――――――――――――――

毎年書くけれど、阪神競馬場が改修されてから、一昨年まで阪神JFの1着厩舎は角居・角居・松田博・国枝・松田博・松田博だった(阪神JF御三家)。
しかし去年は須貝厩舎が1着・4着を決めた。もしかしたら、新御三家として須貝厩舎が台頭するかもしれないと感じさせたものだった。その須貝厩舎から今年も有力馬が出走し、老舗からは松田博厩舎が2頭出走する。

ぎゅっと絞り込めば、大外の松田博厩舎VS大内の須貝厩舎とも言える。
もともと松田博厩舎は大外刈りでこのレースを勝つのが得意な厩舎。そういう稽古を日ごろから積んでいても不思議ではない。
一方、去年ローブディサージュで内から抜け出す競馬をさせた須貝厩舎はレッドリヴェールにも大内刈りを教え込んでいるかもしれない。不良馬場の札幌2歳で牡馬相手に内からマクって差し切った脚はインパクト十分。今年も最短距離で駆け抜けるかもしれない。

最内から刈るか、大外から刈るか。
最内の差しは馬群が詰まるリスクがある。大外の差しは単純に間に合わないリスクがある。
だから2番手・3番手からの最内先行抜け出しが決まる可能性もある。

いずれにせよ予想2人気のホウライアキコが最前列にいて、予想1人気のハープスターが最後方にいるはずで、レースの重心が前に向かうか、後ろに向かうかで結末も変わってきそう。

前方か? 後方か?
最内か? 大外か?
さあどっち!?

はい!わかんない!
こればっかりは騎手に聞いてみないとわかんない。いや騎手に聞いてもわかんないかもしれない。
当日の馬場やその日のレースの流れで、いかようにも意識や思惑は変化しそうだからだ。

で、中中刈り(ちゅんちゅんがりと読みたい)。
意味はもちろん、最内・大外に対する「中」であり、同時に前方・後方に対する中団の「中」で、中中(ちゅんちゅん)!

大内刈りだの大外刈りだの書いてきたけれど、阪神JFで一番安定しているのは中団に位置した馬とも言える。
フルゲート18頭を6-6-6で分割して、前から6番手までを前方、7〜12番手までを中団、13番手〜18番手までを後方とすると、阪神改修以後では4角6番手だったウオッカが前方、4角16番手から差し切ったブエナビスタが後方で、それ以外の5頭が4角7〜12番手の中団に位置したことになる。

なんだかんだいって、位置は7〜12番手がベストと言えるわけだ。
ちなみに先週の阪神の芝・外回りは5レースあって、馬券圏内に入った馬を上記の位置に照らし合わせると、
前方 6頭
中団 8頭
後方 1頭
となる。

前方か後方かで悩むならば、馬券的には中団で攻めるのもありなわけだ。
一本を取る競馬ではなく、技ありを取る競馬。
となると浮上してくるのは、
中山の芝16でも、東京の芝16でも中団から差し切った中中刈り実績のあるマーブルカテドラルとなる。

マーブルカテドラルに食指が動く理由はもう1つある。
この馬が阪神JFではもっとも艶かしい3〜5人気に入りそうだからだ。

以下は阪神改修後7年の連対馬の人気(06年-12年)
06年 4人気-1人気
07年 3人気-8人気
08年 1人気-3人気
09年 2人気-5人気
10年 1人気-4人気
11年 4人気-8人気
12年 5人気-15人気

一目瞭然だ。
すべてに3〜5人気の馬が絡んでいる。
1・2人気の馬が連対したときの相手は3〜5人気の馬、6人気以下の馬が連対したときの相手も3〜5人気の馬。
つまり3、4、5番人気を軸にすることはとてつもなく艶かしいことがわかる。1、2番人気でも、6番人気以下でもお相手できてしまうからだ。

もちろん1・2人気の馬で軸はカタいと思うならば、相手は3〜5人気の馬でいい。
でも最大の官能ポイントは穴馬が見つかったときだ。その穴馬から3〜5人気へ流せばいいからだ。

なんだよ! だったらあれこれダラダラと並べ立てずに「3〜5人気から馬を探せ!」でいいじゃないか!!
まったくその通りでございます。
反論のしようがございません。

予想3人気 レーヴデトワール(大外刈り)
予想4人気 マーブルカテドラル(中中刈り)
予想5人気 レッドリヴェール(大内刈り)

おっと!外・中・内そろい踏み!
上手くできてるなぁ〜。

もちろん自分は、前方決着でも後方決着でも対応できそうな中中のマーブルカテドラルに注目したい。
芙蓉Sで、牡馬相手に中山の坂を克服しているのが頼もしい。
アルテミスSで、東京の坂を追い込みではなく、中団から差せたのが頼もしい。新潟の芝ではハープスターに子供扱いされたけれど、阪神の芝ではまだわからない。
とはいえ、一本取れればいいけれど、技ありでも十分と思っている。

次点で注目はレッドリヴェールとマジックタイム。
レッドリヴェールは予想5人気だけでなく、スタートさえ決まれば中団から大内刈りを狙ってきたそうなこと、
マジックタイムも万が一、後藤でスタートが決まればふつうに中団で競馬を進めそうだからだ。

週の真ん中水曜日〜木曜日。
あとは枠順を見て、微調整すればいい。

今回のメンバーで大外刈りを決められたら、それこそほんまもん中のほんまもんだ。
そういう馬はだれ彼に気兼ねすることなく堂々とダービーへ行くべきだ。

阪神JF注目馬
マーブルカテドラル
レッドリヴェール
マジックタイム


追伸・クリスマスの馬主は口取り写真用にサンタ帽を用意してると思うんですよ。
どうみても真っ赤な帽子が一番似合いそうなのはMデムーロでしょう。そのためにMデムーロに騎乗依頼したのではないか? と勘ぐりたくなるほどです。
バゴ×ステイゴールドが短距離専門とも思えないし、気性の問題で距離が持たないのならば、Mデムーロで折り合ってしまう可能性もないとは言えない。

仮に、ここでダメだったとしてもクリスマスローズSがまだある。もしそこでもMデムーロが騎乗してきたら鉄板でサンタ帽じゃないか? え?江田照? それも捨てがたいなぁ〜。
まあいずれにせよ、口取りでサンタ帽を無理なく冠れるのは今月を置いて他になし。クリスマスの口取りからは目が離せません。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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