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オルフェーヴルの好走境界線と今年の有馬記念の足しどころ、引きどころ、掛けどころ、割りどころ

  • 2013年12月19日(木) 12時00分

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オルフェーヴルは池江調教師
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オルフェーヴルが大丈夫かどうかは池江調教師のコメントを読めばだいたい判断できる。
コメントの目安は「7分のデキ」。
これ以上ならオルフェーヴルはふつうに走って、ふつうに勝ち負けする。
実際、このコメントが発生した去年の宝塚記念をオルフェは圧勝した。

自分はオルフェーヴル印象派を名乗ってきたけれど、それはあくまでも鑑賞を目的とした野次馬的見地にすぎず、オルフェーヴルの本当のところなど何もわかっちゃいない。だけど池江師は違う。調教師なんだから当たり前かもしれない。だけど違う。
池江師は、ことオルフェーヴルに関しては師自身が抱いた印象をなるべく正確に世間に伝えようとしていると思うからだ。

その目安が「7分のデキ」。宝塚記念以後、7分のデキを下回るコメントは出ていない。宝塚記念以後の着順は1着・2着・2着・1着・1着・2着。先着を許したのはソレミア・ジェンティルドンナ・トレヴの3頭。全部牝馬。今回は牝馬の出走なし。これだけでも心強いけれど、ここに池江調教師の7分のデキ以上のコメントが加われば、ほぼオルフェで間違いないのではないか?

現状確認できるコメントは「去年のJCのときよりいい」というもの。だけどこれは最終追い切り前のコメントだからまだ信用できない。精神的なデキと肉体的なデキは違うと思うからだ。はたして、最終追い切りを終えて、池江師はどんなコメントをするのか? ラストだから少し甘くなるかな? いや池江師に限っては、ことオルフェーヴルに対しては最後まで正確に発信してくれるはずだ。ディープインパクトの引退レースでも結果を出した厩舎の系譜だ(親父さん)。引退は勝って締める美学を持ち合わせていると思いたい。
ある意味で日本一のオルフェーヴル印象派のはずの池江師最後のコメントを楽しみにしている。

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有馬記念と池江厩舎
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最近の有馬記念は池江厩舎で考えたほうが手っ取り早い。ここ4年常に複数出しで臨み、4年連続で1頭以上馬券圏内に馬を送り込んでいる。16頭から馬券圏内に入りそうな馬を1頭探すよりも断然確率はいい。以下はここ4年の池江厩舎の成績。09年10年は池江・父厩舎の馬も混ぜている。そのまま池江・息子に移行しているから実質同じと判定した。

12年 3頭 馬券圏内1頭 
2着(10人気)ルメール オーシャンブルー
13着(9人気)武豊 トレイルブレイザー
16着(11人気)蛯名 トゥザグローリー

11年 3頭 馬券圏内2頭
1着(1人気)池添 オルフェーヴル
3着(9人気)福永 トゥザグローリー
5着(3人気)ウィリアムズ トーセンジョーダン

10年 4頭 馬券圏内1頭
3着(14人気)ウィリアムズ トゥザグローリー
5着(7人気)三浦 トーセンジョーダン
10着(13人気)岩田 フォゲッタブル
13着(4人気)池添 ドリームジャーニー

09年 2頭 馬券圏内1頭
1着(2人気)池添 ドリームジャーニー
4着(4人気)ルメール フォゲッタブル

人気馬も来れば、人気薄も来る。これを見ると池江厩舎が有馬記念で好走させるのが上手なのがわかる。
ただよ〜〜く見ると、好走馬はよく似ているのもわかる。

父ステイゴールド産3頭で2勝2着1回
父キングカメハメハ産1頭で3着2回

今年の出走馬は
オルフェーヴル(父ステイゴールド)池添 予想1人気
ダノンバラード(父ディープインパクト)川田 8人気
トゥザグローリー(父キングカメハメハ)ルメール 12人気
トーセンジョーダン(父ジャングルポケット)内田博 7人気
ラブリーデイ(父キングカメハメハ)蛯名 13人気

オルフェーヴルを別格とすると、キンカメの2頭、トゥザグローリーとラブリーデイは人気的にも池江厩舎の穴馬好走パターンに合致しそう。ダノンバラードで新しい解釈をする手もあるけれど、12、13人気はやっぱり捨てがたい。

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有馬記念と中山の馬場
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中山の芝馬場は今少しずつ変貌していると言われている。闇雲に時計の出る硬い素晴らしい馬場ではなく、クッション性を重視しつつ、それでいてスピードも殺さない軟らかい素晴らしい馬場へと移行しつつあるのだとか。

実際、9月の開催では今までより0.5〜1秒ほど時計はかかっていたとか。競馬必勝業界的に言うところの「パワーやスタミナが求められる馬場」だったわけだ。それは12月になっても同じようだ。むしろ9月よりパワー・スタミナ度は上がったかもしれない。

このことを有馬記念にどう繋げるか? 一番まっとうなのはスタミナやパワーが必要ならばオルフェーヴル、ゴールドシップにもっともっと有利になるという考え方か。

でもその一方で、人気のなさそうな馬のピックアップの材料にもしたいところ。自分はとてつもなくまっとうだけど、まっとうじゃないと粋がりたい系でもある。だから人気のなさそうな馬探しの材料として採用したくなる。

一番簡単なのは、馬場が変化したことが如実にわかった今年の9月と12月に実際好走した馬を狙う方法か。今回のメンバーで9月と12月の中山で走ったことのある馬はヴェルデグリーン・ダノンバラード・デスペラードの3頭。

ヴェルデグリーン オールカマー1着 (天皇賞秋8着)
ダノンバラード オールカマー3着 (天皇賞16着)
デスペラード ステイヤーズS1着

ヴェルデグリーンは中山と東京で2回ダノンバラードと闘って、どちらでも先着している。この2頭ならばヴェルデグリーンを上と見立てることはできる。
デスペラードはステイヤーズSを1人気で1着した。こういう馬が有馬記念に出走してきたら、指定席はほぼ4着(2頭が4着。1頭は11着)。しかしテイエムオペラオーはまだ超本格化する前の3歳時にステイヤーズS1人気2着から有馬記念3着した。
3着・4着・4着・11着。これなら3着か4着の馬券境界線の攻防には持ち込めそうと考えてもいい。むしろダメと決めつける理由はまったくない。

ヴェルデグリーン 中山4-1-0-2 予想6人気
デスペラード   中山1-0-1-0 予想10人気

そもそも2頭ともに中山は得意で、新しい中山でも1着した。基本的に頼もしい。
ヴェルデグリーンは天皇賞秋で負けて、すぐにジャパンカップを捨て、有馬記念1本に照準を定めてきている可能性あり。9月の中山3週目に差し切ったことにも大きな意義を感じる。
デスペラードはレース直後に横山典が「有馬を使って欲しい」とコメントしたことに重さを感じる。騎乗する馬がいないからと前置きしていたけれど、有馬で勝負になる何かを感じずして、出走要請を報道陣の前でするとは思えない。たしかに4着か5着して「よく頑張った」という横典・定番コメントが出ないとは言えないけれど、予想10人気ならば、3着して「よく頑張った」というコメントに賭けるのもアリだ。

ジャパンカップ・ダートでは柴田の善さんの本能型コメント「なんだこの馬、すげーな!」に乗っかって、ベルシャザール抽出に成功した。面白さの質は違えど、横山典のこのコメントも自分には十分本能型に思える。

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有馬記念と金のローテ
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有馬記念には王道のローテーションがあったはずだ。
天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念。
しかし、その王道のローテも崩れてきているように思える。

実際、この10年で見ても、王道ローテで有馬を勝った馬は8、9、10年前の3回で、ここ7年1頭も勝っていない。
こうなるともはや王道とは言いにくい。けれど勝利=王道と見立てなければ、なかなかどうして、このローテをナイガシロにできないこともわかる。
この10年で8年10頭の馬が馬券圏内に来ているからだ。30頭中10頭。頑張っているとも言える。王道とは言えなくても金になるローテとは言えそうだ。

今年この金のローテで出走する馬はわずか3頭。わずか3頭ならばむしろ積極的に検討したくなる。

エイシンフラッシュ 秋天3着(着差1.0)JC10着(0.5)
トーセンジョーダン 秋天11着(2.3) JC3着(クビ)
ナカヤマナイト   秋天6着(1.6)  JC9着(0.4)

予想人気は
エイシンフラッシュ 4人気 JC3人気
トーセンジョーダン 6人気 JC11人気
ナカヤマナイト   11人気 JC10人気 

JC好走で人気がジャンプアップしそうなトーセンジョーダンは、過去絶好調だった年でも5着だったから外してみる。
エイシンフラッシュとナカヤマナイトはJCでは大きく着順を落としているけれど、着差は秋天より詰まっていることもわかる。展開のアヤが招いた着順だったと片づけられるかもしれない。これで有馬で人気をアゲてしまうなら買いにくいけれど、人気をサゲるなら話は別だ。予想ではJCより人気をサゲそう。ならばちょっと惹かれる。

エイシンフラッシュは4歳時、5歳時と金のローテで有馬に臨んで、2着、4着した。2着はルメール、4着はMデムーロの代打・三浦だった。その三浦も若干早仕掛け気味だったとはいえ、見せ場十分に先頭に立っての4着だった。Mデムーロだったらどうであったろうと思わせる内容だった。今年に入ってのエイシンフラッシュは秋天までは、3着・3着・1着・3着と安定した成績だった。逃げてリズムを崩したJCの10着だけで見限っていいのか?

ナカヤマナイト陣営からは走るたびに「生涯最高のデキ」というコメントがあったように思う。自分も何度かそのコメントに乗っかって、痛い目にあった。だけど、それがはったりだとはまったく思わなかった。ただ生涯最高のデキだからといって、G1で勝ち負けするとは限らないことは学べた。

そのナカヤマナイトがJCでついに0.4差まで走った。これまでのG1での最少着差は安田記念の0.7差だから、実に0.3秒も更新したことになる。JCは道中ぶつけられて、思うように騎乗できなかったと言われている。それでも0.4差なのだから、本当に生涯最高のデキだったとも解釈できる。

4-2-0-1と得意の中山で、ステイゴールド産にさらに適した馬場になった可能性のある新しい中山で、何度目かはわからないけれど生涯最高のデキを更新できたならば、まだわからない。今度こそまだわからない!?

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ゴールドシップとアドマイヤラクティ
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最後に予想2人気ゴールドシップと予想5人気のアドマイヤラクティについて。

天皇賞春
ゴールドシップ 5着 アドマイヤラクティ 4着
京都大賞典
ゴールドシップ 5着 アドマイヤラクティ 4着
JC
ゴールドシップ15着 アドマイヤラクティ 4着

今年3回闘って、3度ともアドマイヤラクティが先着した。ゴールドシップの苦手な京都、東京でのもので、中山ではわからないと思いたいけれど、アドマイヤラクティも中山2-0-1-0でぜんぜん苦手ではない。

もうアドマイヤラクティの方がちょっと上と決めつけてもいいのではないか?

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そして今年の有馬記念の足しどころ、引きどころ、掛けどころ、割りどころ
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オルフェーヴル…池江師が「7分以上のデキ」もしくはそれに準じたコメントを発表したら、2連系の軸にすればいい。1着7分:2着3分でどうだろう。

池江厩舎から1頭以上狙い…オルフェーヴルを別にして、10人気以下でトゥザグローリーかラブリーデイ

新しい中山の芝1着馬狙い…ヴェルデグリーンとデスペラード

金のローテ(かつての王道ローテ)狙い…エイシンフラッシュとナカヤマナイト

ゴールドシップよりちょっと上?…アドマイヤラクティ

池江厩舎から行くか、新しい中山の芝から行くか、金のローテから行くか、アドマイヤラクティから行くか。足すか引くか掛けるか割るか。さぁどうしよう。

足すか引くかはまだ考えない。結局、オルフェーヴル次第と思うからだ。
オルフェーヴルが万全ならば、上記の馬に全部流せばいい。オルフェーヴルのデキが7分未満だったら、上記の組からいくつか選んでボックスでも買えばいい。

その場合は逃げるかもしれないと勝手に思っている武豊騎乗のラブイズブーシェも混ぜてあげよう。G1での武豊の逃げは、ときどきアツい。ダートならうんとアツい。今の中山は逃げた馬は残りにくいと言われているけれど、クルクル回る長距離系では、逃げた馬が残りにくいとみんなが思っていることが大事で、むしろ幸運の可能性もある。

一応順番的には、
エイシンフラッシュ=アドマイヤラクティ
ヴェルデグリーン=デスペラード
その他
&ラブイズブーシェ

こんな感じか。あとは枠が発表されたら絞り込めばいい。。

追伸
そのオルフェーヴルの追い切りが終わった。追い切り情報も新聞やネットに出回り始めた。調教や調教時計はちょっと悩ましいものだった(想定より遅かった)。
こうなるとますます池江師のコメントの比重が増すことになる。これから週末まで池江師の一挙手一投足に注目でございます。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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