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【特別企画】藤岡佑介騎手の『私の恩人』(3)―武豊騎手に学んだ“海外遠征”の意義

  • 2014年01月23日(木) 18時00分
藤岡佑介騎手

 渡仏の約1カ月前、このnetkeibaの『キシュトーーク!』というコーナーで松山弘平からの指名を受け、対談に応じてくれた藤岡。当然のごとく、目前に控えた長期遠征の話題になったわけだが、松山から次々と繰り出される質問のなかで、「向こうで何をするかが大事なのではなく、帰国後に結果を出すことが目的」と、力強く言い放った。

 フランス行きが決まったあと、長期で行かれた経験のある豊さんに、いろいろとお話をうかがいました。それ以前に、祐一さんがアメリカに行っているとき、豊さんが「祐一が帰ってくるのがすごく楽しみだ」とおっしゃっていたんです。「海外に行くと、周りからは『向こうで何をしてきたんだ』とか『いくつ乗っていくつ勝ったんだ』とか『行ってどう変わったんだ』とか聞かれるけど、そんなことはどうでもよくて、海外で得たものをいかに日本の競馬で活かせるかはもちろん、経験を積んだことで、発言がどう変わってくるか、そういうことが大事。だから、祐一に会うのが楽しみだ」と。やっぱり海外を飛び回っている方が言うことは違うなと思いました。

 もし、そういうお話を聞いていなければ、たとえ同じようにフランスに行ったとしても、“向こうで僕はこれとこれをやってきました”ということに終始してしまっていたかもしれません。でも、実際はそうではなく、“大切なのは帰国してから”という強い気持ちを持っていけたのは、やはり豊さんの言葉が大きかったですね。


 通訳もいないし、住むところも決まっていない。それどこか「空港に着いたら、そこからどうやって移動すればいいんだろ?」という状態で、2013年4月16日、藤岡はたったひとりでフランスへ旅立った。そこから帰国までの約7か月間、ほぼ休みなく厩舎作業に従事しながら、51鞍に騎乗。6月21日には、遠征後8戦目にして初勝利を挙げた。

 フランスでの唯一の勝利は、小林智調教師が管理するオンケンバヤソワカと出走した芝2500mの一般レースでした。小林先生は、日本人として初めてフランスギャロの調教師試験に合格された方で、2009年に厩舎を開業。先ほど、誰にも相談せずにフランス行きを決めたと言いましたが、現地でのサポートをお願いするにあたって、唯一、小林先生とはコンタクトを取っていました。

 小林先生は、「努力は人を裏切らない」というポリシーを身を持って体現されている方。勝負服の洗濯から何から何まで、とにかく全部ご自分でこなしていらっしゃいました。日本の先生がいい悪いではなく、それまで僕のなかにあった“調教師”のイメージとは、ある意味、かけ離れた方でしたね。人物像も、言葉で説明するのは難しいのですが、独特の雰囲気があって、すごく賢くて、今までに出会ったことのないタイプの方でした。7か月間、父親でもなければ師匠でもないわけですから、本来なら僕の面倒なんて見なくていい立場なのに、本当にいろいろとお世話になって、影響を受けずにはいられませんでしたね。僕にとっては恩人であり、第二の師匠です。本当に感謝の気持ちしかありません。

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