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ハープスターの普通とトゥザワールドの普通とオーシャンSの普通

  • 2014年03月06日(木) 12時00分


チューリップ賞と弥生賞、どちらでも1人気必至の馬に騎乗する川田騎手は2つとも勝てるのだろうか?

いやこういう書き方は変だ。ふつうに眺めたら、ふつうに両方勝ちそうだ。実際、川田騎手もハープスターについてはふつうに走ることを強調している。

「普通に走れればそれでいいです。前回は普通に走れなかったので」(netkeiba.comより)。

言い方は穏やかだけれど、どうみてもこれは勝利宣言だ。
トゥザワールドについて、どんなコメントを出しているのか自分はわからないけれど、きっと同じような感覚ではないか?

ではいったい普通とはどんな走り方なんだろう?
それは逆に言えば普通に走れない場合は取りこぼしもあるということか?
そもそも今回のメンバーで普通に走れないことなんてあるのだろうか?

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チューリップ賞
ハープスターの普通
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新馬 芝14  1人気1着 位置5-7-8 
新潟2歳 芝16 1人気1着 位置18-18-18(やや出負け)
阪神JF 芝16 1人気2着 位置12-14-14

普通でなかったのは「前回」の阪神JFのはず。
位置取りだけを見れば、最後方追走で差し切った新潟2歳の競馬よりも普通に見える。
普通でないとすれば最後の直線で中を突いて、ゴール前で3頭の叩き合いの真ん中に入ってしまったことか。
ただ阪神JFは中を突かなければ、ぜんぜん間に合わないレースにも思えた。もし普通でないとしたならば、中を突かねばならなくなった向こう正面〜直線に向くまでのプロセスにあったか。

レース後に「納得できん。勢いをつけて外に出したならいいが、中途半端な競馬だった。もったいない…」と松田博師がコメントしていたことからも、おそらく普通とは直線に向いたら外に出す競馬のはず。

で、改めて振り返ってみる。
ハープスターが普通に外に出して勝ったレースとはどのレースだろう?

新潟2歳Sは出負けして18頭立ての最後方を追走して、大外から豪快に差した。新潟2歳Sは最後方から直線大外に持ち出して、まとめて差し切るのが定石だったりもする。ここのコラムでも何度も書いてるけれど、新潟2歳に限っては出遅れはむしろ歓迎すべきことでもある。

だから新潟2歳Sでの勝ち方は普通とも言える。しかし、最後方から差し切る競馬は、一般的にはけっして普通とは言えないはず。だとすると、新潟2歳Sはモデルにはならない。

となると残るは10頭立てのレースを5-7-8で差し切った新馬戦になる。
位置取りだけを見ると、これは理想の「普通」に思える。けれど、レースVTRを見ると、けっこう荒削りなレースだったこともわかる。
たしかに4角回ったときは外に持ち出しているけれど、さらに外にいた馬にずっと被されつづけ、外にはいたけれど、直線では中を突き、前にいた2頭の真ん中を抜けた競馬だった。直線での抜け出し方は、阪神JFに近いともいえる。

もしかしたらこの勝ち方があったから川田騎手は阪神JFでも中から突いてきたようにも思える。ただ阪神JFは相手も強いから抜けられなかった。そういうことか?

つまり、
「ハープスターはまだ普通に走ったことがない?」
とも言えるわけだ。

それでこれだけの成績なのだから普通に強いのは間違いないだろう。
ちなみにチューリップ賞の勝ち馬にはこんな傾向がある(阪神改修・07年以後)。

#1 チューリップ賞を1人気で1着した馬は阪神JFを1着した馬だけ。
#2 4角9番手以内にいないと1着にはなれない。

ハープスターは阪神JFを1人気で2着だった。でも前記したように普通ではない走りで、ハナ差2着なのだから、#1は多めに見れなくもない。ただ普通に外から差していたらいったい何着だったのだろう? よくて3着か。だとすると#1はもっと分が悪くなる。

4角9番手以内の位置取りが必要な#2はどうだろう。
今回は最大で14頭立てで、もしかしたら12頭立てくらいになるかもしれない。
この頭数ならば、なんなく位置は取れそうだ。
実際、松田博厩舎の馬で言えば、阪神JFを16-16-16で差し切ったブエナビスタも、チューリップ賞では13-12-7の位置取りだった(13頭立て)。
レーヴディソールは9-9-9で1着した(12頭立て)。

松田博厩舎ならば、その点の抜かりはないだろう。
ただし出遅れたりしたらどうだろう。
新潟2歳は出遅れではないけれど、出負け気味だった。

今回のメンバーは阪神JFのメンバーに比べて一枚落ちるようにも思えなくはない。だから多少出負けしても、なんなく4角9番手以内の競馬はできそう。
ただ相手もハナっからハープスターとの末脚勝負を諦めて、権利取りのための奇襲を仕掛けてくる可能性もある。奇襲とは、ここではもちろん早めの抜け出しや逃げだ。

今回のメンバーで逃げや4角先頭競馬をしてきそうな馬は下記の5頭か。
シャイニーガール 幸
ヌーヴォレコルト 岩田
ブランネージュ 藤岡康
プリモンディアル 武豊
リラヴァティ 松山

逃げなら武豊騎手か。実際去年も逃げ切っている。
4角先頭なら岩田騎手か。すぐに思い浮かぶ。具体的な馬は思い浮かばないけれど、岩田騎手が4角先頭にいる光景はすぐに思い浮かぶ。
武豊、岩田、2騎手ともに権利取り競馬が上手そうだ。

今回のハープスターは何が起ころうとも間違いなく直線では大外をつきそう。それが普通のはずだからだ。それゆえに武豊騎手も岩田騎手も作戦が立てやすいのではないか? 名手系が作戦を立てて、権利取りをする。なんだか手強そうだ。

ブエナビスタもレーヴディソールも阪神JFを大外から差し切った。
ハープスターは中から抜け出す競馬をしても、差し切ることはできなかった。
理由はどうあれ、中や内から差すより、外から差す方が馬の基本性能は上だ。だからブエナビスタ・レーヴディソール級かは実はまだわからない。

自分は松田博師の牝馬がダービーの舞台に立つことを「けしからん夢」として、待望している。だからここは「普通」に走って欲しいと願っているけれど、馬券的には「普通」ゆえに取りこぼしもないとはいえない系で接してみたい。

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弥生賞
トゥザワールドの普通
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この10年の勝ち馬は社台系生産馬か岡田系(マイネル・コスモ・ウイン・岡田繁幸氏名義の馬をぜんぶ合わせて)の馬しかいない。
社台系生産馬7頭、岡田系の馬3頭。
つまり社台系か岡田系かの見極めが上手くいけばだいたい頭を取れたことになる。

社台系の馬の頭の取り方は1人気と支持率。
この10年の1人気の成績は6-1-0-3。
6勝すべてが社台系生産馬だ。

ただし1人気になれば頭確定というわけでもない。この10年で社台系生産馬は10回1人気になっているからだ。そう毎年1人気。で、6-1-0-3。
つまり2着1回、着外4回もあるわけだ。

つまり、1人気の見極めができれば馬券は相当楽になると言える。そこで使えそうなのが単勝支持率というわけだ。

04年 フォーカルポイント 2.3倍 5着
05年 ディープインパクト 1.2倍 1着
06年 アドマイヤムーン  1.6倍 1着
07年 アドマイヤオーラ  1.7倍 1着
08年 ブラックシェル   3.8倍 2着
09年 ロジユニヴァース  1.3倍 1着
10年 ヴィクトワールピサ 1.7倍 1着
11年 サダムパテック   2.7倍 1着
12年 アダムスピーク   2.9倍 8着
13年 エピファネイア   2.3倍 4着

単勝が1倍台だと5-0-0-0で全勝。
2倍台だと1-1-0-3と不安定になる。

弥生賞はなかなかフルゲートにならない。今年も登録は13頭しかいない。
この時期になるとだいたいの力関係は見えて来る。
これらの事情が相まって、強い馬の評価に迷いが出にくいのではないか?

迷いなき評価の境界線、それが単2.0倍なのではないか。それよりも評価されれば1着硬度は強まり、評価が低いと硬度は弱まる。
競馬ブームの頃とは違って、今の1倍台とはパドックや調教を見る現場派や血統や指数といった書斎派などの支持が集結した結果とも思えなくもない。

去年のエピファネイアもその後の活躍を見れば、4着は不思議だけど、騎手がテン乗り(ビュイック)だったことが支持者を減らし、単2.3倍になったとも思える。

では今年はどうなのだろう?
おそらく1人気はトゥザワールドのはず。
トゥザワールドはノーザンF生産だから今年も1人気は社台系生産となる。
例年どおりに普通だ。

この馬の評価が1倍台ならば、トゥザワールドの頭鉄板!
トゥザワールドは普通に勝つ。
この馬から1着付けで総流しすれば、儲けはともかくほぼ絶対的に的中はする。
個人的には弥生賞は5、6、7人気の馬が絡みやすいと思っているから、トゥザワールドから5、6、7人気の馬へ何かの馬券を買ってみたい気持ちでいっぱいだ。

てなことを思い描きながら、一応、netkeiba.comの予想を見てみる(水曜18時)。

1人気 トゥザワールド 1.9 

おっと。
1倍台だけど、かろうじて感もある。少し揺れれば2倍台にもなりそうだ。
自分はいつも予想はオッズではなく、人気しか見ないから、この1倍台のリアリティーはわからないけれど、世間全体の評価も1.9くらいだとしたら楽しみだ。

サダムパテックは2.7倍でも1着したから、2倍台になったら来ないとは言えない。
けれど、心配指数がちょっと上がることは間違いない。なんせ1-1-0-3と3頭も着外になっているし…。

そもそも中山2000は1人気がきちんと勝つのに骨が折れるコースだとも思っている。
あのディープインパクトが一番着差をつけられなかったのも弥生賞だ(アドマイヤジャパンにクビ差勝ち)。
1人気が1倍台という圧倒的支持を得て、はじめてきちんと勝てるコースなのではないか?

ちなみに中山芝2000の1人気の成績をオッズで分けるとこうなる。
1.0倍台 勝率62.6%
2.0倍台 勝率27.6%
3.0倍台 勝率25.5%

やっぱり1倍台でないと1着はなかなか信用できなさそうだ。

というわけで、今年の弥生賞はトゥザワールドの単勝オッズを見て、買う馬券を決めようかと思っている。
はたして予想どおりに1倍台になるのだろうか? 
1.8〜2.1くらいの間をユラユラしてくれると、悩ましいけどそれはそれでアリだ。

仮にもし2倍台になったら、別の馬の単勝でも買ってみようかと思っているけれど、
今年は頼りの岡田系の馬がいない。またトゥザワールドが負けるにしても馬券圏外に敗れるとも思いにくい。ならば今年は6、7人気の馬とトゥザワールドを絡めて、3連系の馬券を買うのも手ではないかと思っている。

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オーシャンSの普通
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オーシャンS
強そうな1人気がいても、1人気とは関係なく、1枠〜3枠に隠れている穴を掘り起こして小さな幸せに出会いやすいレース。

その1
■1枠〜3枠の馬しかみない。
■その中から6番人気〜9番人気の馬を抜粋する
■該当馬をじっとみる。
■この馬はないだろう…
■いや…もしかしたらあるかも……
■そう思った馬の複勝を買う。
■これでこの10年で6年小さな幸せに出会えた。

その2
■1枠〜3枠の馬しかみない。
■その中から9番人気〜14番人気の馬を抜粋する。
■該当馬をじっとみる。
■この馬はないだろう…
■いや…もしかしたらあるかも……
■いやいや……いやいやいや……
■そう思った馬の複勝を買う。
■これでこの10年で5年(6頭)やや大きめの幸せに出会えた。

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チューリップ賞注目馬
普通・ハープスター
奇襲・ヌーヴォレコルト 岩田 
奇襲・プリモンディアル 武豊
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弥生賞注目馬
普通・トゥザワールド…単1.0倍台で1着付けで、単2.0以上で2、3着馬券
6、7人気馬…エイシンエルヴィンが入ると嬉しい(エイシンエルヴィンはきさらぎ賞でも狙った馬で、きさらぎ賞3着の走りを見ると、未勝利でも3着、重賞でも3着みたいな馬に見えた。5人気になると買いにくいけれど6、7人気ならば買いたい。あとはどんな馬が6、7人気になってもいい。ウンプテンプやブラックヘブンがそこにいたら黙って買うつもりだ。
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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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