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逃げ切りの価値と無駄口(西園厩舎の2頭出しを無駄に考えてみる)

  • 2014年03月27日(木) 12時00分


今年は逃げて強いタイプの馬がいっぱいいる。
ハクサンムーン
コパノリチャード
レディオブオペラ
エーシントップ

逃げ馬がいっぱいいるから、その後ろで走れそうな5、6番手馬、もしくは決めての鋭い差し馬に有利に働く。
その考えを否定するつもりはまったくない。

改修後の中京競馬の芝は距離が短いほど逃げた馬が残れなくなっている。
去年の暮れから若干逃げた馬も残れるようになってはきたけれど、他の競馬場に比べたら、やっぱり逃げ馬にはツライコースにも思える。

だから余計に差し馬から買うのが正解と思う。
けれど、それでも、今回出走する逃げ馬、もしくは逃げて競馬のできる馬には敬意が必要な気がしてならない。

理由は、みなそれぞれに価値のある逃げを見せているからだ。

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ハクサンムーンの0.9
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ハクサンムーンの価値は去年の高松宮の逃げっぷりに表れている。
去年の今頃の中京は特に逃げた馬にツライコースだった。
たしかに10人気とマークから外れていたかもしれないけれど、それでも逃げて3着した走りにはちょっとやそっとじゃ止まらない凄みもあった。

「4歳で高松宮で掲示板に入った馬(5着以内)には翌年、敬意が必要」で、

4歳時、ロードカナロアは先行して3着した。→翌年、1着。
4歳時、サンカルロは追い込んで4着した。→翌年、2着。
4歳時、ローレルゲレイロは逃げて4着した。→翌年、1着。
4歳時、ギャラントアローは逃げて4着した。→翌年、11着。

ダメだったのはギャラントアローのみ。

4歳時、ハクサンムーンは逃げて3着した。→今年、さぁどうだ!

実際、ハクサンムーンは高松宮で3着した後も、強さを発揮した。
CBC賞(中京) 2着(逃げ)
アイビスSD(新潟) 1着(逃げ)
セントウルS(阪神) 1着(逃げ)
スプリンターズS(中山) 2着(逃げ)
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おそらく心配事は前走のオーシャンS13着だろうけど、過去のハクサンムーンのレースっぷりを見ると、心配だけど心配しすぎることもないようにも思える。
以下は人気で惨敗した後のハクサンムーンの変わり身っぷりについて。

葵S 1人気9着 着差0.9
→次走・出石特別 3人気1着

京洛S 1人気15着 着差1.6
→京阪杯 10人気1着

オーシャンS 3人気9着 着差0.9
→高松宮 10人気3着

着差0.9秒負け2回、1.6秒負け1回、でもすぐさま巻き返している。

前走のオーシャンS 1人気13着 着差0.9

またしても0.9!!
ときどき惨敗して、気分をリフレッシュするのがこの馬のストレス解消法だとしたら、0.9秒差は予定どおりの惨敗とも言える。
早さではきっとこの馬がナンバー1だし、逃げの難しい中京の芝1200で0-1-1-0は、中京芝1200が未経験の他3頭(コパノリチャード、レディオブオペラは中京初体験)に比べても頼もしい。

ハクサンムーンの逃げ、いや前走の0.9差負けには価値があるのではないか?
と考えざるを得ない。
ハクサンムーンについては上乗せ材料がまだあるけれど、それは後述。

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レディオブオペラのシルクロード
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前走シルクロードSの時にここで書いた。

「シルクロードSを、4歳で、57キロ(牝馬55)で、1人気で、馬券圏内に残った馬には価値がある」と。

以下はシルクロードSを4歳1人気で馬券圏内に入った馬のその後の成績。アイルラヴァゲインは55キロで、他2頭は57キロだった。
3頭ともにその後G1で馬券圏内に入っていることがわかる。

シルクロードS
1着馬 ロードカナロア(牡)57 直後の高松宮を3着し、その秋から快進撃が始まった。
3着馬 サニングデール(牡)57 直後の高松宮を2着し、翌年の高松宮を1着。
3着馬 アイルラヴァゲイン(牡)55 オーシャンS・1着、スプリンターズS・3着。

そもそもシルクロードSは4歳に厳しいレースで、そこで1人気で、馬券圏内に入ることに価値があるけれど、57キロで馬券圏内に入った2頭は直後の高松宮でも馬券になった。

レディオブオペラは4歳牝馬で、55キロで、1人気で、2着した。しかも逃げて。
単純に比べるならば、ロードカナロアとサニングデールの間だ。

前走は初の重賞で、初の55キロで、マイナス14キロ(デビュー以来最低の馬体重)だった。
それでも2着したことにこの馬の価値を見いだせるかもしれない。
しかも逃げずに番手でも競馬ができる。枠順次第ではそれもアドバンテージになるかもしれない。

心配な点は直線の短い平坦なコースでしか1着したことがないこと。外回りコースでも同じように走れるかはまだ未知数だ。
もしや京都の内回り(約323M)のスペシャリスト?

阪神・芝1400で2着に負けたのが、距離が長かったのか、直線の坂が堪えたのか、直線がちょっと長かった(約356M)のか、そこがまだわからない。
1人気が予想されるストレイトガールやハクサンムーンには中京経験がちゃんとある。そこと比べるとどうしても心配指数は高まる。

阪神(内回り)の直線は高低差1.8Mで約356M。
中京の直線は高低差3.5Mで約412M。
京都(内回り)の直線はほぼ平坦で約323M。

ここは気になる。
気になるけれど、ハクサンムーン・コパノリチャードよりも番手競馬への安定感は高い。
ここはアドバンテージではないか?

今週末にはドバイで国際競走がある。もし高松宮でモハメド殿下の馬が勝てば、それはそれは気持ちのいいことだろう。
ドバイで金、日本でも金。もしかしたら別の国でも金があるかもしれない。
(ダーレーの馬がドバイで1つは勝つと想定)

世界中でドバイ・ミーティングをアピールする。そういうのに気持ち良さを感じるのが王様関係ではないのか? いやそうであって欲しい。

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コパノリチャードは一生懸命考えない。
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全成績5-1-0-5
勝つときはすべて1馬身以上着差をつけて勝つ。
力のある気分系逃げ馬の特徴だ。

こういう馬はあれこれ思考するよりも、
良い枠が引けますように〜
良い気配でパドック、返し馬ができますように〜
良いスタートがきれますように〜
とおまじないをするのが一番だ。

そういう意味では馬主のコパさんが「桶狭間の戦いの織田信長よろしく熱田神宮にお参りに行く」とあちこちで語っているのは正しいのかもしれない。
でも自分も思う。特にMデムーロ騎乗になったことで余計に「良いスタートがきれますように〜」という願掛けは必要ではないか?と思うようになった。

Mデムーロはけっこうスタートで出負けすることが多いように感じている。
特にマイルチャンピオンのときに思うことで、Mデムーロ騎乗馬の馬券を買うときは出遅れませんように〜と毎回願っている。
実際、2006年の高松宮で1人気のシンボリグランで出負けした。
直近だと阪神JFのクリスマスでも出負けした。
Mデムーロは上手だから、出負けしてもなんとか挽回するけれど、それは1800以上の1周競馬のときのように思う。先週のロサギガンティアでも出負けしたけれど、1周競馬が幸いし、ちゃんと立て直し、1着した。

とはいえ、名手といえどもマイル以下のレースでの出負け、出遅れは致命的だ。
しかもコパノリチャードは逃げ・番手馬で、出負けは許されないはず。
ただし、好スタートさえ決まればMデムーロ騎乗はアドバンテージになる可能性も高い。

理由はコパノリチャードは左回りで膨らんでしまう弱点があるそうだからだ。
これは馬主のコパさんがあちこちで語っていることだから間違いないだろう。NHKマイルはそれが原因で力が発揮できなかったそうだ。
ただそれを晒すのだから、克服する見込みが立ったとも考えられる。

Mデムーロの腕と中京のスパイラルコース(ブレーキをかけずにコーナーに入れる)が外へ膨らむ癖を矯正しないか? NHKマイルは膨らむのを抑えながらもゴール直前まで粘りに粘って8着(0.4)した。4着したマイルチャンピオンより着差(0.6)的には上だ。Mデムーロの操縦と距離1200で、たとえ膨らみたがったとしてもなんとか駆け抜けてしまうことはないか?

おっと、一生懸命考えてしまった。この馬は気分次第で、1着か着外ホースだった。逃げ切るのがやっかいな阪急杯を逃げ切ったのだから、力は十分だ。
買うのならMデムーロが好スタートを決めてくれるようにおまじないをするだけだ。

コパノリチャードは逃げなくても競馬はできると言われている。
ただし過去歴から逃げずに馬券になったのは2回だけだ。
千両賞     2-1-2 2着 福永
アーリントンC 2-2-2 1着 ビュイック
ポートアイランド   2-2-1 16着 浜中
阪神C     6-3-3 10着 浜中

逃げ 4-0-0-3
逃げず 1-1-0-2

逃げずに勝てたのはビュイック騎乗時のみ。もし外国人特有のパワー騎乗が上手く行ったのならば、Mデムーロ騎乗は悪くないはず。
Mデムーロが好スタートを決めてくれれば……やっぱりそこに行き着いてしまう。

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エーシントップの立ち位置
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問題はこの馬ではなかろうか?
予想では17人気!! ワオ! もっと人気薄かと思った。

他の逃げ系の馬の予想
2人気 ハクサンムーン
3人気 レディオブオペラ
4人気 コパノリチャード

エーシントップは相当ナイガシロにされているのがわかる。
それもしょうがない。

デビューして3歳春までの成績 5-0-0-3
秋からここまでの成績 1-0-0-4
ここ3走も5着・14着・16着

早熟で一丁上がりといったところか?

ただ少しはいいとこもある。
芝5-0-0-4
ダ1-0-0-3

ここ3走の敗戦はすべてダートだ。
復帰初戦のスワンSで12着に負けてから、ここ4戦はすべてダート。
霜月Sで勝っちゃったもんだからダート路線を歩んだのかもしれないけれど、芝の方が向いてる可能性もあるっちゃーある。

芝1400 3-0-0-1
芝1600 2-0-0-3

1400で着外に負けたのは休み明けのスワンSだけだ。1200で弾ける可能性もないとは言えない。
しかも逃げた時は芝では3戦3勝。
NHKマイルは1人気という評価を受けた馬で、そこでは不利を受けながらもコパノリチャードには先着した(7着。リチャードは8着)。

臨戦、近況は今ひとつでも、G2・2勝、G3・1勝で、もともとはコパノリチャードよりも格上とも見られていた馬だった。
成績もコパノリチャードに似て、1着か着外タイプだ。

エーシントップ 全成績6-0-0-7
コパノリチャード全成績5-1-0-5

どう見ても気分系だ。
あっちゃこっちゃ寄り道、道草が過ぎただけで、気分のいい馬場、気分のいいコース、気分の持つ距離でならば、まだわからないと同情したくなる。
「早熟でしょ」というツッコミの矢を四方八方、雨あられに受ける気がするけれど、17人気だし、まだわからないでいいじゃないかと小声で言ってみたりして。

とはいえ、だからといってだ。
ふつうに考えたら買えない。

だけど「ふつうに考えたらいらない」というシチュエーションこそが時として、逃げ馬に幸運をもたらすことがたま〜にあることも知っている。

とはいえ、だからといってだ。
それでもこの馬はいらない。いらないはずだ。

でもそれでもこの馬をナイガシロにしにくい。理由はこの馬がハクサンムーンと同じ西園厩舎の馬だからだ。

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上乗せと無駄口
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では、ちょっと考え方を変えてみる。
ハクサンムーンはどんな競馬が理想だろう?

おそらくポンっとスタートを切って、何かに絡まれることなく進められるといいなぁ〜
と思っているのではないか?
いくらオーシャンSで惨敗したからといって、あれだけで警戒が弛むとも思えない。

では、ハクサンムーン・コパノリチャード・レディオブオペラ陣営にとって、一番恐ろしい馬はどの馬だろう?
おそらく、ある程度前につけられて、なおかつ決め手のあるストレイトガールではないか?
だからってストレイトガールを逆にマークする競馬はこの3頭には今さらできない。
ならば、できることは前に行って、なおかつ自身が直線でもそれなりの上がりを繰り出せて、ギリギリ後方を凌ぎきれるような流れを作ることだろう。

そうなると、ハクサンムーン・コパノリチャード・レディオブオペラ、もしくはハクサンムーン・レディオブオペラ・コパノリチャードの隊列ですんなり落ち着く可能性もある。
敵がストレイトガールという認識で一致すればするほど隊列の落ち着きはあり得る。

と、ここで考える。
西園厩舎はなんだってまたエーシントップをも出走させるのだろう?
馬主が違うから当たり前といえば、それまでだけど、同じ厩舎で、逃げるのがベストの馬(ハクサンムーン)とおそらく逃げるのがベストの馬(エーシントップ)をどう使い分けるのだろう?

まさか自由競走……!? 出たなりで雰囲気で……!? なんて指示は出さないはず。

一番面白いのは
エーシントップーハクサンムーンの隊列だ。
こうなったらエーシントップはすさまじく楽だろう。デビュー以来最高に楽な競馬になるかもしれない。

でも厩舎実績を考慮すればハクサンムーンのための競馬か。
ハクサンムーンーエーシントップ
こうなるとハクサンムーンに楽になる。これはちょっとした上乗せ材料だ。
理想はハクサンムーンに被らないギリギリの斜め外側くらいで内を少しあける位置か?
そうなるとレディオブオペラ、コパノリチャードにとっては、エーシントップはちょっと邪魔な存在になるかもしれない。そしてハクサンムーンにとってはひじょうに楽な逃げが打てるかもしれない。

もちろん枠で左右される。だからエーシントップを絡めたこれ以上の無駄口は慎もう。
と言いつつ、最後の無駄口を。

「負けた理由は把握できています。本番に向けて調子を上げてくれると思いますので、次に期待したいです」

これはオーシャンS13着時の酒井騎手のコメント。
「負けた理由は把握できている」
これは、把握はできているということで、次は間違いなく調子が上がると言うことではない。調子を上げてきて欲しいと願ってはいるだろうけど、100%上がると言ってるわけではない。
逆に言えば、把握できているがゆえに、調子が上がって来ないとしたら、それも把握できるということでもある。

もし、調子が上がって来てないとしたらどうだろう?

「ハクサンムーンが一番テンに速い!スプリンターズSでも証明した!ウチの馬に絡んできたらみんな潰れる!」とあえて、っていうか心なしか強めに発言するような気がする。

で、ハクサンムーンの前にエーシントップを出すような気がする。

そうなったらハクサンムーンは間違いなくいい壁になるような気がする。

気がつけば、エーシントップがなかなかバテずにゴールめがけて走っている……
あ〜無駄口がすぎるね。もうやめておこう。
エーシントップのような自分的にはまだスパイシーさが残っていると解釈している馬に武幸騎手が乗るとなると、ついついファンタスティック(不思議ちゃんモード)なことを考えてしまう。自分の悪い癖だ。困ったもんだ。

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高松宮記念・注目馬
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今年の展開は例年以上に枠が握っていると思う。
「間違いなくハイペースになるのか?」
「間違ってG1にしてはゆるいペースになるのか?」

たとえばコパノリチャードが1番に入って、ハクサンムーンが18番に入ったら、
それだけでいくつかのパターンが考えられる。その逆でも違った可能性が考えられる。

ハクサンムーン 酒井
レディオブオペラ 藤田
コパノリチャード Mデムーロ

この3人が人気馬に騎乗して、自身の馬が潰れるようなペースで競馬をするとはどうしても思えない。今の中京では逃げ切るのは難しいという論調がさらに広がる可能性もある。
ハイペースになったとしても、ギリギリ凌げる見極めをしながらレースをするのではないか? 前記したようにストレイトガールは1人気になりそうだし、そこを警戒もするはずだ。

それは後方の馬にも言える。
ストレイトガールを見ながらレースを進める馬がいっぱいいそうだ。
思った以上にきれいにレースが進む可能性もある。

それでも、先行して決め手のあるストレイトガールから、やや後方で決め手を発揮しそうなディープインパクト産の2頭に流すのが正解のような気がする。
けれど、だとしても、
今は「武幸&エーシントップ」のスパイスを振りかけたくってしょうがない。

だからエーシントップには自身のキャラクターが発揮できるような競馬をして欲しいと願うばかりだ。人気もないしここで差す競馬を覚えさせてみっか…なんて選択をして欲しくない。

てな感じで、枠発表前の今は、
ハクサンムーン・レディオブオペラ・コパノリチャードらの逃げ系の馬に敬意を表しつつも、
エーシントップの立ち位置ばかりを考えている。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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