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ハープスターのギブどころ、ネバー・ギブどころ。

  • 2014年04月10日(木) 12時00分


2年前のここでこんなことを書いた。

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ジョワドヴィーヴルとけしからん夢

#1 福永騎手が全部取るのはけしからん夢か?

順調に進めば、この春の福永のクラシック騎乗馬は牡馬がワールドエース、牝馬がジョワドヴィーヴルのはず。

この2頭でもって、桜花賞・皐月賞・オークス・ダービーを全部取るんじゃないか? そんなイマジネーションをする者が鴨川と神田川の寄合所にも何人かいる。実際、全部取っても驚けない。いや驚く。ブラボーだ。でもその一方で、そもそも全部取るなんて、けしからん夢のような気もする。
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で、結局どうなったのか?
桜花賞・オークスをジェンティルドンナが連覇して、皐月賞はゴールドシップ、ダービーはディープブリランテが勝った。結局、福永騎手は一つも取れなかった。

今年のキーマンは言うまでもなく川田騎手。
桜花賞 ハープスター
皐月賞 トゥザワールド

ジョワドヴィーヴルは阪神JFを1着したけれど、前哨戦のチューリップ賞を1人気で3着に敗れていた(桜花賞は6着)。
しかし、ハープスターは阪神JFでは2着に敗れたけれど、前哨戦のチューリップ賞は1人気で1着した。
ワールドエースは、きさらぎ賞、若葉Sと1人気で1着していたけれど、肝心の皐月賞では1人気になれず、2人気だった(皐月賞は2着。1人気はグランデッツァ)。で、2着。
しかし、トゥザワールドは前哨戦の弥生賞を1人気で1着した。

2年前の2頭よりどうみても順調に強さを誇示しているのが今年のハープスターとトゥザワールドと川田騎手に見える。
思えば、川田騎手は暮れの2歳G1でも連続して1人気だった。
阪神JF ハープスター 1人気2着
朝日杯F アトム 1人気5着

ダブルで1人気を裏切った。
だから余計にチューリップ賞、弥生賞での連日の1人気に注目した。
どちらも単1倍台。
レース前コメントは「ふつうに乗れば勝てる」だった。

で、ふつうに乗って(?)どちらも勝った。馬というよりも川田騎手にとっての(1人気で勝つための)トライアルだったようにも思えるくらいだ。

桜花賞のハープスターの1人気は確実で、皐月賞のトゥザワールドも1人気に一番近い存在だろう。
はたして、川田騎手は春のクラシック全部取りはできるのか?

たとえば、

チューリップ賞を1,2人気で1着した馬が桜花賞でも1人気になったら連対率は激高だ。
→ハープスターはチューリップ賞1人気1着で、桜花賞1人気確定的。

桜花賞は、馬体重450以上がベスト、430以上がベター。430未満はヤベー。
→ハープスターは前走476キロ。450以上は確定的。

ディープインパクト産はデビューして3年で、桜花賞3連勝中。
→ハープスターは登録ただ1頭のディープインパクト産。

他にも強い要素はたくさんあるのだろうけど、それは多くの有識者のみなさんの書かれているとおりだ。
だからこそ単勝も1倍台になるのだろう(ここは想定)。

今までどおり、っていうかチューリップ賞のように「ふつう」に大外からぶっこ抜くんじゃないか?

ブエナビスタがそうであったように、ふつうに最後方から大外を回って、勝つのではないか?

最後方から大外を回って勝つことが「ふつう」とはまったく思えないけれど、なんだかそれが「ふつう」に思えてくるから不思議だ。それがマツパク・マジックか。マツパク・パワーか。
とはいえ、松田博師の言う「ふつう」が、最後方を差してるとも自分にはとても思えない。後方系は後方系だろうけれど、「力が違うんだから不利を受けないように回ってくれば勝てますよ」という意味ではないだろうか。

それが結果的に後方から大外を回して差し切るという解釈になっているのではないか?
だから外枠に入ったら、最後方とかではなく真ん中より後ろを外から追走する気がしてならない。
で、そうなったらどうなるか?

もうこうなったらお手上げだ。
ギブ。完全にギブ。

怖いのはスローの前残り系の競馬ではなく、むしろミドルの縦長系競馬かもしれない。
でも外枠なら流れを見ながら、ポジションを微調整できる。
「桜花賞は前半が35秒台だと先行馬が勝ち、35秒を切ると差し馬が勝つ。」
そういう傾向だとしても、外枠ならばそれをも弾き返す競馬をするようにも思える。

というわけで、半分お手上げ状態のまま、ハープスターの取りこぼすパターンを考えてみる。

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外枠ならお手上げ、内枠なら……!?
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ハープスターがもし内枠に入ったら、他馬でも抵抗できそうに思える。

理由は、内枠だと「ふつう」に乗るためには一旦後方に下げて(場合によっては最後方まで)、外にいつでも持ち出せるようにすると思うからだ。
つまり内枠の方が最後方率は高いはず。
もし取りこぼしがあるとしたら、そこではないか?

どんなにハープスターが強くても、最後方からの競馬にはいつだってリスクがつきまとう。
過去10年で4角16番手より後ろから差し切った馬はブエナビスタとマルセリーナしかいない。
どちらも松田博厩舎で、安藤勝騎手が騎乗した馬だ。

ブエナビスタは大外、マルセリーナは中から差した。
マルセリーナの時は1人気ホエールキャプチャが出遅れて、マルセリーナと同じように最後方系でレースを進めて、大外を突いた。それで2着だった。
4角回るまでは2頭は同じような位置にいたのに、直線で中を突いたマルセリーナが大外のホエールに勝った。

ハープスターの実力が抜けてそうなことは大外から差して、2着馬に0.4秒差をつけたチューリップ賞を見ればよくわかるけれど、そのレースに出走しなかったレッドリヴェールやフォーエバーモアやベルカントにも同じように差をつけて勝てるかはわからない。実際、阪神JFではレッドリヴェールやフォーエバーモアとはタイム差なしの競馬だった。

とにかく、内枠であればあるほど最後方にハープスターがいる可能性は高まると思いたいわけだ。
そして、「ふつう」に大外をぶん回す競馬をする(はずと決めつけたいわけだ)。

自分のような者でもそんな見立てができるのだから、ハープスターを負かしてやろうと考えているプロの陣営にはたやすい想定だろう。

去年の天皇賞春のときに、
「ゴールドシップの戦法は最後方からマクる競馬とわかりきっている。そんな手の内を見せ切っている相手に対して、だ〜れも策を練らないというのか?」的なことを書いた。

あの頃のゴールドシップは菊花賞・有馬記念・阪神大賞典と最後方からの大マクリというレースで3連勝していた。天皇賞春でその戦法を変える理由はなかった。だからこそ策を練りやすいのではないかと思ったわけだ。
実際、何人かの騎手が策を練ったように思える。
で、結果的に一番はまったのはフェノーメノ蛯名騎手のやや先行からの早め仕掛けだった。

今回のハープスターもすでに「ふつう」を宣言している(雨予報が出ているようだけど、ここでは雨はまだ考慮しない。雨の直撃具合がまだ見えないからだ)。
だからこちらもふつうに思う。

戦法がだいたい見える相手に対して、だ〜れも策を練らないというのか?
そんなこたぁ〜ないでしょ。

ねぇ〜蛯名氏、ねぇ〜戸崎氏、ねぇ〜武豊氏、ねぇ〜和田氏〜〜〜。

っていうか、阪神JFでハープスターと勝ち負けを演じたレッドリヴェール、フォーエバーモアにとっては、大外を回してくれた方がむしろありがたいと思っていないだろうか。

阪神JFにしても大外を回していたら、フォーエバーモアにも負けていたのではないかと自分は思っている。川田騎手も大外では間に合わないと思って、中を突いたと思ったくらいだ。
松田博師も、勝ち負けよりも勢いをつけて外を回さなかったことについて納得がいかんと語っていた。中途半端だったと。つまり外を回して負けたのなら納得がいったということだ。外を回してたら、ふつうに勝てたとは阪神JFでは語っていない。

つまり、4角回ったときにハープスターよりどのくらい前にいれば、ギリギリ凌げるかが阪神JFより計算しやすくなってるようにも思えるのだ。少なくとも阪神JFでタイム差なしの接戦を演じた2頭(レッドリヴェール・フォーエバーモア)の陣営は、他陣営よりもハープスターお手上げとは思っていないはずで、リアルに計算できるだろう。

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桜花賞注目馬
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ハープスターが7枠8枠に入ったら、ギブ。
ハープスターが1枠〜3枠に入ったら、ネバーギブ。
ハープスターが4〜6枠に入ったら、保留。4枠で赤保留。5枠で緑保留。6枠で青保留。もちろん外ほどギブ率は高い。

ハープスターが1枠〜3枠に入ったら、
フォーエバーモア蛯名の策に注目している。

フォーエバーモアは馬体重・前走460キロで、おそらく桜花賞ベストの450以上で出走しそう。
前走のクイーンCを1人気で2番手から1着した競馬は、仮想・ハープスターを想定したようにも思えた。

アパパネで勝ったときのような3-5-4の位置で競馬をするメドは、阪神JFを6-6-5で3着した競馬で立っていたかもしれないけれど、クイーンCでの競馬でより強固になったかもしれない。
ちなみにクイーンCを先行して勝った馬は桜花賞でも頑張りやすい。

以下は、この10年の蛯名騎手の桜花賞の位置取りと成績
アズマサンダース  4-5-6  7人気2着
ピンクカメオ    7-10   8人気14着
エフティマイア   6-6   15人気2着
アパパネ      5-4   1人気1着
スピードリッパー  7-5   10人気10着

アパパネに限らず、ほぼだいたい先行させている。それで成績1-2-0-3。
だから今回も先行すると安心して、想定できる。

正直、フォーエバーモアはレースセンスがありそうだから、単勝というより馬券圏内で安心系の馬にも思えなくもない。
桜花賞もオークスも連続で2着したりなんかして、定番の「同じ世代に◯◯◯さえいなければ…」的なフレーズが踊りそうな気もする。
(ブエナビスタに対するレッドディザイアやオルフェーヴルに対するウインバリアシオンや、ジェンティルドンナに対するヴィルシーナ等で使われた常套句)

けれど、まだわからない。今年に限ってはまだわからない。3番人気ならば1着の期待もしてみたい。

レッドリヴェールの間隔をあけた出走ぶりは現代競馬の先端を走っていそうで、怖い。
けれど前走馬体重418キロで、今回も430キロ未満になりそうで、そこは心配だ。実際、そういう馬は3歳になると苦戦傾向にあり。2番人気ならば、フォーエバーモアから買ってみたい。

桜花賞ヒモ注目馬
(ハープスターがどの枠に入ろうが注目するヒモ。勝ちに行く策ではなく、いい線狙う競馬で、結果的に馬券圏内に入ったらおいしそうと思っている馬)
アドマイヤビジン・ヘタしたらハープスターより後ろにいるかもしれない。でもそれがいい方向に出る可能性もないとは言えない。自分の想定以上に多くの騎手たちが早めに抜け出す競馬をして、早めの仕掛け合戦が巻き起こったら、ひょっこり顔を出すかもしれない。前走馬体重478は登録馬で一番デカイ。

ホウライアキコ・Fレビューで大勝負と思っていたけれど、そうでもなかった。今回はだいぶ人気を落としそう(予想8人気)。このくらいの人気の馬で、前に行って、残す競馬が和田は上手い。早熟説や阪神1600心配説が幅を利かせるならば、まだ買える。少なくとも桜花賞まではまだ買える。

ブランネージュ・抽選組。人気もぜんぜんなさそうだし、重馬場ならば3着で拾いたい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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