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「必要以上」に考慮するとキズナを心配してもいいということになりました。

  • 2014年05月01日(木) 12時00分


今年の天皇賞春の注目はなんてったってキズナか。
それは予想オッズで1人気キズナを確認するまでもなくあきらかだ。

ただ馬券的にはどうだろう。結局、キズナから買うにしても相手を絞らないと上手くいかないのは必至。WIN5なら別だけど、レース単体で見るならば、キズナ以外の馬を上手く抽出したいところだ。
しかし、天皇賞春はみなさんご存知のように1人気が頼りにならないレースでもある。はたして、キズナを心配する必要はないのだろうか。

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天皇賞春の傾向や伝統をおさらいしてみると……
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■天皇賞・春は馬体重プラス2キロまでの馬が超圧倒的に走る。

馬券圏内で見ると、過去10年で30頭中29頭が前走からプラス2キロ以内。
マイナス馬 19頭
プラマイ0馬 4頭
プラス馬 7頭→プラス2キロ・6頭、プラス6キロ・1頭(リンカーン2着)
マイナス・プラマイ0・プラス2キロまでの馬で馬券圏内率.966。圧倒的。

(菊花賞はプラスの馬が健闘しており、過去10年で+4キロ以上の圏内ホースは天皇賞1頭、菊花賞12頭。これが古馬3200のG1特有の厳しさや伝統なのかもしれない。)

しかも過去20年までさかのぼっても、全く変わらない。
全60頭中、58頭が前走からプラス2キロ以内。
マイナス馬 40頭
プラマイ0馬 8頭
プラス馬  12頭→+2キロ10頭 +2キロ以上2頭(前述のリンカーンと408から+10で2着したステイゴールドのみ。)

+2キロまでに占める割合は.966。
過去10年でも、過去20年でも.966。もはや超圧倒的。
ゆえにこれはもはや伝統か。

去年(2013年)は
1着 +2 フェノーメノ
2着 0 トーセンラー
3着 おそらくマイナス(482・JC494・香港V494) レッドカドー

プラス4以上の馬たち
アドマイヤラクティ +6 4着(4人気)
カポーティスター +8  15着(9人気)
ムスカテール   +6  16着(7人気)
コパノジングー  +4  17着(18人気)

プラス4以上の馬はやっぱり圏外で下げられる。

■1番人気を安易に信用してはいけない。特に2連レベルでは信用できない。

この10年で(1-0-2-7)だった。
去年のゴールドシップは信用できるだろうと思ったら、5着。
この11年で(1-0-2-8)になった。
ちなみに1着はディープインパクト。
来ないわけではない。だからこれは傾向。

■時計が速い決着のときは4角2番手以内にいないと勝てない。

基本的には天皇賞春は4角8番手以内が勝つために必要な位置取りだけど、時計が速くなるともっと先行してないと勝てない傾向にある。
基準時計は3:14:3。

これより速いときは4角2番手以内にいないと勝てない。つまり4角回ったときに先頭か2番手の競馬ということになる。
3:13:4で走ったディープインパクトも4角先頭だった。
3:14:3より速い決着は過去10年で4回。けっこうある。
今年の天皇賞春は高速の可能性大で、そうなるとどんな位置で競馬をするかも無視できない。
少なくとも前日の芝の時計は要チェックか。

以上の伝統と傾向を加味すると、
1人気 キズナ
にも心配事があるのがわかる。

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キズナの心配事
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キズナは1人気が心配だけど、ディープインパクト産は、ときに傾向や伝統をぶっ壊していくパワーを持っているから、そこは心配ではない。心配は時計が速くなったときの位置取りだ。

勝利数は全盛期より減っているとはいえ、インサイドワークは一流の武豊騎手のことだから、勝つためのポジショニングは全部わかっているはず。

実際、ディープインパクトで勝った天皇賞春が16-14-4-1だった。ディープが4角先頭競馬で走ったのは後にも先にもこのレースだけだ。だから先週の馬場の傾向や今週土曜日の馬場の傾向から時計が速くなりそうと察知すれば、4角先頭も辞さない競馬をする可能性はある。

ただし、ディープインパクトでも前走の阪神大賞典で6-6-4-2で4角2番手の競馬を経験させていた。しかし、キズナの前走は大阪杯をじっと我慢の8-8-8-8競馬で、直線で弾けさせる競馬だった。

もしかしたら、4角先頭系の競馬はできるけれど、したくない可能性もある。
理由はあくまでも目標は凱旋門賞だと感じるからだ。去年の凱旋門は早めに抜け出したトレブが圧勝したけれど、トレブの競馬は決して凱旋門賞の理想的勝ち方ではないはず。ペースも遅くなりがちな凱旋門賞に勝つには我慢に我慢を重ねるのも大事なはずで、早めの先頭系競馬は覚えさせたくない? とも思えてしまう。っていうか、オルフェーヴルの闘いを見てても、凱旋門賞で勝ち負けするのに天皇賞春の1着は必要なのだろうか? とも思えてしまう。

ゆえに、ディープインパクトの天皇賞春みたいな競馬はしないような気もする。もし本気で天皇賞春をガチで狙っているのなら、大阪杯であのような我慢の競馬をするとは思えない。あの競馬はたとえ勝てなくても、次へ、いや次の次へ、いやいや次の次の次へ、つまり凱旋門賞に勝つために逆算した競馬にも思えるからだ。

ダービーだって、勝ちに行く位置取りではなかった。負けていたら、何だってあんな後ろにと言われかねない競馬だった。それでも勝ってしまった。だからキズナは相当強い。武豊騎手が想定している以上に強いのかもしれない。
けれど、相当強いからこそ、今回も同じように後ろで我慢させる競馬をしてくるとも言える。すべては凱旋門賞を勝つために……。

ゆえにほんのちょっと心配。心配事を打ち破る強さがキズナにはあるのだろうけど、過去のレース傾向とキズナの過去の勝ち方とその先の目標を「必要以上に」考慮すると、心配してもいいという結論に達した。達してしまった。あくまでも高速馬場という条件ではあるけれど。

高速馬場を4角8番手くらいの競馬をして、それでも勝てるか?
勝てたら凱旋門賞でも勝てる。天皇賞春はそのためのスパーリングだ。
そんな感じでチーム・キズナが臨んでいたら……臨んでいないかなぁ?
考えすぎかな?

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例年通りならば、2〜4人気から軸を選ぶのが正解のはず…………………だが…
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天皇賞春は2〜4人気が1頭絡みやすい傾向がある。

予想では
2人気ウインバリアシオン
3人気ゴールドシップ
4人気フェノーメノ

ウインバリアシオンの騎手変更は、1着レベルでは心配だ。岩田がチューンしてきた3角から動いて4角で先頭集団に取り付けて、差す競馬は天皇賞春で集大成、大団円のつもりではなかったのか? そう思うと岩田騎手が乗れないのはイタい。っていうか残念だ。教えてきた競馬をキッチリここでもやれたのなら、今回は頭でも狙えたのではないかと思うからだ。

ただし3着以内ならば、話は別だ。シュタルケは前につけて、きっちり力を引き出すような競馬をしそうだし、武幸騎手ならばきっと3人気に落ちて、むしろ美味しい存在になるかもしれないからだ。ただし、どちらの騎手になっても勝ちきれない感は漂う。先行して2着か3着か4着、差して2着か3着か4着に思える。でもそれって、ウインバリアシオンが元々持ってるキャラクターでもある。

ウインバリアシオンで心配なのは、騎手よりも前走の馬体重だ。526キロ・マイナス8キロ。
もしかしたら,今回プラス2キロ以上で出走してくる可能性もある。
長期休養前のベスト体重は510キロ台だったと思うから、ここでもマイナスが望ましいけれど、もしかしたら530キロ台で出走してくるかもしれない(プラス4キロ以上)。
馬体重がマイナスで、騎手交替で人気が少しでも下がるようならば、馬券圏内で一番アツい馬にも思える。それゆえに自分は騎手よりも馬体重と人気に興味津々だ。

休み明けの馬体重で言えば、フェノーメノはもっと心配だ。
前走日経賞はマイナス8キロで488キロだった。これはデビュー以来最低の馬体重で、今回は馬体を戻すのと輸送を加味しすぎて、プラス4以上になってしまう可能性もある。
本来のレースっぷりは一番安定していて、ふつうに4角2番手以内の競馬もできそうで、脚質は一番頼もしい。実際、去年勝っている。それゆえに前走日経賞のマイナス8キロで5着の成績は心配だ。

日経賞 3-3-3-3 5着
フェノーメノは差されたことはあるけれど、4角の位置より低い着順で負けたことはなかった。最低でも4角の位置と同じ着順に踏ん張るタイプなのに、内からラストインパクトに差されたレースっぷりは、休み明けとはいえ、らしくない走りにも思えた。

いくらフェノーメノが脚質的に安定しているとはいえ、ステイゴールド産だ。2年前のこの時期のオルフェーヴルや去年のゴールドシップのように上手く噛み合ないモードに入ってる可能性もないとは言えない。

一方、ゴールドシップは臨戦だけ見たら、ぜんぜん心配じゃない。
前走をプラス10キロ(508)で、番手追走で楽勝した。
今回、マイナスで出走してくることはだいたい間違いなく、こと臨戦だけで見たらひじょうに頼もしい。

騎手が岩田からウィリアムズに替わるけれど、ムーアで3着、岩田で1着ならそれほど心配する必要もなさそう。むしろ、よくぞムーア・岩田・ウィリアムズと名手級を揃えられたと思うくらいだ。

しかし、ゴールドシップは巷では京都の高速馬場はダメと言われている。実際、去年の天皇賞春でも1人気で5着に敗れた。京都大賞典でも5着に敗れた。っていうよりもこの1年で馬券になったのは阪神大賞典2勝、中山・有馬記念3着しかない。京都、東京では馬券圏外だ。有馬にしたって、着差1.5秒負けはジャパンカップの1.4秒より差が開いている。もしかしたら今は阪神競馬場以外では走りたくないモードに突入しているのかもしれない。

2人気〜4人気から1頭、頼もしい馬を探そうと思ったら、
心配な材料ばかりが出て来てしまった。
頼もしいはずの馬が1頭はいるはずなのにどうしたことか?

いや、今年の1〜4人気は頼もしくない馬たちではない。
基本的にはみんな頼もしい面々だ。
ただ今週の馬場や馬体重や人気を確認しないと安心できない部分がある。
だから今は絞り込めない。それだけだ。

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天皇賞春・注目馬
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※1人気キズナ、2〜4人気の馬たちを考慮した上での注目馬。
※当日馬体重プラス2キロ以下であることを前提。

デスペラード
ラストインパクト
アドマイヤラクティ
レッドカドー

バンデが出走しなかったら、逃げたい馬がいなくなる。最近よくあるスタートが良すぎて、逃げざるをえない状況が生まれるかもしれない。2走前にルメールで逃げたサトノノブレスが今回もみんなを代表して逃げるかもしれないけれど、積極的に逃げたいわけではないだろう。

デスペラードとラストインパクトは途中から先頭に立つ奇襲を狙っていないか?
そのための感触を横山典は京都記念での逃げで、川田は小倉大賞典での向こう正面先頭競馬で掴んでいるようにも思えるからだ。

「武豊が人気の差し馬に騎乗するときは、横山典が先行系で何かを仕掛ける」

ちょっと前までよく見かけた光景だ。

たとえば、天皇賞春。
04年 
武豊 1人気リンカーン 8-8-8-10 13着
横山典10人気イングランディーレ 1-1-1-1 1着

06年
武豊 1人気ディープインパクト 16-14-4-1 1着
横山典2人気リンカーン 5-5-4-2 2着

08年
武豊 2人気メイショウサムソン 9-9-6-3 2着
横山典6人気ホクトスルタン 1-1-1-1 4着

ちなみにディープインパクトの2着が一番多かったのも横山典だった。
(3回。アドマイヤジャパン2回、リンカーン1回。すべて先行。)

もし横山典がキズナをほんまもんと認めているならば、キズナの脚質を考えるとここでは先行するはず。
そこには再度の逃げ、もしくはちょっと早めの先頭競馬もないとは言えない。っていうか、そういう競馬を見せてほしい。
それを若きリーディングの川田も狙っていたとしたら、それはそれでスリリングで見ものだ。横山典VS川田の別次元の仕掛け合戦。だから取りあえず二人には先行系で競馬をして欲しいと願っている。

アドマイヤラクティはこの1年で、ゴールドシップと5回走って、3回先着し、2回負けた。
先着した競馬場は京都で2回、東京で1回。
負けた競馬場は中山1回、阪神1回。

なんだかわかりやすい。アドマイヤラクティは去年4着だった(プラス6キロ)。
あの頃より力をつけていれば、そしてプラス2キロまでなら、3着があっても不思議じゃない。

レッドカドーは京都を熟知したダンロップ厩舎の馬で、8歳といえどもセン馬だしスルーできない。スノーフェアリーできっちり連覇したのだから、レッドカドーできっちり3着しても驚けない。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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