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古豪ワンダーアキュートが好位から抜け出しGI・2勝目!/帝王賞・大井

  • 2014年06月26日(木) 18時00分
DG

(撮影:高橋正和)



◆明確な逃げ馬不在のダート中距離GI路線

 まずは残念だったことが2つ。ひとつは、船橋のサミットストーンが挫石のため回避となったこと。今年から前哨戦の大井記念が同じ2000mに距離短縮され、サミットストーンは、そこを2着のキスミープリンスに5馬身差をつける楽勝。2分4秒6という勝ちタイムも、そのまま中央一線級との対戦でも通用するようなもの。金沢から船橋に来てさらに充実を見せ、今回出走予定だった地方勢では中央勢と互角に戦える可能性がもっとも高い馬だっただけに、この大目標に出走できなかったのはなんとも残念だった。

 もうひとつは、やはりオオエライジンの最後の直線での競走中止。左前球節部完全脱臼という診断で、残念ながら予後不良となった。オオエライジンについては、本サイト金曜日公開の『地方競馬に吠える』のコラムで触れたい。

 人気は実績がくっきりと反映された。1番人気はGI(JpnIも含む、以下同)2連勝中のコパノリッキーで、GI馬3頭が単勝5倍以下。ほか中央3頭が二桁台の単勝オッズで、地方馬はオオエライジンの119.0倍がもっとも人気でいずれも万馬券というもの。おそらくサミットストーンが出ていれば、GI勝ちのない中央3頭とは同じくらいの評価になったはずで、馬券的にも妙味はあったと思われる。

 結果もほぼその評価どおり。GI馬のワンツーで、中央馬が上位6着まで独占。地方最先着の7着ゴールドバシリスクには6馬身という差がついた。

 ダッシュよく飛び出したのはワンダーアキュートだったが、先頭に立ったのは2番枠のニホンピロアワーズで、ピタリと2番手は7番枠のコパノリッキー。10番枠のワンダーアキュートは3番手に控えた。

 少し前なら、スマートファルコン、トランセンド、エスポワールシチー、フリオーソら、確実にレースを引っ張る有力馬がいたのだが、それらが引退して以降は、ダート中距離GI路線の有力馬で、積極的にハナを主張する馬が不在となり、枠順次第で先頭立つ(立たされる)馬が決まるようになった。今回の中央馬でも、シビルウォーとムスカテールは常に中団よりうしろからというタイプで、ソリタリーキングこそ控えたものの、結局GI馬3頭が内枠から順にという隊列。遡って、かしわ記念でも、1番枠のアドマイヤロイヤルは控えるタイプで、コパノリッキーは出遅れ。2番のセイクリムズンが押し出されるように先頭に立って、4番ゴールスキー、7番ワンダーアキュートと続いた。川崎記念はトウショウフリーク、東京大賞典はサトノプリンシパルという、やや格下の何が何でもという明確な逃げ馬がいたが、JBCクラシック(金沢)は、それまで一度も逃げたことがなかったホッコータルマエが1番枠に入ったことで逃げる展開だった。

 それでどうなるかといえば、スタートして隊列がすぐに決まることで、ペースは落ち着いたものになる。普通ならスタートして最も勢いがつく2F目のラップが今回は11秒9で、800m通過が50秒1、前半1000mが62秒3というもの。メンバーと馬場状態を考えればスローペース。これで折り合いに苦労したのが、この距離は初めてとなるコパノリッキーで、向正面に入ったあたりから田辺騎手は抑えるのに必死にな様子。向正面の半ば過ぎでは無理に抑えず先頭に立った。「最初は追いかける形で、途中からはつつかれて厳しかった」と田辺騎手。対してワンダーアキュートは折り合いにも問題なく、好スタートから控えて道中で脚を溜めることができた。

 直線を向いて、GI馬3頭が横一線に並んでの追い比べ。最初に脱落して4着だったニホンピロアワーズは、「前走(アンタレスS3着)は目に見えない疲れがあったのかもしれない」(大橋調教師)と専門紙などで伝えられていたとおり。今年前半の大目標をここと定めていたわりには、万全の態勢とまではいかなかったようだ。

 残り200mから、ワンダーアキュートがコパノリッキーをじりじりと離しにかかり、最後は2馬身差。繰り返しになるが、脚を溜められたワンダーアキュートに対して、コパノリッキーは折り合いに苦労した、その差だろう。ただ、レースの上がり3Fが36秒0で、コパノリッキー自身は36秒4。残り600m〜400m〜200mのラップ、12秒4、11秒5は、先頭だったコパノリッキー自身が出したもので、最後の200mは推定で12秒5だから、コパノリッキーも決してバテてしまっているわけではない。

 それにしても8歳になってのワンダーアキュートの安定ぶりはたいしたもの。2011年の5歳以降、ここまで24戦して3着を外したのはわずか4戦のみ。武豊騎手のコメントにもあったとおり、「どこの競馬場でも、どういう状況でも、どんな馬場状態でも、きっちり走ってくれる」のがこの馬の強さ。輸送も問題にせず、ときに馬体重の変動はあるのだが500〜520kg程度の範囲なら問題ないようだ。

 コパノリッキーにとって今後課題となるのは、レース前から心配されていた折り合い面。中央の舞台なら、すでにフェブラリーSを勝っていることもあり、秋に衣替えとなった中京・チャンピオンズCも、距離的にはこれまでのジャパンCダートと同じ1800mで、おそらく折り合いを欠くような緩い流れにはならないはず。中央のダートチャンピオンに一番近い存在であることは間違いない。ただ地方の秋のGIは、南部杯こそ1600mだが、その後はJBCクラシック(今年は盛岡)、東京大賞典と2000mが舞台。中央・地方を通じたダートチャンピオンになろうと思えば、やはり2000mでも勝てるような競馬をすることが必要だ。

 最後に余談。この日は門別競馬場でもナイター開催だったが、この季節特有の濃霧で残念ながら第6レース以降が取止めとなった。霧の中でもギリギリ行われた第4レース、JRA認定フレッシュチャレンジを勝ったミトノレオという馬は、父が今年の新種牡馬ワンダースピード。ワンダーアキュートには、兄の産駒初勝利の勢いが届いたのかもしれない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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