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アドバンテージを活かし重賞2勝目を挙げたナイスミーチュー/マーキュリーカップ

  • 2014年07月22日(火) 18時00分
マーキュリーカップ

55キロは大きなアドバンテージだったナイスミーチュー(撮影:武田明彦)



55キロは大きなアドバンテージだったナイスミーチュー

 予想でも触れたとおり、地元期待のナムラタイタンが夏負けの症状が見られたとして回避。そして地方の期待を背負うことになったのが船橋のサミットストーンで、帝王賞に出走する予定が直前で挫跖のため回避となり、ここに回ってきたという。あらためて、競馬は人間の思いどおりにはいかないものだ。

 人気は、近年地方で行われるダートグレードではしばしばお目にかかる極端なもので、中央勢とサミットストーンの6頭が単勝一桁台のオッズで、それ以外は万馬券というもの。

 そして単勝一桁台の6頭のうちの5頭が掲示板を占めたものの、1、2番人気馬は馬券圏外という波乱の結果となった。

 最内枠に入った地元のコミュニティが逃げたのは想定の範囲内。しかし2番手は互いに出方をうかがって譲り合い、たまらずという感じで外から一気に進出していったのが、クリソライトだった。

 ここで自分の恥と反省をさらしておく。当日はグリーンチャンネル・地方競馬中継の解説をしていて、レース直後、確定前の振り返りで「スローペースになって…」と言ってしまった。そう思ったのは、あまり前に行くことがないクリソライトが抑えきれないような手ごたえで掛かり気味に先頭に並びかけて行ったことと、普段は後方からレースを進めるナイスミーチューが、早めにそのクリソライトのうしろまで進出したからだ。ところが確定が出て、タイムを見てびっくり。一昨年のシビルウォーの記録を更新する、2分1秒9というコースレコードでの決着。放送が終わって地元のトラックマンに電話で聞いたのだが、たしかに良馬場のわりにタイムが出ていたということはあったが、前半1000メートルの通過は1分を切っていたという。

 掛かったように馬自身から行きたがったクリソライトはよほど調子がよかったのだろう。前走、1番人気に支持された大沼Sでの大敗と、59キロを背負うことで人気を落としていた(単勝7.7倍の3番人気)が、前々走のブリリアントSでは直線脚を伸ばして勝ち馬から0秒3差の4着は、やはり復調と見てよかった。

 そして直線先頭に立っていたクリソライトをゴール前でとらえたのがナイスミーチューで、やや離れはしたが3着に入ったのがシビルウォー。クリソライトが演出することになった緩みのない厳しいペースは、瞬発力勝負ではない、長く脚を使ってこそ力を発揮するこの2頭に味方した。

 1番人気に支持されたソリタリーキングは、中団からの追走で、4コーナーでは前を射程圏に入れる位置まで迫ったが、直線では見せ場をつくれず。帝王賞ではGI/JpnI馬上位独占の一角を崩したが、逆にその反動があったのかどうか。とにかく実力は出し切っていない。

 勝ったナイスミーチューにとっては、他の中央馬が58キロ、59キロを背負っていたのに対して、55キロは大きなアドバンテージだった。

 近年、ダートグレードでの中央勢と地方勢の実力差はいかんともしがたく、JpnIIIでは極端な別定重量やハンデを設定するレースも少なくない。このマーキュリーCの負担重量は次のとおり。

4歳以上54kg(牝馬2kg減)、GI/JpnI、GII/JpnII、GIII/JpnIIIの1着馬は、それぞれ5kg、3kg、1kg増(2歳時の成績は除く)
加えて、G/Jpn通算3勝以上1kg増、さらに2勝ごとに1kg増となり、上限は60kg

 というもの。余談にはなるが、3歳馬の基礎重量は50kgで、高知のクロスオーバーは牝馬ゆえ48kgでの出走。地方の交流JpnIIIでは、ハンデ戦でも下限を51kgや52kgに設定しているレースがほとんど(騎乗可能な騎手が限られてしまうため)で、48kgという斤量は久しぶりに見たような気がする。それにしても畑中信司騎手はそれほど体が小さいという認識はないのだが、よく48kgに乗れたものと思う。

 さて、勝ったナイスミーチューだが、これまでの重賞タイトルは2年前のGIIIシリウスSのみ。ゆえに今回55kgでの出走となった。地方のダートグレードでは、重賞1勝程度では中央の限られた出走枠に入れないことがしばしばだが、それでもこうした極端な負担重量の交流重賞にたまたま滑り込むことができれば、斤量に恵まれてチャンスが広がることになる。たとえば今年3月の名古屋大賞典で8歳のダノンカモンが重賞初制覇となったのも、他の中央馬が57、58kgだったのに対して、ダノンカモンは54kgだった。

 あらためて結果を見ると、8着のランフォルセまでは勝ち馬から1秒1差で、内訳は中央5頭に南関東(いずれも船橋)3頭。そこから大差がついて、地元岩手4頭に高知の1頭。極端とも思える負担重量の設定があれば、南関東の上位クラスなら中央の一線級と互角か互角に近い勝負になるが、南関東以外の地区では、たとえば今回は残念ながら回避となってしまったが、ナムラタイタンのような中央オープンからの転入馬でもいない限り、4〜5kg程度の斤量の差では容易には実力差は埋まらないというのが現実だ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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