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クローバー賞とJB札幌予選

  • 2014年08月13日(水) 18時00分
クローバー賞を制したトーセンラーク

クローバー賞を制したトーセンラーク関係者



クローバー賞とジョッキーベイビーズ札幌予選が行われた札幌競馬場

 9日(土)、リニューアルオープンした札幌競馬場に初めて行ってきた。スタンドやパドックなどが新しく生まれ変わり、どこか違う競馬場に足を踏み入れたような樹がした。

 パドックから本馬場に通じる馬道の造りなどが、函館競馬場とよく似ている。場内をくまなく歩き回ったわけではないが、観客スペースも以前の古いスタンドだった頃と比較すると、かなり機能的にできている印象だ。7月26日にオープンして以来、連日かなりの混雑とのことで、いかに多くの人々がこのリニューアルオープンを待望していたのかが分かる。

 胆振、日高の生産者や育成関係者にとっても、中央競馬で最も近い場所にあるのはこの札幌競馬場だ。夏の時期しか開催されない分、生産馬や手がけた育成馬などが出走する時には、現地応援に出かける人が少なくない。それを受けて、札幌開催では、本来重賞レースに限られていた生産者表彰を特別レースにも拡大しており、日高・胆振、十勝の各軽種馬農協からは、組合便りやFAXなどで告知されている。そんなわけで、この日も背広に身を包んだ日高の生産者を数多く見かけた。

 考えてみれば、馬主や調教師、騎手、厩務員の他に生産者用のお立ち台を一つ増やし、簡単な記念品を用意すれば住むだけのことでいくらも手間のかからないことである。なぜ、これまでこうした措置が取られなかったのかということの方が不思議に思う。

 朝からよく晴れたこの日は絶好の競馬日和で、多くの観客がスタンドを埋めていた。コースに沿った芝生にも敷物を広げて観戦するファンの姿が数多く見られた。

 特別指定交流競走の「クローバー賞」(2歳オープン)が準メインに組まれていた。ホッカイドウ競馬の所属馬6頭も参戦し、13頭立て。道営馬の場合は、JRA認定競走をまず勝ち上がり、函館か札幌の特指競走に遠征するのが大きな目標となる。

 1番人気はトーセンラーク。JRAブリーズアップセール出身馬で、前走の函館2歳Sでは後半よく追いこみ4着と健闘していた。スルターナ、ノットフォーマルと人気が続いており、やや人気が割れている。

 このレースの歴代の勝ち馬にはアドマイヤムーン、サンディエゴシチーなどがおり、道営馬もヤマノブリザード、モエレフェニックスなど数頭が過去に制している。今回、道営馬はオヤコダカの6番人気が最高で、上位は中央馬が占めた。

 レースは終始2番手を進んだ1番人気のトーセンラークが直線に向いたところで馬群から抜け出し、ノットフォーマルに2分の1馬身差をつけて優勝。3着にはウインバローラスが入った。

クローバー賞を制したトーセンラーク

クローバー賞を制したトーセンラーク



 道営馬は7着(ネガティヴ、服部茂騎手、角川厩舎)が最高であった。上位のほとんどをJRA馬が独占し、道営馬は下位に固まる結果となった。

 勝ったトーセンラークは父アルデバランII、母タケイチゼットの牝栗毛で、吉田隼人騎手が騎乗。馬主は島川隆哉氏。美浦・菅原厩舎所属。浦河・中神牧場生産。

 表彰式では前述したように、生産者用のお立ち台が左端に用意され、生産者の中神哲重氏がその上に立って表彰を受けていた。

クローバー賞の表彰式

クローバー賞の表彰式



 トーセンラークは、JRAブリーズアップセールの公開調教時に一番時計をマークし、仕上がりの良さを評価されて2160万円で落札されていた。また、このレースの1分29秒5というタイムはアドマイヤムーンと同じく、イクスキューズの持つレースレコードにコンマ2秒の好タイムである。

 さて、12レースの桑園特別が終わった後に、第6回ジョッキーベイビーズの北海道札幌予選が行なわれた。これはニューアルオープンを記念して昨秋より計画されていたもので、来る10月12日の東京競馬場に向けて各地で実施される予選のひとつである。

 北海道はすでに7月26日に浦河でも予選が行なわれており、これが2つ目の枠となる。前日金曜日から札幌競馬場の乗馬センターに9人の出場希望者が集まり、部班やジムカーナなどで選抜された4人が晴れて札幌予選に出場する権利を得た。

 騎乗するポニーは東京・世田谷のJRA馬事公苑からはるばる運ばれてきており、抽選で騎乗馬を決める。芝コースの直線300Mで争われ、ゲートこそ使用しないものの、パドックを周回し、誘導馬に導かれての本馬場入りと、本物のレースに近い扱いである。

 出場選手は次の通り。
1.宮坂彰穂さん(中1) 札幌競馬場乗馬スポーツ少年団 クリヒメ騎乗
2.筒井龍伸くん(中1) 所属なし ホワイトソックス騎乗
3.大池駿和くん(小6)浦河ポニー乗馬スポーツ少年団 ゴッド騎乗
4.鎌田彩緒さん(中1)ライディングファーム・フセ ハショウボーイ騎乗

 宮坂さんは札幌市北区、筒井君は安平町、大池君は浦河町、鎌田さんは新ひだか町と、バラエティに富んだメンバー構成となった。大池駿和君は昨年の北海道代表で、今回は浦河での予選を捨ててここ一本に絞り参加した。二年連続の東京行きを狙っている。

岡部幸雄さんが現れ、選手たちを激励

岡部幸雄さんが現れ、選手たちを激励



 予定では最終レース終了後の4時35分頃に発走とのことだったが、やや進行が遅れた。パドックに岡部幸雄さんが現れ、選手たちを激励してくれた。岡部さんはジョッキーホベイビーズに理解のある方で、第1回目からほぼ毎回、レース前に応援にかけつける。

 4時40分を回った頃になり、ようやく騎乗した4人が誘導馬を先頭に馬場入りした。スタンドには最終レースが済んだ後も居残ってこの予選を見守る人々が数多くいる。

 ターフビジョンにレースが告知され、岡部幸雄さんがスターターを務めて45分にスタートが切られた。

 レースはまず大池駿和君が巧みにゴッド号を操り、抜け出した。筒井君と宮坂さんがそれに続く。やや離れた外側を進むのは鎌田さん。そのまま大池君が逃げ残るかと思われたが、後半になってから鎌田さんのハショウボーイが加速し、大池君に並ぶと、ゴール前で差し切って優勝した。見応えのあるレース内容であった。

鎌田さんのハショウボーイがゴール前で差し切って優勝

鎌田さんのハショウボーイがゴール前で差し切って優勝した



 大池駿和君はよく騎乗馬を追い、低い姿勢で技術の高いところを見せたが惜しくも届かず、2着に敗退。2年連続の代表とはならなかった。

 勝った鎌田彩緒さんは、インタビューで涙を流しながら「東京に行っても優勝したいです」と力強く語り、ウイナーズサークルを取り囲む多くの人々から拍手を受けていた。

インタビューで涙を流しながら「東京に行っても優勝したいです」と力強く語った鎌田彩緒さん

インタビューで涙を流しながら「東京に行っても優勝したいです」と力強く語った鎌田彩緒さん



 改めて、芝コースでの予選は素晴らしいと感じた。しかし、札幌予選は残念ながら今年限りのことらしく、何とも惜しいような気がする。

ゆるキャラと記念撮影する出場選手達

ゆるキャラと記念撮影する出場選手達



 なお、前述したように、東京競馬場での「第6回ジョッキーベイビーズ」は10月12日(日)、毎日王冠の火の最終レース終了後に行なわれる予定だ。これで北海道からは浦河の宮内勇樹君(小6)と今回の鎌田彩緒さんの2人が東京に行くことになった。本選会でも健闘を祈りたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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