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サマリーズが2番手から抜け出し、約1年8ヶ月ぶりの重賞制覇/クラスターカップ・盛岡

  • 2014年08月14日(木) 18時00分


◆重賞未勝利の中央馬が受けた斤量の恩恵

 最近ではあまりめずらしいことではないとはいえ、今回も中央5頭の単勝オッズが一桁台で、地方馬はすべて単勝万馬券という極端なものとなった。そして結果もそのとおり、地方馬はなんとか1頭が掲示板の端に載ったのみ。とはいえ中央の5頭だけで見ると、4、2、3、1、5番人気という順の決着で、やや波乱とも言える結果となった。

 なるほどと思ったのは、中央の中では最軽量、52kgの牝馬のワンツーで決着したこと。近年、地方で行われる交流のJpnIIIでは、極端な別定重量やハンデを設定するレースが目立ってきている。今回も、基本重量が3歳51kg、4歳以上54kgで、牝馬は2kg減。これに、GI、GII、GIII勝ち馬に、それぞれ5、3、1kgを加増(GにはJpnも含む、以下同)。加えてG競走通算3勝以上で1kg増、さらに2勝ごとに1kg増というグレード別定。ただし4歳以上牡馬は上限60kgとなっている。ゆえに、JBCスプリント勝ちがあってグレード3勝のタイセイレジェンドは上限の60kgが課せられた。反面、重賞未勝利のスイートジュエリー、2歳時にJpnIの全日本2歳優駿勝ちはあるものの、2歳時のタイトルはカウントされないサマリーズの牝馬2頭が軽量52kgでの出走となった。

 こうした極端な別定重量は、近年ではなかなか地方馬が中央馬に歯が立たないという状況を考慮してのものと思われる。地方で行われるダート交流重賞の場合、そうした極端な別定重量の設定でも、中央の重賞未勝利馬は限られた出走枠に入れることが少ないため、中央馬が極端に軽い斤量になることもあまりない。ただ今回は夏のこの時期であることに加え、同じような条件の佐賀・サマーチャンピオンとメンバーが分散したということもあった。そうしたいくつかの要因で重賞未勝利の中央馬が出走枠に滑りこむと、斤量的にかなりの恩恵を受けることになる。

 おそらく地方の立場としては、グレード実績のない地方馬のみを軽い斤量で出走させたいというのが本音だろう。タイトルや賞金ではなく、はっきりと実力で負担重量に差をつけるなら、翌週に行われる佐賀・サマーチャンピオンのようにハンデ戦にするしかない。とはいえ、そうした極端な別定重量やハンデを設定しても、地方馬はなかなか勝負にならないというのが現実だ。

 その恩恵を受けた1頭サマリーズは、スタートこそイマイチだったが、二の脚の違いですぐに先頭に立ち、しかし内から行く気を見せたタイセイレジェンドを先に行かせて2番手から。60kgのタイセイレジェンドが逃げたペースはそれほど厳しいものではなく、サマリーズは直線を向くまで手ごたえに余裕があっての抜け出しとなった。全日本2歳優駿以来、じつに1年8カ月ぶりの重賞勝ちで、目標は同じ盛岡での開催となるJBCスプリントとなるようだ。

 4番手あたりの好位を追走したスイートジュエリーは、直線でも伸びを見せたが、サマリーズをクビ差とらえられずの2着。今回はプラス17kgの515kgという、デビュー以来の最高体重ということは少なからず影響があっただろう。

 シルクフォーチュンは、例によって最後方を追走。ただ明らかに力の差があるこのメンバーでの最後方は、大外枠ということがあったにしても、後ろ過ぎはしなかったか。3〜4コーナーで外から位置取りを上げ、当然のようにメンバー中最速の34秒2という上がりで直線伸びたが、最後の100mは前の2頭と脚色が一緒になってしまった。タイセイレジェンドより4kg軽い56kgは恵まれた感じだが、先着された2頭はさらに4kg軽いというのは、決め手勝負のこの馬には厳しかった。ただそれ以前に、2012年12月のカペラS以来勝ち星がなく、よく追い込んでも最後届かずというレースが目立つだけに、ペースや展開に恵まれないと勝ち切るまではいかない、というのが、そもそもこの馬の脚質なのかもしれない。

 最終的に単勝2.3倍で1番人気となったアドマイヤサガスは、好位を追走して4コーナーあたりでは絶好の手ごたえ。そのまま突き抜けるかにも思えたが、直線では見せ場をつくれずの4着。ダートの1200m戦はこれまで4回経験しているが、中央でも地方でもきっちりと1分11秒台。前走北海道スプリントカップを勝ったときでも1分11秒0というもの。それでも今回は1分10秒1で走っていて、1分9秒台という決着はこの馬には向かなかったのかもしれない。

 地方馬で唯一掲示板の端を確保したのが、船橋のアイディンパワー。昨年の東京盃でも5着、今年の東京スプリントでも4着と、もともとダートグレードでも上位を争える力はあった。今回は一時的に北海道に移籍して北海道スプリントカップなどに挑戦し、また南関東に戻ってと間隔を詰めて使われた中でよく頑張ったと思う。今後のダート短距離戦線でも、相手関係次第では連下候補として忘れずにおきたい。

 タイセイレジェンドは9カ月ぶりの実戦で、プラス4キロの542kgは、これまでの最高体重。さらに60kgを背負ってということで、やはり今回はこの馬の出番ではなかった。最内枠に入って包まれてしまっては、60kgで最後に差すという競馬は考えられず、であれば前に行ってどこまで粘れるかという競馬をせざるをえず、押して押して先頭に立ったものの、直線半ばまでが精一杯だった。この馬の狙いは、斤量差が縮まる東京盃やJBCスプリントになるのだろう。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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