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ドリームバレンチノが叩き合いを制し悲願のGI初制覇!/JBCスプリント・盛岡

  • 2014年11月06日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



岩田騎手の好判断がぴたりとハマる

 JBCの3戦で唯一レコードの更新とならなかったのがスプリント。とはいえ、0秒1だけ及ばない1分9秒0で、大井1200mのレコードでも1分10秒1であることを考えると、これは地方のダートでは破格に速いタイム。中央のダート1200mでは、中山の1分8秒7が最速で、阪神が1分8秒8。日本レコードとほとんど変わらないタイムでの決着だった。

 逃げる可能性のある馬が何頭かいて、東京盃でハナを切ったのはサトノタイガーだが、吉原騎手では2走前のアフター5スター賞で控えて勝っていただけに、やはり今回も控えて3番手から。そして逃げたのは、クラスターCでも逃げて6着だったタイセイレジェンド。そのクラスターCは、前半34秒8で、この馬自身の上がりは35秒5で走破タイムが1分10秒3。今回は前半33秒5というペースで逃げ、この馬の上がりは35秒6。普段より馬場が速かったことを考えれば前半33秒5というのは極端に速いというペースではなく、そして何よりクラスターCより3kgも軽い定量57kgは楽な条件だった。休み明けの今年2戦、いずれも掲示板に届かずという結果だっただけに人気を落としていたが、60kgを背負ったクラスターCで勝ち馬から0秒6差なら今回は十分に好走できる条件にあると考えるべきだった。結果は、直線競り合っての3着だったが。

 惜しくもクビ差2着は浦和のサトノタイガー。東京盃で逃げたペースは前半33秒8。大井の良馬場ということを考えれば、これはハイペース。それより少なくとも1秒は速い盛岡のこの日の馬場なら、前半33秒5というペースの3番手は楽な流れになった。実際に4コーナーでタイセイレジェンドに並びかけるまで、鞍上の吉原騎手は軽く手を動かしている程度。ゴール前30mあたりまでは、勝ったドリームバレンチと並んだ状態だった。吉原騎手にとっては、ジャパンダートダービーのハッピースプリントでハナ差の2着があり、今度はクビ差でJpnIのタイトルを逃すことになった。さぞ悔しかったことだろう。「この馬でダートグレードを獲りたい」と言っていた浦和の小久保調教師にとっても、このクビ差は悔しかったに違いない。それにしても、マイネエレーナでJBCレディスクラシック地方最先着を果たしたのも小久保調教師。中央では頭打ちになったかと思えるような馬を再生し、さらに上のレベルにまで引き上げる調教技術は素晴らしい。南関東で3年連続100勝超のダントツの成績というのもうなずける。

 順番は逆になったが、上記2頭との直線での競り合いを制して勝ったのがドリームバレンチノ。スタート後は6、7番手だったが、余裕の手ごたえのまま徐々に位置取りを上げていき、4コーナーを回るところでは先頭のタイセイレジェンド、サトノタイガーをとらえようかという位置まで進出した。「4コーナー先頭のイメージで、馬場が湿っていたので強気のレースをした」という岩田騎手の好判断に、レースの流れがぴたりとハマった。サトノタイガーをクビ差でしりぞけたのは、最後の決め手の差だろう。高松宮記念で1分8秒3(ロードカナロアの2着)、スプリンターズSで1分7秒5(ロードカナロアの6着)という、芝での速い持ちタイムのあるこの馬にとって、日本レコードに近いタイムが出る高速馬場が合っていたということもあったかもしれない。

 セイクリムズンは、3着のタイセイレジェンドにクビ差まで迫って4着。前の集団からやや離れた中団追走から、メンバー中最速となる34秒7という上がりで持ち味は発揮した。

 東京盃を勝って1番人気に支持されたノーザンリバーは残念ながら5着。スタートでタイミングが合わずゲートが開いた直後、一瞬ではあったものの最後方に取り残された。最内枠ゆえ、そこで行かなければ包まれてしまう。だからといって控えれば16頭立ての大外を回さなければならない、というリスクを考えたのだろう。勢いをつけて200mほど行ったあたりで先行勢の直後5番手あたりにとりついた。ただ、それで脚を使ってしまったということはあっただろう。さらに東京盃では後方から進めて4コーナー7、8番手の位置から前をとらえたように、決め手勝負のこの馬に、高速前残りの馬場も厳しかった。レディスクラシックとともに単勝1倍台の人気となった蛯名騎手だが、ちょっとずつだがいくつかの歯車が噛み合わずにアンラッキーな結果となってしまった。

 そしてダート初参戦となったコパノリチャードは、2番手を追走したが4コーナー手前から徐々に後退して最下位。この馬の場合は極悪の不良馬場で高松宮記念を勝った時のタイムが1分12秒2、前走スプリンターズSが1分9秒2(12着)という持ちタイム。初めてのダートで、芝より速いタイムで走らなければならないということにはやはり無理があった。この馬がもっとも力を発揮するのは、重賞を2勝している芝1400mのように思う。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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