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大野騎手G1強奪プロジェクト最終章/激突!風水師VS呪術師

  • 2014年12月04日(木) 12時00分


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ステイヤーズSはイッツ・ア・スモールワールドだ。
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若いのと年取ったのが歩み寄る。
男と女と、男でもない女でもないのが歩み寄る。
日本人と外国人が歩み寄る。
常連さんを大切にしつつ、新参ものも受け入れる。

ステイヤーズSは、日本で一番ユニバーサルでバリアフリーなレースである。
そう言い続けて、久しいけれど、書いても書いてもそれが終わらない。つまり、ステイヤーズSはユニバーサルなレースと認定して間違いないってことだろう。

と、綴ってみたけど、よくわからないかもしれないので、過去を振り返っておく。

2000年以後で振り返ってみる。理由は、21世紀になって、その傾向が顕著に表れたからだ。
4歳・5歳が骨格として君臨しながらも、セン馬・3歳馬・高齢馬・外国人騎手・常連馬らが顔を出す。
うむ、まさにユニバーサルだ。

00年
1着 セン 4歳 柴田善 ホットシークレット
2着 牡  6歳 福永  タガジョーノーブル
3着 牡  4歳 横山典 サンエムエックス

01年
1着 牡  4歳 横山典 エリモブライアン
2着 牡  6歳 武幸  スエヒロコマンダー
3着 牡  7歳 福永  タガジョーノーブル

02年
1着 セン 6歳 岡部  ホットシークレット
2着 牡  4歳 江田照 ダイタクバートラム
3着 牡  7歳 武幸  スエヒロコマンダー

03年
1着 牡  3歳 後藤  チャクラ
2着 牡  4歳 横山典 エリモシャルマン
3着 セン 5歳 ペリエ ハッピールック

04年
1着 牡  6歳 Mデムーロ ダイタクバートラム
2着 牡  5歳 吉田豊 グラスポジション
3着 牡  5歳 ボニヤ テイエムジェネラス

05年
1着 牡  4歳 ペリエ デルタブルース
2着 牝  6歳 デザーモ エルノヴァ
3着 牡  5歳 佐藤哲 サクラセンチュリー

06年
1着 牡  6歳 ペリエ アイポッパー
2着 牡  4歳 ルメール トウカイトリック
3着 牡  5歳 北村宏 チェストウイング

07年
1着 セン 5歳 吉田豊 マキハタサイボーグ
2着 牡  4歳 北村宏 ネヴァブション
3着 牡  6歳 村田  アドマイヤモナーク

08年
1着 セン 5歳 横山典 エアジパング
2着 牡  3歳 藤岡佑 フローテーション
3着 牡  8歳 上村  トウカイエリート

09年
1着 牡  3歳 スミヨン フォゲッタブル
2着 セン 9歳 北村宏 ゴールデンメイン
3着 牡  4歳 柴田善 モンテクリスエス

10年
1着 牡  3歳 松岡 コスモヘレノス
2着 牡  4歳 安藤勝 ジャミール
3着 牡  7歳 後藤 ネヴァブション

11年
1着 牡  8歳 三浦 マイネルキッツ
2着 牡  3歳 吉田豊 イグアス
3着 牡  9歳 石橋脩 トウカイトリック

12年
1着 牡 10歳 北村宏 トウカイトリック
2着 セン 4歳 川島  ファタモルガーナ
3着 牡  4歳 内田博 デスペラード

13年
1着 牡  5歳 横山典 デスペラード
2着 牡  5歳 田辺  ユニバーサルバンク
3着 牡 11歳 北村宏 トウカイトリック

2000年代になって14回で、
セン馬7頭・高齢馬(7歳以上)9頭・3歳馬5頭が馬券圏内に入り、
7頭の馬が2回以上馬券に絡んでいる。

最近のレースを見ると、ついついトウカイトリックの頑張りに目が向くけど、ユニバーサルな象徴は
1着 セン馬 6人気
2着 3歳  1人気
3着 8歳  11人気
セン+若+老で決まった08年ではないか?

08年以後もトウカイトリックだけでなく、セン馬も若いのも頑張っている。
うむ、やっぱりバリアフリーだ。

日本一長〜〜い平地重賞のステイヤーズSだけど、レースの世界感は「世界は丸い♪ 世界は狭い♪」のイッツ・ア・スモールワールドに思えてならない。

もしかしたら、距離3600がいろんなタイプの馬に手を差し伸べるのかもしれない。
このレースを勝っても種牡馬の道が開かれるわけではないだろう。だからこそ、走りきることが使命の高齢馬やセン馬にやさしいのかもしれない。

イッツ・ア・スモールワールドで足りないのは外国からの参戦馬だ。ジャパンカップもいいけれど、ステイヤーズSの方が外国馬の好走チャンスは高いのではないか? G2で1着賞金6000万は外国馬にとっても美味しい賞金と思うけど…。

では、馬券的にはどう向き合えばいいのか?
バリアフリーなんだから、何から買ってもいいはずだ。
だから自由に向き合えばいい。

4歳・5歳はレースの骨格だからそこから買うのが正しくて、頭のいい買い方かしれないけれど、4歳・5歳は1人気〜4人気で来る傾向が強く、それならば、せっかく「若」「老」「セン」にやさしいレースなのだから、そこからアプローチして、人気の4歳・5歳に流してもいい。もちろん自分は人気面でも美味しい傾向にある若・老・センからチョイスしたい。

今年のメンバーで若(3歳)・老(7歳以上)・セン馬は、

若 3歳 スズカデヴィアス 予想9人気
老 8歳 セイクリッドバレー 予想12人気
  8歳 サイモントルナーレ 予想16人気
セン6歳 ファタモルガーナ 予想6人気

お手頃の頭数だ。中山0-0-0-7のサイモントルナーレを切ると3頭だ。
予想の段階だけど人気も手頃だ。

というわけで、今年のステイヤーズSもユニバな馬に注目してみる。

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ステイヤーズS注目馬
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8歳セイクリッドバレー…8歳にしてダイヤモンドSを2着。休み明け3戦目でステイヤーズSは予定どおりではないか?
セン馬ファタモルガーナ…2年前の2着馬。1年2ヶ月ぶりを叩いての鞍上・戸崎は予定どおりではないか?
トウカイトリックは「アルゼンチン→ステイヤーズS」を引退するまでに7回もつづけた。これで4回馬券になった。予定どおりにもほどがあるスーパー・ルーティン! このレースはきっと実直なほどに予定どおりの馬にも微笑むレースとみた!

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金鯱賞の登録メンバーを見て思う。
池江厩舎は今年の有馬記念、何頭出しかな?
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厩舎には厩舎の目標があると思う。
さしずめ池江厩舎の目標は、
「1年の締めの有馬記念に何頭の馬を送り出せるか?」
ではないか?

これは至高かつ贅沢な目標だ。
厩舎力がないと、有馬・複数頭出しはできないからだ。

厩舎の考え方にもよるけど、有馬記念を最高レベルのお祭りと考えるならば、そこに何体の神輿を送り出せるかも厩舎としては大切なことだ。
馬主に対しての満足度につながるからだ。

馬券を買う側が一番盛り上がる一年の締めくくりのレースに自分の馬が出るのと、出ないのとでは馬主のテンションも違うはず。

「俺様の神輿を何人の人が担いでくれるかな?(私の馬の人気はどの程度でしょうか?)」

池江厩舎は去年の有馬記念で5頭出しした。
昔の昔はわからないけれど、ここ10数年では間違いなく最高複数頭出しでしょう。

1着 オルフェーヴル 池江厩舎

5頭出走で、1-0-0-4

スーパー大将格のオルフェーヴルがいるのに他4頭を出走させた。
どう見ても、有馬記念は「勝負」と「お祭り」の両面があることを証明しているようだ。

池江厩舎が有馬記念に複数頭出走させるようになったのはここ数年。池江郎厩舎から池江寿厩舎に完全に移行して、その傾向はより強くなったように感じる。
ディープインパクトの頃はふつうに1頭出しだった。

09年 2頭 1-0-0-1 郎&寿 1着ドリームジャーニー(寿)
10年 4頭 0-0-1-3 郎&寿 3着トゥザグローリー(郎)
11年 3頭 1-0-1-1 寿へ移行 1着オルフェーヴル 3着トゥザグローリー
12年 3頭 0-1-0-2 寿   2着オーシャンブルー
13年 5頭 1-0-0-4 寿   1着オルフェーヴル

ミソは馬券になる馬が1頭はいたこと(現在5年連続馬券圏内中。これはこれですごいことだ)。

てなことを念頭に置いて、今年の金鯱賞の登録メンバーを見ると、やっぱり池江厩舎から目が離せなくなる。

オーシャンブルー ――
サトノノブレス  池添
トゥザグローリー ビュイック
ラブリーデイ   幸

ここでそれなりの勝負をしたら、騎手とセットで有馬記念へ。
そうとしか思えない馬と騎手の配置だ。

去年は、金鯱賞に3頭を出走させた。
で、それなりの勝負をした2頭を有馬へ、期待を裏切った馬を金杯へ出走させた。

ラブリーデイ(蛯名)2着→有馬・蛯名・12着
トゥザグローリー(北村友)4着→有馬・ルメール・8着
オーシャンブルー(ルメール)10着→中山金杯・ベリー・1着

今回の騎手は、池添・ビュイック・幸。
そのまま有馬記念か中山金杯へ向かいそうな鞍上構成に思える。
オーシャンブルーは騎手未定(もしかしてルメールだったかな?)で、有馬か金杯かもよくわからない。

金鯱賞がこの時期に移って3年目。過去2年ともに、ここで馬券圏内に来た馬が有馬記念で馬券になった。
(オーシャンブルー&ウインバリアシオン)
だからか、今年はいっそう有馬記念に出したそうな厩舎が揃っているように思える。
金鯱賞は、かつて宝塚記念へ向かうための別路線として存在していたけど、もうすでに有馬記念へ向かうための別路線として確立してしまったかもしれない。

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金鯱賞注目馬
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サトノノブレス(池江厩舎)…里見オーナーはまだ有馬記念出走経験なし。
サトノ馬を有馬に最初に送り出すのはワテの厩舎や〜〜!! そのためにもここは勝ち負けさせたいところ。

ラブリーデイ(池江厩舎)…去年はここで突然! 蛯名騎手になって、2着して、有馬にも蛯名騎手で出走した。今年の幸騎手にも突然感をいっぱい感じる!
クランモンタナ(音無厩舎)…その蛯名騎手が今年はクランモンタナで『突然』感を醸し出している。真意はともかく、ここではこの突然感を大事にしたい。

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大野騎手G1強奪プロジェクト・最終章
風水vs呪文の馬券ファンタジー
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「大野騎手G1強奪プロジェクトという物語が密かに進行していて、その両翼を担うのが、スノードラゴンとインカンテーションではないか?」

と、

スノードラゴンがスプリンターズSに勝ったのを見て、思い立った。

もっと、早く思い立てよって話だ。
まったくだ!
でもまだ間に合う!
もう1つに間に合えばなんとかなる!

そう、思って、慌てて、大野騎手G1強奪プロジェクト・第二章として、みやこSでインカンテーションに期待してみたのだった。

すると、ものの見事にインカンテーションは勝った。っていうか、勝ってしまった!
そう、実は勝たなくていいと思っていた。いい感じで闘えればそれでいいと思っていた。馬券圏内に入ってほしいけれど、4着でも負け方さえ良ければ、それでいいとさえ思っていた。理由は右回りには少々不安ありと囁かれていたからだ。ただ不安があっても、ここでそれなりの戦いができないと、得意の左回りでもG1では勝てない。だから3着前後には来てほしいと思っていたのだった。

右回りでも圧勝したから、本来ならば喜ぶべきことかもしれない。
でも同時に「やばい。こうなると本番で1人気の可能性も出てきてしまう!」とも思ってしまったのだった。

いくら大野騎手が人気の馬ではそれなりの成績があるとはいえ、G1は別だ。G1で1人気はいらないだろう。

参考資料 大野騎手1人気成績
50-43-23-82/198
勝率25% 連対率47% 複勝率59%
芝 15-18-9-40 18% 40% 51%
砂 35-25-14-42 30% 52% 64%
(ダートの1人気の方が信頼度アップ!)

ただその前の週にコパノリッキーがJBCクラシックでインパクトのある勝ち方をしていた。だから2人気の可能性もある。そう思ってもいた。
どちらが1人気になるのだろう? 世間はどちらを評価するのだろう?

週の真ん中の予想オッズでは、
1人気 コパノリッキー
2人気 インカンテーション
だ。

週末までこんな感じで進みそうだ。

にしても、この1・2人気の闘いは面白い。

コパノリッキー 風水師のドクター・コパさんの馬
インカンテーション 馬名由来「呪文、呪術。父名より連想」

簡単に言えば、第1回チャンピオンズカップは、
風水vs呪文
の闘いとも言えるからだ。

もはやハリー・ポッターだ。霊幻道士だ。ネバーエンディングストーリーだ。ドラゴン・クエストだ。

通例だとコパさんは伊勢神宮にお参りに行き、勝負パンツ・勝負服・勝負フードで運気を高めるはずだ。もしコパノリッキーに元気がないと思えば、ミッキー(という曲)を聴かせ、リッキーのやる気を引き出すおまじないもかけるはず(フェブラリーSで成功した逸話)。

大野騎手や羽月師や馬主のターフ・スポート(会員制クラブ)のみなさんは、どんな呪文で風水に対抗するのだろう?
会員制だから馬主さんはいっぱいいるはずだ。みんながそれぞれ思い思いの呪文を唱えるのだろうか?

ホイミだのベホイミだのラリホーだの…
いや、ここはハリー・ポッターかもしれないな。今、USJで大人気らしいし。タイムリー性はある。

ならば、ウィンガーディアム・レビオーサ(浮遊せよ!)がいいんじゃないかな? 浮遊せよ!を日本の競馬用語に訳すならディープインパクトせよ!だろうしね。
エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ!)もいいかもしれない…ただ守護霊を作るには幸福なことを思い浮かべないと……おっと、すみません。余計なお世話でした。

とにかく、
ファンタジーに付き物はドラゴンと呪文だ。
大野騎手はスノードラゴンでスプリンターズSを勝っている。
今度は呪文でチャンピオンズカップに勝つ。そんな物語だ。

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チャンピオンズカップ注目馬
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最終章なんだからインカンテーションに注目してるに決まっている。
っていうか、今回はいつもにも増して内容がない気がする!
でも去年のジャパンカップ・ダートだって「なんだ、この馬すげぇな!」だけでベルシャザールに行けた。似たようなもんだ。

ただし、心配事もないわけじゃない。

1人気 田辺 30歳
2人気 大野 28歳

若い。
いや、若さじゃない。
浅い。
G1で人気を背負う経験が少ない。

二人とも若いけど技術はある。でもG1で人気を背負って、いつもと同じ精度の技術を繰り出せるか、
そこが心配だ。

田辺は逃げか番手かの選択を迫られるかもしれない。
大野は先行か差しかで選択を迫られるかもしれない。

二人とも欲しいのは2着ではない。1着だ。だからこそ取りこぼしも十分考えられる。

とにかくG1経験の浅い若いのがG1で1・2人気になると、ときどきヘンテコなことが起こる。

G1の空気に飲まれて、いつの間にか夢見心地の魔法・呪文にかかって、気がついたら取りこぼしていた…なんて可能性もないとは言えない。

一番怖い呪文はなんだろう?

ム〜〜ア! ひぃ!こわい〜〜!

デザ〜〜モ! 久しぶり〜! 復活してたらこわい〜〜!

いや、ダートならば日本語の呪文だってこわい!

イ〜ワ〜タ〜〜!

コ〜マ〜キ〜…………!

カ〜ゼ〜ノ〜コ〜カ〜ゼ〜ノ〜コ〜

もうどんな呪文でも怖くなってきた。

大野騎手G1強奪プロジェクト・最終章がネバーエンディングな物語でありませんように〜。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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