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トロワボヌールが人気に応え重賞初制覇/クイーン賞・船橋

  • 2014年12月04日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



力が一枚抜けていたトロワボヌール

 中央勢は昨年のこのレースを制したアクティビューティ以外の3頭に重賞勝ちがないメンバーとはいえ、4・5歳のこれからの活躍が期待される馬たち。地元南関東勢にはダートグレードで結果を残してきた馬たちがいたが、いずれも近走は好調時の力を発揮できていないというメンバーで、やはりといおうか中央勢が3着までを独占する結果となった。

 勝ったのは、前走JBCレディスクラシック2着で単勝1.7倍の断然人気に支持されたトロワボヌール。3コーナー過ぎからは中央勢4頭の争いに絞られ、前3頭の鞍上がすでに懸命に手綱を動かしていたのに対し、その3頭を前に見る位置を進んでいたトロワボヌールの戸崎騎手はまだまだ手ごたえ十分。外に持ち出して直線追い出されると、まさに並ぶ間もなくという感じで前を交わし去っての完勝。展開云々ではなく、力が一枚抜けていたというレースぶりだ。

 逃げたのは、予想されたとおりブルーチッパー。JBCレディスクラシックでは外枠もあってハナをとれなかったが、今回は5番枠からのスタート。隣の内枠に入ったカチューシャもゲートが開いて押していたため、ブルーチッパーの幸騎手にとっては、今回は何としてもハナへという考えはあっただろう。すんなり位置取りが決まったとはいえ、最初の3Fは、11.8-11.4-12.3で35秒5という速めのラップ。スタンド前の直線では隊列が縦長となった。

 レース中盤の4F目で13秒1というラップがあったとはいえ道中でペースが緩むことはなく、厳しいペースとなった。レースの上り3Fが39秒5で、勝ったトロワボヌールでも39秒0と、上りのかかる流れだった。

 たとえばブルーチッパーの2走前、阪神ダート1800mの準オープンを逃げ切ったときのラップを見ると、前半3F通過が37秒8、5F通過が62秒9で、上り3Fは36秒7というもの。前半溜めていって、後半にペースアップして後続を振り切るというのがブルーチッパーの逃げ切るパターン。ところが今回は、繰り返しになるが、前半3F通過が35秒5、5F通過が61秒2で、この馬自身の上りは40秒4も要したという、前半で消耗するペースを強いられた。さらにブルーチッパーの直後を追走したカチューシャが6着、3番手を追走したエミーズパラダイスが11着に沈んだことでも前のペースが速かったことがわかる。

 対して勝ったトロワボヌールは、前半は先頭から5馬身ほども離れた7番手を追走。「コースや仕掛けるタイミングを熟知しているジョッキーですから、射程圏からレースをすすめて、うまくレースをしてくれました」と畠山調教師が言うとおりの、おそらく理想の展開と結果になったのではないか。

 そしてトップハンデ56キロのアクティビューティは1馬身半差2着。チャンピオン級の馬が不在となっても、また別の強い馬が立ちはだかってというレースを続けていて、これで地方のダートグレードで2着は6回目となった。

 トロワボヌールにとっては、単に重賞初制覇というだけでなく、来年の女王争いへの挑戦権を得る勝利となった。

 これで来年のこの路線は、サンビスタ、ワイルドフラッパー、そしてトロワボヌールらが中心となって女王の座を争うことになるのだろう。明けて8歳になるアクティビューティは引退するのかどうか。対して、ここで番組賞金を加算できなかったブルーチッパー、カチューシャにとっては、牝馬限定のダートグレードに出走しようと思えば、限られた中央枠に入るには狭き門となり、中央の舞台で牡馬との対戦を強いられる可能性が高くなりそうだ。

 実績馬もいた地元南関東勢の最先着は7着のアスカリーブルで、4、5着には笠松の2頭が入った。4着のタッチデュールは後方3番手を追走し、メンバー中唯一38秒台の上りでゴール前追い込み、3着のブルーチッパーに半馬身まで迫った。ブービー人気ゆえ、仮に3着に入っていたら3連複で553.9倍、3連単で1391.4倍という高配当になるところだった。5着のトウホクビジンとともに、交流レースではおなじみの笠松・笹野博司厩舎の管理馬で、馬主も同じ(有)ホースケア 。もともと勝ち負けには届かないところからの着狙いゆえ、この2頭も見事に展開がハマった。

 今回が161戦目となったトウホクビジンは、年明けまでは走るが、その後の繁殖入りが決まったそうだ。タッチデュールは5歳ながらこれが90戦目。この馬がトウホクビジンの後釜として全国を駆け巡ることになるのかもしれない。ちなみにトウホクビジン5歳時のクイーン賞は87戦目で、タッチデュールはトウホクビジン以上のペースで走っていることとなる。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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