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ビュイックのリアリティーと蛯名のリアリティーと、抽選組でファンタジー

  • 2014年12月11日(木) 12時00分


有馬記念の枠順決定の方式がニギニギしい感じに替わると発表された。
抽選順に希望する馬番を選択できる方式で、テレビ中継もされるらしい。
この方式の正式名称を自分は知らないけれど、新聞社によっては「枠順ドラフト」と称するところもあった。抽選に挑む側の駆け引きや選ばれないメンツの方が圧倒的に多い野球やPOGのドラフトとは厳密には違うけれど、欲しいもの(この場合は馬番)を抽選で奪い合うという意味ではドラフトと言えるのかもしれない。

いずれにせよ、ドラフトの盛り上がりにはスター(もしくはスター候補)の存在が不可欠だ。野球でもPOGでも、そこが物足りないと盛り上がりには欠ける。
つまり、この場合は有馬記念に出走するメンツが揃うかが一番大事なわけで、現在、出走を表明している馬たちが本当にみな揃うならば、なかなかのメンツになりそうで、ニギニギしい枠順決定になるかもしれない。

っていうか、この方式になるから出走して来る馬もいそうだ。希望枠番の抽選があって、テレビ中継まであったら、馬主だって、取りあえず今年は参加したくなるはず。有馬記念には勝負とお祭りが同居していて欲しいと願う自分としては、今年は妄察しがいのある有馬になりそうで、楽しみだ。

ちなみに有馬記念のオッズにも独特な傾向があって、面白い。
ここでは、天皇賞秋の0オッズや富士Sの美オッズについて、書いたと思うけれど、有馬は奥オッズが面白い。
有馬記念のオッズの過去歴を見てると、余力もないのに人気だけは集めてしまう馬や、息を潜めて一発を狙う馬や、息を潜めているわけでもないのに勝手にナイガシロにされてる馬なんかが見えてきて、無闇矢鱈に穴を狙いたくなる。おっと、まだ有馬には早い早い。奥オッズに興味のある方はただ今発売中の競馬王1月号でお願いします。ほんの少し頑張ってみました。

今年の阪神JFはちょっとつかみ所のない感じがする。
牝馬戦線の大黒柱に成長する馬がここにいるのかもしれないけれど、今のところ万人が認める柱が見えて来ない感じだ。

理由1 去年が凄すぎた。
去年は、ハープスターだけでなく、他の馬たちも牡馬相手の重賞や特別レースで勝ち負けしていた。2歳のこの時期にしては、それなりの実績を持った馬が何頭もいて、ベースが高そうだった。
ホウライアキコ・小倉2歳1着&デイリー杯1着、レッドリヴェール・札幌2歳1着……少ないキャリアで濃厚な経験値を積んだ馬たちが他にも数頭いた。

しかし今年は、そこが少し物足りない。1200以外の牡馬混合重賞で勝ち負けした馬は1頭もいない。秋以後、牡馬混合の特別レースを勝った馬は、からまつ賞(500万)1着のショウナンアデラと秋明菊賞(500万)1着のムーンエクスプレスしかいない。

重賞ホースは3頭いるけど、みな人気薄だ。しかもその後レースに出走していないから、今ひとつ信用しにくい。

小倉2歳S 15人気1着 オーミアリス
ファンタジーS 14人気1着 クールホタルビ
アルテミスS 9人気1着 ココロノアイ

1人気で1着しないとダメとは言わないけれど、この人気は薄すぎる。だから本当は強いのかもしれないけど、ついつい疑ってしまう。

理由2 松田博・角居・国枝の阪神JF御三家もいなければ、新興勢力と思われた須貝厩舎もいない。

わからないときの拠り所になるのが上記厩舎だったように思う。いるのは、もしかして新興勢力?の鹿戸雄厩舎のロッカフラベイビーのみ。そのロッカフラにしても抽選待ちで、なんともいじりにくい状況だ。

ジャパンカップのときにJC三大厩舎の松田博・角居・池江厩舎からは目が離せないと書いたし、その厩舎から買えば、2連レベルで馬券は当たるとも書いた。で、角居厩舎のエピファネイアは1着した。

同じようなことが阪神JFでもあって、特に御三家&須貝厩舎の馬は、それぞれが独自の臨戦を経て、出走し、結果を出していた。まあ上位人気にもなっていたから、御三家云々は関係なく、誰でも自動的に信頼できたはずだ。

たとえば「前走新馬、もしくは未勝利戦」で馬券になった馬は、阪神改修の06年以後、5頭いるけれど、勝ち負けできた馬は松田博厩舎の3頭しかいない(レーヴダムール2着・ブエナビスタ1着・ジョワドヴィーヴル1着)。新馬・未勝利からでも勝ち負けできるノウハウ、もしくは好走判断材料を松田博厩舎は持っていたのかもしれない。

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勝ち馬の考察より、3-5人気の馬の妄察の方が馬券的官能度は高い
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以下は阪神改修後8年の連対馬の人気(06年-13年)
06年 4人気-1人気
07年 3人気-8人気
08年 1人気-3人気
09年 2人気-5人気
10年 1人気-4人気
11年 4人気-8人気
12年 5人気-15人気
13年 5人気-1人気

■すべての年で3-5人気の馬が連対している。
■6人気以下の馬が連対したときに、1・2人気馬の連対はなし。
■1・2人気馬が連対したときの相手は5人気まで。
■つまり3-5人気の馬から1頭を選ぶか、別の人気の馬から3-5人気に買えばいい。
(去年もここで書いた。それでも継続した。だから今年も安心して書く)

現時点での人気の予想(水曜日)
1人気 レッツゴードンキ
2人気 コートシャルマン

3人気 ロカ
4人気 ココロノアイ
5人気 ダノングラシアス
6人気 ショウナンアデラ

ロカは抽選待ちで予想3人気だから、抽選に通ったら2人気になるかもしれない。でも一応、このままで当日も進むと仮定すると、
1・2人気はレッツゴードンキ、コートシャルマン、
3-5人気はロカ・ココロノアイ・ダノングラシアス・ショウナンアデラの4頭で争う可能性大。

今年は、混戦は混戦だけど、もしかしたら上位6人気までの混戦と、7人気以下の混戦に分かれるかもしれない。
上位混戦と下位混戦。
こういう年は、1・2着は上位で、3着にヘンテコな人気薄が突っ込んでくるような気もする。

そうなると、意外にカンタンだ。
今年は、どんな展開でも最低限2着は確保できるような地力のある馬は見当たらない。つまり1人気になりたくない馬ばかりだろう。
だから2人気になった馬から3-5人気に流せばいい。3-5人気が最後まで混戦だったら、3-6人気まで流せばいい。

3連系は1列目か2列目に2人気、1列目か2列目に3-5人気(もしくは6人気まで)、3列目に好みの人気薄馬、もしくは11人気以下全部を配置する。自分はこういうときは3連複を買うのが好きだから、これだと最大32点でお楽しみが買える。1人気を切って、11人気以下を絡めるから、どう見ても100倍以上はつく。うむ、これは簡単かつ美味しそうだ。

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ビュイックになら勝負騎乗を依頼するのではないか?
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混戦な時は、終わって見れば「××組が強かった」ということもある。

アルテミスS組が強かったのなら、
レッツゴードンキ(予想1人気)とココロノアイ(予想4人気)の再決着。

ファンタジーS組が強かったのなら、
ダノングラシアス(予想5人気)とクールホタルビ(予想7人気)の再決着。

りんどう賞組が強かったのなら、
コートシャルマン(予想2人気)とダノングラシアス(予想5人気)の再決着。

人気の組み合わせ的にも、3-5人気が絡むことになりそうで、過去8年に合致している。これもありだ。楽ちんだ。

今年は大混戦で、例外の年と決めつけるなら、小倉2歳S組の再決着も狙えなくもない。
オーミアリス(予想9人気)とレオパルディナ(予想8人気)で決まったら、けっこうな穴だ。

ただ「××組」で狙うなら、2つのレースで登場したダノングラシアスが一番安心できるような気がする。

ここ2走の陣営のコメントを見ていると、抑える競馬を学ばせようとしていたことがはっきりわかる。

りんどう賞   京都14 内回り 8-8-9 2着 岩田
ファンタジーS 京都14 外回り 8-8-9 2着 岩田

今回はビュイック騎乗。
ビュイックだから、岩田よりいいとは言えないし、むしろ岩田の方がいいと思う。
でも、ビュイックということは勝負という予測は立つ。外国人騎手に抑える競馬の稽古を依頼するとは思えないからだ。それにビュイックはムーアに比べて、今一つ信用されていない。だから過剰人気にもならなさそうで、そこもいい。

ちなみにこれがファンタジーS2着時の岩田騎手のコメント
「今後のことも考えてじっくりレースを進めました。もう一列前のポジションをとれていたら届いたかもしれませんが、つかまえ切れませんでした。走る馬ですし、距離が延びてもいいと思います」(ラジオNIKKEI・競馬実況webより引用。以下同じ)。

というわけで、まずは、臨戦にビジョンが垣間見えるという理由で、ダノングラシアスにスポットを当ててみた。。

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蛯名騎手が参加する。それだけで春まで視界が開ける
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あとは、予想では6人気だけど、蛯名が西下するパターンに戦歴が合致しているショウナンアデラ。

蛯名騎手は基本的には勝負になりそうな時に西下する騎手だ。
それは菊花賞や天皇賞春でも垣間見えるけれど、阪神JFではその傾向がさらに強くなる。2歳だから素材を重視してることも手に取るようにわかる。

以下はここ11年の蛯名騎手の阪神JF騎乗ホース。
このレースで勝負になるか、素材として一級品の何かがあるか。そういう馬でしか参加してないことがわかる。

13年 8人気3着 フォーエバーモア 
09年 2人気1着 アパパネ その後牝馬三冠達成
07年 9人気17着 エフティマイア しかし 桜花賞2着 オークス2着
06年 8人気8着 ピンクカメオ しかし NHKマイル1着
03年 5人気6着 アズマサンダース しかし 桜花賞2着

蛯名騎手がショウナンアデラにここでの勝ち負けを感じたのか、将来性を感じたのか、それはわからない。
けれど、過去の騎乗馬を見ていると、ここから春まで追いかけてみたくなる衝動にかられる。

念のため、蛯名騎手のレース後コメントもチェックしておく。

新馬戦2着(1着はナヴィオン)
「仕方がありません。競馬はなかなかうまく行かないものです。勝った馬が強かったです」
新潟芝16 1人気 1-3-3 2着

ナヴィオンにしてやられたことへの悔しさがにじみ出ている(ように思える)。それは2戦目の未勝利の勝利コメントで、より鮮明になる。

未勝利1着
「初戦は2着だったが、これは勝ち馬のナヴィオンが強すぎたケースなので仕方がない部分がある。今回は牝馬限定戦で初戦よりもメンバーが少し楽になっていたし、ずっと楽にレースを運ぶことができたからね。強いレースだったよ」(週刊競馬ブックより)
東京芝16 1人気 3-3-3 1着

ここでもナヴィオンが引用された。ナヴィオンの強さを讃えているけれど、本音では次やったら負けないくらいの気持ちも感じる。

からまつ賞(牡牝混合500万特別)1着
「いい形でした。調教であまり攻めると良くないので、脚元との相談になります。丈夫ではないので、ゆっくり大事に厩舎が牧場と話し合ってやっているところです。素質があるのは間違いありません」
東京芝14 1人気 5-4-3 1着

「素質があるのは間違いありません」にはリアリティーがある。おそらくアパパネやフォーエバーマークと比較してのものと思うからだ。となると、今回の阪神JFへの蛯名騎乗には意味がある。

ここか、春か。

ここでの馬券が50:50だとしても、トータルで狙いに行きたいし、脚元に不安があるなら、急いだ方がいいような気もしている。

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阪神JF注目馬
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■3-5人気で軸、1、2人気なら抑え、6人気以下ならじっくり検討する馬。
ダノングラシアス…ビュイック騎乗なら勝負重視のはず。一撃型リアリティー。
ショウナンアデラ…蛯名の西下を重視。春まで記憶しておきたい。連打型リアリティー。

今年は、ここまでは自分的には上手く進んでいるように思う。
ただビュイックのリアリティーと蛯名騎手のリアリティーはちょっと違う。
一撃か連打か…。

この2頭の馬から同時に行くか、
1頭に絞り込むか、
相手は1・2人気、つまり上へ向かうか?
もしくは6人気以下、つまり下へ向かうか?
できれば、11人気以下を狙って、官能を狙いたいけど、こればかりは出走馬と枠が確定しないとわからない。

■コメント・イマジネーション的にちょっと注目
ロカとロッカフラベイビー

過去歴からは、松田博厩舎以外だと前走新馬組は最高で3着の傾向あり。
ロッカフラベイビーは、2年連続で3着中の鹿戸雄厩舎の馬で、人気も薄そうだから3着狙いできるけれど、ロカは抽選に通ったらさらに人気になりそうで、慎重にならざるをえない。

と理解した上で、

ロカ 新馬1着 和田騎手
「真面目な馬で、最後までしっかり伸びました。センスがいいですし、新馬としてはパーフェクトでしょう」

『新馬としては』の部分が少し引っかかるけど、テイエムオペラオーの背中を知ってる男はこのくらいクールでないといけないはず。出負け気味だったとはいえ、新馬戦では先行させる競馬が多い和田騎手が中団に待機させ、直線で差して勝った。もともと素質を買っていたのだろう。

今野厩舎は3年目の若い厩舎だけど、今年は2歳馬で星を稼いでいる。全14勝中7勝が2歳馬でのもの。

「まずは社台系の牝馬を上手に育てられるか?」

新しい厩舎が頭角を現すパターンの1つだ。もしそのパターンに突入しているとしたら、ロカは社台系仮免ホースの可能性あり。だとしたら、それなりの勝負をしても不思議ではない。

ロッカフラベイビー 新馬1着 三浦騎手
「走るのはわかっていました。今日は追ってからの反応もよく、ほぼ馬なりでした。距離はもっとあってもいいと思いますし、距離を延ばしても楽しみです」(東京芝16)

「走るのはわかっていました」………なかなかのコメントだ。蛯名騎手のようなリアリティーはないけれど、ミウラ・ファンタジーは感じられる。
武幸騎手に乗り替るけれど、予想12人気なら、なんの心配もいらないし、タケコウ・ファンタジーに触れてみたくもなる。もし、抽選を通過したら、鹿戸厩舎の馬ということで、3着で拾ってみたい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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