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むしろ今週だ! 蛯名騎手のクライマックスと国枝厩舎のリアリティー

  • 2014年12月18日(木) 12時00分


先週の阪神JFは、蛯名騎手騎乗で、ただ1頭のディープインパクト産のショウナンアデラが1着した。

自分もこのコラムで書いたようにショウナンアデラに注目した。もちろん応援は「湘南乃風」方式でタオルをグルグル回しながら……はできなかった。手にしていたペンを小さくクルクル回すに止めた。とどめて正解だった。

「ごめんね青春!」を見てからというもの、ショウナンの馬に注目するたびに「湘南乃風」式応援について書いていたけれど(菊花賞&エリ女にて)、先週は書かなかった。あまりに書くとしつこいと思われそうなのと、書くと出オチっぽくなって、そこで自分自身が終了するような気もしたからだ。

それに「湘南乃風式応援って書きたいだけだろ!」という無言の声も木霊したような気もした。それで少し遠慮したのだった。自分は変態だけど、引くときは引く奥ゆかしさも持っているのだ。奥ゆかしい変質者……うむ、なかなかの言い回しだ。自分で書いててうっとりしてしまった。ワハー。

とにかく、先週のディープインパクト産の勝利は、またしても、改めて、競馬ファンにインパクトを与えたはず。

やっぱディープなんだよね…

そんなインパクト。
そして、それは間違いなく今週の朝日杯Fにも引っ張られそう。

朝日杯Fのディープインパクト産駒は、おそらくダノンプラチナただ1頭。
(登録は2頭。もう1頭は賞金的に相当厳しい。ダノンプラチナも現時点で4/5の抽選あり)

阪神・芝1600・ディープインパクト産・蛯名
2着→1着→1着(ベゴニア賞) 
成績2-1-0-0

初戦を取りこぼして、2戦目、3戦目と楽勝。
ショウナンアデラに何から何までそっくりだ。

これで引っ張られなきゃウソだ。
たとえ4/5の抽選が必要だとわかっていてもだ。

現段階での予想(水曜)を見ると、ふつうに引っ張られているのがわかる。

1人気 アッシュゴールド 3.9
2人気 ブライトエンブレム 4.1
2人気 ダノンプラチナ  4.1
4人気 クラリティスカイ 5.0

1人気を4頭でひしめき合いそうなムードだ。
アッシュゴールド デイリー杯2着で、そもそも人気者
ブライトエンブレム G3札幌2歳S1着馬
クラリティスカイ 重賞いちょうS1着馬
ダノンプラチナ 500万特別1着馬

重賞1着2着馬が3頭いて、500万特別1着馬が1頭。
実績的には先週と同じようにダノンプラチナは5、6人気でもいいくらいだ。
しかもショウナンアデラは1、2人気とは離れた5人気だった。
しかしダノンプラチナは現時点で2、3人気、しかも1人気に接近した2、3人気だ。
完全に引っ張られていると断定していいだろう。

こうなると、2つの流派が生まれる。

1 先週と同じコース・同じ距離で、牡牝の違いあれ2歳馬の闘いなんだから、同じようにディープインパクト産を重視すべき。ダノンプラチナは買い。

2 たしかにディープインパクト産は怖い、けど、2週つづけて蛯名でディープインパクト産が来るなんて、出来過ぎだ! ワナに違いない! 百歩譲ってディープインパクト産が勝つのはわかる。けれど、蛯名&ディープだなんて出来過ぎにもほどがある! ワナもいいところだ!

鴨川と神田川を地下で結ぶ秘密の寄合所での調査でも1か2に分かれた。

しかし、自分の考えはちょっと違う。

「むしろ、こっち。蛯名騎手の本命は最初から朝日杯F」

そんな第3の流派。
そもそも蛯名騎手の今年の最終目標はダノンプラチナで朝日杯FSに勝つことだったのではないか?
そう思っている。
(有馬記念で勝ち負けできそうな有力騎乗はいなさそうだし…)

実は先週から思っていた(後付けじゃないよ。証拠はないけどね。うは!)。だから阪神JFは勝たずに3着くらいしてくれればいいとも思っていた。先週、ショウナンアデラを◎にすることに決めたときも、ここから春までお付き合いするつもりで◎にした。そしたら想定以上の強さで勝ってしまった。いい意味での誤算だ。

でも、もし、蛯名騎手の想定が「ショウナンアデラよりダノンプラチナの方が強い」だったらどうだろう。それこそ、本当にいい意味での誤算、いや今週の自信になっているのではないか?

もちろん好事魔多しで、勝てるか微妙と思っていた馬で勝ち、間違いなく勝てると思っていた馬で負けることもある。しかし、蛯名騎手はベテラン騎手だ。レースのアヤで負けることはあっても、有頂天になって、負けるとは考えにくい。

っていうか(ここが一番キモだけど)、そもそも蛯名騎手にはダービー制覇という悲願がある。

(ダービーが来るたびに書いているけれど、また書く)
蛯名騎手をダービージョッキーにする会がもう5、6年前から、ときにわかりやすく、ときに静かに、でも確実に進攻していて、この時期の2歳馬はダービーを勝つことを優先事項に騎乗選択しているはず! と自分は妄察している。

阪神JFで勝利することが、春の牝馬クラシックにつながりやすいならば、阪神の朝日杯FSに勝つ意味は大きいはず。

国枝厩舎は、もともと阪神JF御三家の一つで、この時期の2歳馬で阪神1600を勝つノウハウや、勝つ意味を知っているはず。リアリティー満載だ。
それゆえに余計に思う。もしかしたら、蛯名・国枝のアパパネ三冠コンビは、もっと遠くを見据えて、出走してくるのではないかと。その『遠く』に行くための直近の答えが暮れのホープフルSではなく、阪神の朝日杯Fなのではないかと。

というわけで、自分はむしろ今週の方が蛯名騎手は自信あり!!と見ている。
あくまでも自分の妄察だ!!!!!
でもそうであって欲しいと願っている。むしろそれで人気が引っ張られても、ダービーを見据えているのなら、人気に注文なんてついてちゃダメ!!ダービーとは基本的には1人気で勝ち負けできる馬しか勝てないからだ。

(『遠く』にはダービーだけじゃなく、NHKマイルも含まれているかもしれない。でも今はダービーでいいじゃないか!実際ディープインパクト産のダービー馬って、マイルで強そうと思われる馬が勝っている。3歳春はダービーで、古馬になったらマイルチャンピオンシップ! それでいいじゃないか!)

一応、コメント・イマジネーションはしておく。

ショウナンアデラのコメントは、初戦取りこぼしの悔恨の引きずり方が秀逸だった。
ダノンプラチナも同じように初戦を取りこぼしたけど、どうだったかな?

ダノンプラチナ
新馬2着
「前がゴチャついた分ですね。前があいてからはしっかり伸びていました。すぐにチャンスは来ると思います」(ラジオNIKKEI 実況webより)

未勝利1着
「大外枠で前に馬がいなかったし、気のいい馬だから最初は行きたがっていたが、馬の後ろにつければ大丈夫。新馬戦の前走は、前でフラフラしている馬がいて無理できなかっただけで、力負けではないからね。一度使ってよくなっていたし、スムーズならこれくらい走れるしトビが綺麗で大きいから広い東京も合ってるね」(週刊競馬ブックより)

初戦の敗戦のことを2戦目の勝利コメントでも語っている。いい傾向だ。ショウナンアデラほどの悔恨の強さはないけど、あえて控えめに語っているようにも思える。

ベゴニア賞1着
「課題はテンションの高さ。もっと落ち着きが出てくれば引き出しが多くなると思います。これから使いながら落ち着きが出てくるといいですね。今日のレースはいい内容でした」(ラジオNIKKEI 実況webより)

東京1600を5-4-4の位置で追走し、いちょうS3着のミッキーユニバースに0.5差つけた。しかしコメントは課題から入る慎重さ。遠く(東京2400)を見ているからこその注文に思えてくる。

うむ、やっぱり今週こそ本チャンに思える。

つまり、この馬も「蛯名騎手をダービージョッキーにする会」の重要ホースの1頭という見立てだ。そう、このクラスの馬を何頭か揃えてはじめてダービーに向かえると思う。1頭だけでは故障リスクを回避できない。だからホープフルSにも逸材がいても驚けない。

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朝日杯Fステークス注目馬
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ダノンプラチナ 今年の蛯名騎手のクライマックスは、阪神JFじゃなくて、ここ。有馬じゃなくて、ここと見た!

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朝日杯Fステークスこわい馬
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とはいえ、レースのアヤはやっぱりある。
たとえ、ショウナンアデラよりもダノンプラチナの方が強いと思っていたとしても、足下をすくわれる時は、すくわれる。

というわけで、なんだか強そうな馬をライバルとして持ち上げてみる。ライバルだからやや膨らまし気味にこわいこわいしてみる。

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クラリティスカイがクロフネのカッタリーノ系牡馬だとしたら、こわいこわい。
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まずはクラリティスカイ。

もしかしたら、クラリティスカイは久しぶりに登場するクロフネ産の強い牡馬かもしれない。

理由は、初戦を4着に負けて、2戦目を2着に負けて、3戦目でものすごく強い勝ち方をして、そのまま重賞のいちょうSもぶっこ抜いたからだ。

強いクロフネ産はデビュー戦を取りこぼし(惨敗はダメ)、2戦目か3戦目で勝ち上がる傾向にある。

え!? 意味がわからない?
以下は、2013年02月28日(木)12時00分にアップされた自分のコラムの一部だ。
クロフネ産のスケバン気質、蛮カラ気質について書いた。それを今年用に改訂してみた。

クロフネ産は牝馬が優秀。これは皆さんご存知のとおり。
でも知ってました?
■クロフネ産って新馬初戦を負けて、2戦目、3戦目で勝ち上がった馬しかG1馬になれてないってことを。

以下は父クロフネのG1ホース

フサイチリシャール牡 2戦目1着(4着→1着)
スリープレスナイト牝 3戦目1着(2着→3着→1着)
ホエールキャプチャ牝 2戦目1着(2着→1着)
カレンチャン   牝 2戦目1着(2着→1着)

みんな初戦を取りこぼしている。
むしろ初戦を取りこぼせないクロフネ産はマジメすぎてダメかもしれない。
牝馬が3頭。牡馬が1頭。

人間界ではふつうは逆。マジメな女子、不真面目な男子。
優等生な委員長と無頼派を気取る男子。
もちろん委員長は女子。
「柏手クン、マジメにして!」とか言われて、
「うるへぇー、委員長!!」と応えるあのやり取り。二人はもちろん幼なじみ。ひゃっほー!

とにかく優秀なクロフネ産牝馬は上記したG1ホースに限らず、どれもこれも初戦取りこぼしの馬ばかりだ。
委員長〜!!と呼びたくなるような馬がぜんぜんいない!
むしろ、新馬初戦などかったりぃ〜ぜよ! なスケバン系な牝馬ばかり。
そしてそれは牡馬にも言える。実際、唯一の牡馬G1ホースのフサイチリシャールも初戦で負けているし、初戦かったりーっつーの!な馬の方が重賞を勝っている。

G1以外のクロフネ産重賞馬
牝馬
オディール     初戦かったりーぜよ!3着 2戦目1着
マルモセーラ    初戦かったりーぜよ!2着 2戦目1着
ブラボーデイジー  初戦かったりーぜよ!3着 8戦目1着
ストークアンドレイ 初戦1着 委員長!
クロフネサプライズ 初戦かったりーぜよ!4着 2戦目1着

牡馬
インパルスヒーロー 初戦かったりっつーの!2着 2戦目1着
アースソニック   初戦1着 ガリ勉小僧!
セイコーライコウ  初戦かったりーっつーの!2着 3戦目1着
クラリティスカイ  初戦かったりーっつーの!4着 3戦目1着

もちろん、重賞のいちょうSを勝ってるクラリティスカイもかったりー系に入る。

全13頭の重賞ホースがいて、8頭が牝馬で、5頭が牡馬。
全13頭の重賞ホースがいて、11頭が初戦を取りこぼし。

初戦をこぼさなくて重賞を勝った馬はストークアンドレイとアースソニックのみ。
それ以外はみんな、スケバン系か蛮カラ系だ。正直、スケバンか蛮カラの方が断然優秀な気がする。

そういえば父クロフネ自身も初戦2着、2戦目1着した馬だった。
強いクロフネ産には父の優秀な脚力とともに、かったりー気質も付いてくるのかもしれない。

とはいえ、2戦目、3戦目で自らの過ちに気づき、すぐに優等生になれないとダメ。やればできる子であることを早めに見せないと、ダメ。
4着→2着→1着→1着のクラリティスカイの臨戦は好感が持てる。もしかして、久々の牡馬G1馬の誕生か? う〜ん、こわいこわい。

ちなみに牡馬の重賞ホースは母父サンデー系が多い。

フサイチリシャール ×サンデーサイレンス
インパルスヒーロー ×サンデーサイレンス
セイコーライコウ  ×サンデーサイレンス
クラリティスカイ  ×スペシャルウィーク

アースソニック   ×サクラユタカオー

母父がサンデー系じゃないのは、新馬1着でかったりー系じゃなかったアースソニックのみ。スペシャルウィークは初登場だけど、う〜ん、こわいこわい。

クラリティスカイの鞍上は岩田。
3戦連続で騎乗し、デイリー杯を勝ったタガノエスプレッソではなく、一度しか騎乗していないクラリティスカイに騎乗する。このいきさつを自分は知らないが、G2を勝った馬よりも、未勝利を勝った馬にインパクトを感じたからだとしたら、う〜ん、こわいこわい。

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ブライトエンブレムの札幌2歳Sの走りは、ハープスターみたいで、こわいこわい。
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レッドリヴェールは去年の札幌2歳S勝ち馬で、阪神JFを1着した馬だ。
ゴールドシップは3年前の札幌2歳S2着馬で、皐月賞や菊花賞他を勝った馬だ。

位置取りはこうだった。
レッドリヴェール 9-10-8-4 1着 上がり1位
ゴールドシップ  13-12-12-10 2着 上がり1位

札幌2歳S組は、後方から進んで、マクリ気味にコーナーを回り、差して、1着か2着した馬の方が、先行して勝った馬よりも、G1を勝つ確率は高い気がする。先行して勝ったコディーノやグランデッツァがG1ではちょっと足りなかったことからも、そう思えてしまう。

ブライトエンブレム 13-14-11-8 上がり1位

う〜ん、こわいこわい。

でもブライトエンブレムの走りを見て、すぐに頭に浮かんだのは、レッドリヴェールやゴールドシップではなく、札幌記念のハープスターだったりする。

ハープスター 13-13-9-4 上がり2位(1位は2着のゴールドシップ)

ハープスターはマクって4角で4番手まで来た。
ブライトエンブレムはマクって4角で8番手だった。
4番手と8番手は数字上は違うけれど、改めてレース映像を見ると、よく似たレースぶりだったことがわかる(札幌記念は8/24。札幌2歳Sは9/6)。

田辺騎手が狙って、ハープスター走法をしたとは断定できないけれど、結果的にハープスターっぽい走法をして、勝った。だから強いという見方はできる。
思えば新馬初戦の東京1600も、出遅れたけど大外から差し切った。これだってハープスターっぽい。

ハープスターは阪神1600、2-1-0-0。
阪神JFはハナ差負けたけど、チューリップ賞も桜花賞も凄みのある勝ち方をした。

そういえば、阪神JFでハープスターに勝ったのがレッドリヴェールだった。ハープスターといい、レッドリヴェールといい札幌でマクリを決めて勝った馬は、阪神1600で強いという見方はできる。こわいこわい。

池添騎手の末脚チューンナップが完成してたらアッシュゴールドだって、こわいこわい。
デビュー戦でショウナンアデラを差し切ったナヴィオンだって、はまればこわいこわい。
外国人騎手(ムーア&ビュイック)!? それだけでこわいこわい。
先週1人気を裏切った和田騎手の巻き返し!?(ペイシャオブロー)こ、こわい……こわい……さすがに1着では怖くないかな…でも3着ならこわい!

あ〜隣の芝生がなんでもかんでも青く思えてきた。ひぃ〜!

で、思う。
もしかしたら、ダノンプラチナは5分の4の抽選に漏れたほうがいいんじゃないか?
謎残しで来年を迎えた方が待望感や不気味さが増して、面白いんじゃないか? 
おっと、考え方が魔界系になってきた。もうやめておこう。

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朝日杯Fステークス注目馬・アゲイン
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ダノンプラチナ
先週のショウナンアデラは下河辺牧場のディープインパクト産だった。
今週のダノンプラチナは千代田牧場のディープインパクト産だ。
どちらも日高を代表する牧場で、ディープインパクトを種付けるからには、期待の牝馬を用意するに決まっている。
実際、ショウナンアデラの母も、ダノンプラチナの母も牧場期待の輸入牝馬だ。

社台系のディープインパクト産は今週も出走してない。
ならば、今週は千代田牧場のディープインパクト産が頑張る。
ぜんぜん不思議じゃない。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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