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憂いは心にあり

  • 2015年01月15日(木) 12時00分


グァンチャーレのシンザン記念勝利を見て

 考え方ひとつでどんな物事でも解釈出来る場合がある。こうでなければと、自分を追いつめることはない。世の中の苦楽もそう捉えればいいのではないか。「憂いは心にあり、浮世は心次第」とことわざに言う。楽への道を塞がないためにも、苦しいとばかり思ってへこたれてはいられない。よし、それならひと工夫と、とにかくやってみるのだ。思い直して道を切り開いて行く、このやり方なら、前に出て行くチャンスが訪れるかもしれない。

 シンザン記念を勝ったグァンチャーレは、それまで脚質の定まらない粗削りなところが目についていた。デビューから3戦続けて最速の上がりをマークしていたが、スタートが悪いという大きな泣き所があった。それが粗削りという印象を強くしていたのだった。4戦目、京都のオープンでスローペースで逃げたときには、それまでのイメージとは違いすぎた。5戦目武豊騎手に乗り替わった東京では、また大きく出遅れたが、無理せず長い直線に賭けた。手応えはよかったが、最内を突いた直線で前が開かず窮屈なレースを強いられてしまった。それでも、先頭からコンマ3秒差まで詰め寄り、脚を余すレース振りから、この馬の戦い方がはっきり見えていたと言ってもよかった。

 とにかく、憂いとなっていたスタートの矯正をと中間のゲート練習を重ね、心にあった憂いを除き、大丈夫の思いを抱いて戦ったのがシンザン記念だった。ゴール前はきわどかったが、武豊騎手は、思ったよりもゲートをよく出てくれたので、あるていどのポジションが取れたと言っていた。自ら勝機をつかむべく動いていっての勝利は大きく、これで戦い方がはっきり見えた。「憂いは心にあり、浮世は心次第」の心を晴らしたのだ。

 この心は人の側の問題だが、かつて京成杯をマイネルチャールズで勝った松岡騎手を思い出す。クビ、クビ、1/2、クビと上位から5頭の混戦を制したのだが、直線の再三の不利をはねかえしての勝利だった。前走のホープフルS1着のときつかんだ「前の馬を絶対かわしてくれる馬」という実感が力になっていた。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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