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ゴールドシップとセンチメンタル・ジャーニーと冬のオペラグラス

  • 2015年01月22日(木) 12時00分


アメリカジョッキークラブカップにゴールドシップが出走しそうだ。
これはけっこうな出来事だ。
なんてったってゴールドシップは有馬記念で1人気になった馬だからだ。
しかもファン投票も1位。
ファン投票1位で、レースでも1人気。総選挙で言うところのセンターに選ばれたってやつだ。

その馬が1ヶ月後のアメリカジョッキークラブカップ、略してアメジョに出る。
うむ、どうみてもすごいし、すごいとしか言いようがない。

だって、そうでしょう。
有馬で1人気だった馬が一ヶ月後のレースに出走できるなんて、
それはつまり、
「余力があるんかい!!」
ってことですからね。

たとえ余力のある負け方をしてしまったとしても、全力で頑張った感を醸し出すのがファンの期待に応えられなかった1人気馬の立ち振る舞いではないかと思うわけです。特に有馬ではね。
(仮に展開や枠の不利で負けたとしても1人気馬はそれを口にしてはいけないと思うし…)
余力があってもゆっくり休み、阪神大賞典あたりで復活する。それが有馬でセンターに支持され、単勝でも1人気に支持されて、負けた馬の本道(もしくはパフォーマンス)ではないか? そう思うんであります。

とはいえ、前走有馬記念で、アメジョを勝った馬はいっぱいいる。

ネヴァブション 有馬13人気12着
トーセンジョーダン 有馬7人気5着
ルーラーシップ 有馬11人気4着
ヴェルデグリーン 有馬8人気10着

でも有馬では伏兵扱いだったような馬ばかりだ。
アイドルグループでたとえると、
アメジョとは、選抜2列目、3列目らが出走し、有馬に出られなかったアンダーメンバーらと競走するレースで、
人気のフロントメンバーが出走するレースではない。

だからこそ、有馬でフロントメンバーだったゴールドシップが出走すると知って、ビックリしたし、率直に出走できちゃうんだとも思ったわけだ。
でも同時にこうも思った。

勝てないなら出走してくるわけがない! と。

京都や東京のレースではなく、中山のレースに出る以上は絶対に1人気になる。単勝支持率だけなら、有馬以上の可能性もある。
そんなことは運営だって、間違えた陣営だって承知のはず。
その上で出走するのだから勝てるデキにあるに決まっている!

ゴールドシップはいまだ暦の上ではディセンバーにいるってことだ! やったー! (もはや懐かしい!)

つまり、
鉄板!
いや超鉄板!

アメジョのゴールドシップは120%勝つ。
カツ丼、一丁!

以下は、有馬記念で1人気だった馬たちのその後。
勝とうが負けようが1人気馬たちは、引退か春まで休むのが本道なのがわかる。
早い復帰でも、約2か月後で、そういう馬は海外遠征前の調整出走だったりする。
だからこそ逆説的にゴールドシップは鉄板と思うわけだ。

過去10年の有馬1人気馬の成績とその後
13年 オルフェーヴル   1着 引退
12年 ゴールドシップ   1着 約3ヶ月 阪神大賞典1着
11年 オルフェーヴル   1着 約3ヶ月 阪神大賞典2着
10年 ブエナビスタ    2着 ほぼ3ヶ月 ドバイWC8着
09年 ブエナビスタ    2着 ほぼ2ヶ月 京都記念1着
08年 ダイワスカーレット 1着 引退
07年 メイショウサムソン 8着 ほぼ3ヶ月 大阪杯6着
06年 ディープインパクト 1着 引退
05年 ディープインパクト 2着 約3ヶ月 阪神大賞典1着
04年 ゼンノロブロイ   1着 ほぼ6ヶ月 宝塚記念 3着

1か月後のレースに出走した馬は1頭もいない。最短でブエナビスタの京都記念出走だ。
それはそうだろう。
なんてったって天下の有馬記念1人気馬だ。
ねぎらわれて当然だろう。

まあそれゆえに、ゴールドシップの鉄板指数は高まりに高まる。めったにないからこその高鳴りだ。
そうそう有馬1人気馬に一か月後のレースで大暴れされても困る。
だからめったにないことを確認するために、もっと奥までさかのぼってみることにした。

03年 シンボリクリスエス 1着 引退
02年 ファインモーション 5着 約8ヶ月 クイーンS 2着
01年 テイエムオペラオー 5着 引退
00年 テイエムオペラオー 1着 ほぼ3ヶ月 大阪杯4着
99年 グラスワンダー   1着 ほぼ3ヶ月 日経賞6着
98年 セイウンスカイ   4着 ほぼ3ヶ月 日経賞1着
97年 マーベラスサンデー 2着 引退
96年 サクラローレル   1着 ほぼ4ヶ月 天皇賞春2着
95年 ヒシアマゾン    5着 ほぼ5ヶ月 安田記念10着
94年 ナリタブライアン  1着 約3ヶ月 阪神大賞典 1着

うむ、そうそうたる面々だ。いかにもセンターって感じだ。
そして現役続行の馬はみんな3か月以上休んでいるのも確認できる。

20年以上前の競馬と今の競馬はぜんぜん違うからサンプルにならないという意見もありそうだけど、探し物は馬の資質や適性ではなく、有馬を1人気で負けた陣営の巻き返しや心意気といった気持ちに関するサンプルだ。だからまったく問題ない。

とはいえ、さすがにそろそろめったにないことをした馬に出会いたくなってきた。
と思っていたら……………いた。

28年前にいた。

93年 ビワハヤヒデ    2着 約2ヶ月 京都記念1着
92年 トウカイテイオー  11着 1年後 有馬記念1着
91年 メジロマックイーン 2着 約3ヶ月 阪神大賞典1着
90年 ホワイトストーン  3着 ほぼ3ヶ月 大阪杯1着
89年 オグリキャップ   5着 約5ヶ月 安田記念1着
88年 タマモクロス    2着 引退
87年 サクラスターオー  競走中止 予後不良
86年 ミホシンザン    3着 1ヶ月後 AJCC1着

ミホシンザンだ。うは!
しかも有馬3着で、アメジョ出走。
ゴールドシップと同じじゃないか!
ついでにいえばミホシンザンは皐月賞・菊花賞の二冠ホースだった(ダービーは回避)。そこもゴールドシップと同じだ。

有馬記念を1人気で3着に負けたミホシンザンが、なぜアメジョに出走したのか、本当のところはわからない。しかも自分は翌年のスターオーの有馬記念が初有馬だったから、前年の空気感もわからない。
けれど、1人気の期待に応えられるデキにあるから出走したという想像はつく。
そしてちゃんと1着した。

なるほど……なるほどーーーーーー!!!!

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ゴールドシップをアメジョ1人気馬・買い消し選定マシーンにかけてみる
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ゴールドシップは、勝てる自信があるから出走してくると決めつけてみた。
ではその自信にデータの裏付けはあるか?

1番人気の捉え方(過去12年・03-14)
■1番人気は1着か着外
■1番人気成績 4-0-0-8

1人気は負けることの方が多い。買うなら1着。
でも、ここからもうちょっと絞りこめる。

■過去に「重賞」で1番人気の期待に応えたことのある馬は、50:50で勝てる。
→該当4-0-0-3

■過去に「重賞」で1番人気の期待に応えたことのない馬は0:100で着外。
→該当馬0-0-0-5

別定G2のAJCCには人気を背負って、それでも勝つ実績も求められるのだ。
去年は1人気候補が3頭いた。
ダノンバラード・ヴェルデグリーン・レッドレイヴンの3頭で、
どの馬も重賞で1人気1着したことはなかった。
だからどの馬が1人気になっても、圏外に敗れるパターンだった(去年のコラム参照)。

実際、レッドレイヴンが1人気になって、4着に敗れた。

今年の1人気候補はゴールドシップしかいない。

重賞1人気1着経験は、6-1-1-2と圧倒的だ。
1回でも1人気1着があればいいのに6回も勝っている。そんじょそこらの実績じゃない。

このデータは4-0-0-3のデータであって、100%勝てるというものではない。あくまでも50:50で勝てるというデータだ。
それでも、今回ばかりは限りなく1着に思える。

それに、有馬で1人気になった馬がAJCCに出走するのは例外中の例外、異例中の異例だと過去のセンター・ホースたちを見て、強く感じた。
どうやら少しセンチメンタル・ジャーニーしてしまったようにも思う。
だからゴールドシップは誰かのためではなく、ゴールドシップ自身のためにも勝たねばいけないと心底思う。

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だが、しかし。
ちゃぶ台をひっくり返すことのほどでもないけれど…。
しかし、だが。
気になることもある。
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フルゲートの17頭立てになりそうで、そこは大いに気になる。

アメジョが過去に17頭立てになったことはない。
16頭立てが最高だ。
それも過去28年で2回だけ。
基本10頭から12頭立てが多いレースでもある。
それゆえに、そこが少々気になる。

過去のデータそのものが10から12頭立てで構築された可能性だってあるからだ。
つまり1人気の信頼性も変わる可能性があるのだ。もちろん、フルゲートで1人気の信頼性が上がる可能性もなくはない。けれど過去の16頭立て以上を見る限りでは、1人気の信頼性は下がる可能性の方が高いようにも見受けられる。

過去2回の16頭立てレースで1人気は圏外だった。

08年
1着 2人気
2着 9人気
3着 6人気

1人気5着 ドリームパスポート

13年
1着 2人気
2着 11人気
3着 6人気

1人気4着 レッドレイヴン

この2頭は、重賞1人気1着実績のない馬で、それゆえに負けたとも取れる。
しかし、その一方で16頭立てでレースを上手に組み立てられなかった可能性もなくはない。

中山2200の古馬重賞のオールカマーも過去28年で16頭立て以上は4回しかない(中山以外での開催は除く)。
そのときの1人気の成績は1-0-1-2。
盤石ではない。
しかも今回はおそらく17頭立て。相手のレベルは下がるとはいえ、元気さでは上の可能性だってある。
ちなみにミホシンザンのときは、6頭立てで、ミホシンザンは逃げ切った。少頭数レースにおける実績馬の定石どおりのレースをしたともいえる。

そもそもゴールドシップは、4歳以後は阪神でしか勝っていない。中山は得意と言われているけれど、4歳以後は有馬記念3着2回だけだ。阪神ほど大得意とはいえない。

ゴールドシップでセンチメンタル・ジャーニーしたいところだけど、ほんの少し心配指数は上がってしまう。
ほぼほぼ単勝1倍台は確定的だろう。
ならば心底応援しつつ、別の馬から攻める手もある。
WIN5ではゴールドシップ1点にしつつ、アメジョでは別の馬の単勝を買う手だってある。

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アメリカジョッキークラブカップ注目馬
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ショウナンラグーン
2月いっぱいで引退する大久保洋厩舎はずいぶん前からメモリアル・ロードに入っているのかもしれないけれど、去年の重賞勝ちはショウナンラグーンの青葉賞勝ちしかない。

おそらく最後の重賞も、ショウナンラグーンで挑むダイヤモンドSだろうし、陣営の勝負もそこかもしれない。でもさすがにそこでは騒がしくなるだろう。
自分は印象派だから引退馬券を否定しない。でも歪んだ印象派だから、少しズラしたくなる。つまり一つ前のここで応援したくなるというわけだ。

予想では7人気。クリールカイザーより人気がなさそうだ。うむ、お誂え向きだ。ならば、タオルに「湘南乃海(遠浅)」と書いて、クルクル回しながら……おっと、これ以上はやめておこう。
有馬で岩田は位置取りの反省をしていた。今度は間違いなく前方の位置を取りにいくはず。で、いつも以上に早く前を飲み込んでくれたら、ラグーンが間に合うかもしれない。

エアソミュール
角居厩舎の勝負騎手交替か!?
エピファネイアのスミヨンと同じだ。あのときは福永がジャスタウェイを選んで、空いたところにスミヨンを配置させた。
今回は武豊が東海Sでコパノリッキーに騎乗する。空いたところにCデムーロ。
致し方ない流れの中で、強力なスイッチを施す。角居流勝負騎手交替とみた!
強敵のいるときの角居厩舎の指示は「先行」に決まっている。実際、ゴールドシップが負けるときは前を捕らえきれずの負けだ。ゴールドシップより先に仕掛ける作戦とみた。

フラガラッハ…完全にお楽しみ鑑賞馬券
横山典が騎乗するようだ。8歳馬だけに、横山典でダメならしょうがないと馬主さんに覚悟を決めてもらうためのメッセージ付き鞍上チェンジに思える。
だが、しかし、その一方で、まだ諦めちゃいない! あと一歩を埋めてもらうための横山典! にも思える。
去年、掲示板に乗ったのはオールカマー(4着・新潟2200)、鳴尾記念(3着・阪神2000)、AJCC(5着・中山2200)と中距離ばかり。得意なはずの1600ではなかった(中京記念1人気10着)。あと一歩を埋められれば、馬券圏内だ。実際、去年のAJCCも5着だった。

ただし、横山典はアドリブ伯父さんだから、読みすぎてもいけない。逃げだってあるかもしれないし、スーパー最後方だってあるかもしれない。だから何があろうがけっして憮然とせず、「そういうこともある」と受け止める心構えも必要だ。
とはいえ、フラガラッハ=横山典は見物しがいあり。鑑賞料を払うに値すると思っている。
ゴールドシップがセンチメンタル・ジャーニーなら、こちらは冬のオペラグラスって感じだ。え? 意味がよくわからない? もちろん自分もよくわかってません。

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京都牝馬S・注目馬
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京都・芝・1600・重賞
ディープインパクトのウリウリでどうしようもなさそう。
ただし、京都牝馬Sは52キロ、53キロで1着した馬が翌年に54キロ、56キロになって、2着するパターンが多い。
去年52キロで1着したウリウリは、今年は54キロで出走。そこをどう取るか。

ヒカリアラマンサス 52 1着 →翌年 54 2着
ショウリュウムーン 53 1着 →翌年 54 2着
ドナウブルー    52 1着 →翌年未出走 翌々年 56 2着

ウリウリ      52 1着 →翌年 54 ?着

軸としては申し分ないけれど、2着もあると想定しておきたいし、馬券的には2着でお願いしたい。

ベルルミエール
1400の先行馬と思っていたら、1600でも足りたってことにならないか。

芝1400成績 3-0-0-1
芝1600成績 0-0-1-1
京都芝成績 3-0-0-0
京都芝1400 3-0-0-0

京都マイルの経験はないけれど、ここ2走はともに京都1400の外回りでの勝利だった。つまり直線の距離はいっしょ。京都ならば1600でも勝ち負けできると見て、期待したい。

もう1頭の人気のディープインパクト産のキャトルフィーユは、角4競馬向きと見て、角居厩舎で、バルジュー騎乗ではあるけれど、1,2人気ならばサゲたい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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