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ちょっと型破りなスプリンター/シルクロードS

  • 2015年02月02日(月) 18時00分


大きな武器であるケレンなしの先手主張

 2番人気の支持を受けた6歳牝馬アンバルブライベン(父ルールオブロー)が、さすがに今回はきびしいマークを受けるシーンもあったが、鮮やかな逃げ切り勝ちを決めた。

 5歳後半から強くなる牝馬も珍しいが、初重賞制覇が昨2014年11月のGIII「京阪杯」芝1200mであり、6歳になってこれがグレードレース2勝目。

 父ルールオブロー(父キングマンボ)は2004年の英ダービーを小差2着のあと、英セントレジャーを勝っている。ステイヤーというわけでもないが、JRAではほかに福島2歳S(OP特別)のペイシャオブローが知られるくらいで、平坦に近いコースの短距離戦に好走例が集中した。期待ほどの活躍馬を送れなかったため、日本では07年から11年まで5年間の供用だけで欧州(イギリス)に戻る形になっている。

 母チェリーコウマン(父スプレンディドモーメント)は、ダート2300mのウインターSを勝って名を挙げたパワー型だった。フェブラリーSを激走したチェリーフット(父タケシバオー)の一族でもある。アンバルブライベンが、父や母の距離適性をそのまま受け継ぎ、決して同じようなレースを得意とするものではないが、ちょっと型破りなスプリンターであることは間違いない。

 騎乗した田中健騎手(26)は、デビューして今年が9年目。2010年のファンタジーSをマルモセーラ(父クロフネ)で勝ち、このアンバルブライベンで重賞を2つ制しているが、これがJRA86勝目(地方2勝)だった。乗り馬に恵まれているわけではないが、この牝馬とのコンビでは【7-2-2-11】。これでお手馬と高松宮記念に挑戦できることになった。果敢なレースで、飛躍のきっかけになる快走を期待したい。ケレンなしの先手主張は大きな武器である。調教師になった中舘騎手は、先行して力を出し切ってくれるから、東西の調教師から信頼を集めた。

 アンバルブライベンのここ2戦の京都1200mは、京阪杯が「34秒7-33秒6」=1分08秒3。淀短距離Sが「34秒9-33秒8」=1分08秒7であり、今回はノーマークのスローの逃げはありえなかったが、スタート直後から気合をつけ、なにがあっても先手を主張する気迫のレース運びだった。レース検討で、シルクロードSの最近10年の平均パターンは「34秒15-34秒15」=1分08秒3としたが、ほぼそれと同じようなバランスで、今回は「33秒9-34秒0」=1分07秒9である。最後の1ハロンも「11秒7」でまとめ、平均勝ちタイムを上回ったから見事だった。

 3番人気のサドンストーム(父ストーミングホーム)は、好スタートから3コーナー過ぎでは後方4-5番手まで下げたが、直線は馬群をこじあけるように伸びて上がり33秒3。勝ち馬を4分の3馬身差まで追い詰めた。ひかえて後半の切れをフルに生かす戦い方は、香港から再三日本にきた上のラッキーナイン(父ドバウィ)と同じ。もう少しレースが前傾バランスになって欲しいというより、全体に時計がかかって欲しいタイプなのだろう。今回はアンバルブライベンに着差以上の完敗だった。

 8歳セイコーライコウ(父クロフネ)の12番人気での快走も見事だったが、直線の切れがひときわ光ったのは、5歳の上がり馬ベステゲシェンク(父ディープインパクト)。外を回って上がり33秒3だった。下げて注文をつけたからこそ伸びたのは確かだが、ディープインパクト産駒には珍しいスプリンタータイプに育ちつつある。もともと1600m級で好内容を示した総合力があるから、たちまちオープンでも通用するだろう。

 1番人気のエイシンブルズアイ(父ベルグラヴィア)は、とくに不利はなかったと思えるが、中団から伸びを欠き、いいところなしだった。「斤量を背負っている分なのかな(秋山騎手)」というが、牡馬で56キロのハンデを敗因にするようでは心もとない。

 同じ4歳で伏兵とされたベルカントホウライアキコも、ともにテーマを欠くようなレース運びに終始し、エイシンブルズアイも含め、注目の4歳馬が見どころのないレースに終わったのはちょっと残念だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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