「気楽な挑戦」で再度期待
先週の「きさらぎ賞」を制した牝馬ルージュバック(父マンハッタンカフェ)は、このあと、桜花賞に直行することが発表された。ここまでの3勝は、1800m、2000m、1800m。本番前に話題になりそうだが、果たして「1600m未経験」で桜花賞馬となれるのだろうか。経験なしで勝ったのは、もっとも近いところで、20年も前のワンダーパヒューム(1995年)。また、1600m未経験で桜花賞を2着したのは、きょうの東京5レースの新馬に、ルージュバックと同じ大竹厩舎(美浦)の注目の男馬の産駒グレーターロンドン(父ディープインパクト)を出走させる1998年のロンドンブリッジがもっとも近年の例である。
その当時までは、距離体系がだいぶ違っていた。2歳時や3歳の初期に牝馬の1800-2000m出走は多くなかった。短距離戦が多かった。だから、ワンダーパヒュームや、ロンドンブリッジは、1400mまでしか出走経験がなかったことで、距離延長が心配された1600m未経験馬である。
そうすると、逆に距離短縮になる1800-2000mしか出走していないルージュバックのような馬が桜花賞で勝ち負けするのは初めてではないのか? いないのでは? と想像することができる。前身の1940年代前半の「中山四歳牝馬特別1800m」当時は別に、1947年に競馬が再開され、京都1600mから始まった現在とほぼ同様の桜花賞では、ここまで68年間、距離1800m以上の経験しかない馬が桜花賞を勝ったことは、一度もないのである。
1800mから1600mへの短縮など、1400mから1600mへの距離延長よりずっと楽なはずだが、桜花賞が近づくと、ルージュバックの1600m未経験は大きな話題となるだろう。
距離というと、前回の阪神JFを1番人気で8着(1分35秒4)にとどまった
ロカ(父ハービンジャー)は、出遅れ、1番枠、たった1戦のキャリア、道中すこしあわてたこと…など、敗因はいくつもあるが、本質的に1600mのスピード勝負に対する適性一歩ではなかったか…、の疑問も残った。
方向転換して、オークス路線に向かうのではないかの憶測もあったが、コースを東京に変えて再び「1600m」に出走してきた。かってな想像だが、ここで勝ち負けできるなら当然、桜花賞に向かえる。しかし、(十分にこなせるとは思えるが)、もし1600mでまたもたつくようなら、この東京コースに出走はやがての「オークス」展望にも通じる。そんな思惑もあるのではないか?
でもこれは、アブハチ取らずにも、2兎を追うものは1兎も得ず、にも当てはまらないだろう。必死の追い詰められてのクイーンC出走では、まったくない。ここになんと6頭も出走させるノーザンファームの生産馬であり、オーナー名は吉田勝己代表である。
改めて、もう一度1600mへの出走は陣営には多分に気楽な挑戦でもある。人気の重圧からも開放される和田竜二騎手にとっても、なんとか桜花賞の出走権利を…と前回ほど固くなるレースではない。
互角にスタートできれば、たとえ少し置かれようとあわてることはない。おそらくスタミナ能力はある。切れ味勝負を展望するのではなく、秘めるスケールと、パワー全開に徹するだけである。
幸い、現在の東京は高速の芝でもない。前回、中山の外枠から出て同日の古馬1000万をはるかに上回る内容で楽勝した
キャットコイン(父ステイゴールド)、時計は重馬場のため平凡でも、弾けるように差し切った
ミッキークイーン(父ディープインパクト)、伏兵
シングウィズジョイ(父マンハッタンカフェ)以下の強敵は多いが、前回中心にした手前もあり、もう一回、スケールあふれるロカに期待したい。