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ルージュとのライバル物語が始まるクルミナル/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年02月18日(水) 18時00分


◆きさらぎ賞レース前に「勝ちに来るんかい?」と聞くと、戸崎圭は即座に「勝ちに行くよ」と言い放ったそうだ

 8日に京都競馬場で行われたきさらぎ賞に牝馬が挑戦したのは1999年のグッドウイング(14着)以来。そんな状況で乗り込んできたのが「東の天才少女」ルージュバックだった。

 鞍上の戸崎圭と仲のいい某関係者がレース前に「勝ちに来るんかい?」と聞くと、戸崎圭は即座に「勝ちに行くよ」と言い放ったそうだ。とはいえ、迎え撃った西の牡馬勢もクラシック候補と言われる逸材ばかり。個人的には「そう甘くはなかろう」と思っていたのだが…。まさに圧巻の走りだった。先々はウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナといった女傑と名を並べても決して見劣ることはない器になるのではないか。

 記者は社会に出るまで東京で過ごしたのだが、トウカイテイオー、ミホノブルボンといった「まだ見ぬ西の怪物」をワクワクしながら見に行った(決して馬券を買っていたわけではありません)90年代初頭、関西馬の黎明期を思い出した。西の競馬ファンが長らく感じていなかった感覚をこのルージュバックがもたらしたのではなかろうか。

 もちろん、レースの翌週も反響は大きかった。「文句なしにすごい」「走り方からして違う」「また牝馬か」などなどマスコミだけでなく、栗東の厩舎関係者からも称賛と驚きの言葉が次々に飛び出たわけだが、警戒とともにうれしそうにルージュバックの台頭を喜ぶ人もいた。

 昨年のクラシック戦線をレッドリヴェールとともに沸かした須貝調教師だ。「大竹先生とは友達だからさ。素直にうれしいよ。“走るね、おめでとう”と言ったんだ」と目を細める。ライバルにエールを送る余裕? いや、この人は昨年の凱旋門賞挑戦時(ゴールドシップ&ジャスタウェイ)にも語っていた。「同じ日本から行くハープスターとともに切磋琢磨したい」と。レベルの高い競走こそが、競馬の魅力を高めることを肌で感じているからこそ、こうした言葉が出てくるのだ。

 現在の西の牝馬でルージュバックに対抗しうる数少ない馬の一頭が、須貝厩舎のクルミナルだ。今でもよく覚えているのが、この馬のデビュー前。予想をつける時に須貝厩舎担当の難波田記者に「須貝先生のところの新馬、あれ走るの?」と聞くと、「なんか気難しいみたいであまり走るって感じではなさそうです」との返答。実際、レースも「モタモタしてるなあ」と思って見ていたのだが、直線に向くと豹変。抜群の切れ味で先行勢を丸のみしてしまった。

 2戦目はきさらぎ賞前日に行われたエルフィンS。ここではさらに切れ味を増して、2着ナガラフラワーに2馬身差をつける余裕のフィニッシュを飾った。大型馬ゆえに前半はモタモタした印象を与えるが、搭載エンジンは間違いなく巨大だ。

「最初は気難しいところがあって苦労したよ。ゲートも出したり入れたりで練習が大変だった。ただ1回使ってからはいい方に向いてきた。本来なら先週のクイーンCを使うつもりだったが、1勝馬は除外の可能性もあったし、具合が良かったからね。“前倒しする分にはいいだろう”と思ってエルフィンSを使ったんだ。まだまだこれからという感じで伸びシロは大きい。あの末脚を見ても父(ディープインパクト)のいいところを受け継いでいる」とさらなる進化の可能性を口にする。

 ルージュバックはクラシック制覇への最大の障壁となりそうだが、「勝ち負けよりも、切磋琢磨していきたい」と凱旋門賞挑戦の時と同じフレーズを口にした須貝調教師。それぞれが無事にいけば、顔を合わせるのは本番の4・12桜花賞だ。

 昨年はハープスター、レッドリヴェール、ヌーヴォレコルトでハイレベルの激戦になったが、今年はそれを上回る戦いとなるのか。現時点で言えるのは、この無傷の2頭の研さんが世代そのものをリードしていく可能性が高いことだろう。今年もハイレベルな「女の戦い」から目が離せない。

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