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ダート短距離の主役となるダノンレジェンド/東京スプリント・大井

  • 2015年04月09日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



本番と同じコースを経験できた意味は大きい

 今年のダート短距離路線の主役になろうかというダノンレジェンドが、今年JBCの舞台となる大井でその強さをあらためて見せた。

 2番枠に入ったシゲルカガが逃げ、ダノンレジェンドがそれをマークというのは予想された展開。ゴーディーにも行く可能性はあったが、さすがに中央馬相手の1200m戦では互角に張り合うほどのスピードはなかった。それにしても先行2頭は、ゲートの出は決していいほうではないが、ダートでの二の脚が速い。中山ダート1200mでは、スタートの芝の部分で他馬も行き脚がつくためすぐにはハナに立てず、ダートの部分に入ってからようやく勢いがつくという感じだが、さすがにここでは一瞬にしてシゲルカガが先頭に立ち、ダノンレジェンドもすぐにその直後の位置をキープした。

 前半3F34秒1というラップは、シゲルカガが逃げ切った千葉Sとまったく同じ。千葉Sが良馬場だったのに対して、今回はスピードの出やすい不良馬場ゆえ、シゲルカガにとっては楽なペースだったはず。3〜4コーナー中間から直線を向いたあたりでは、ダノンレジェンドに2〜3馬身ほども差をつけて楽な手ごたえで逃げていた。それだけに、残り200mを切って、シゲルカガをとらえ、最後は2馬身突き放してというダノンレジェンドの強さがあらためて際立つ一戦となった。

 ダノンレジェンドは、これでダートの短距離重賞を3連勝。昨年10月のテレビ静岡賞からブリンカーをつけるようになってレースに集中できるようになり、逃げるか2、3番手の好位を追走して安定して力を発揮するようになった。前走黒船賞を勝ったあと村山調教師が、「根岸Sも考えたけど、こちら(黒船賞)を選択して成功した。マイルよりもスプリント路線に行きたい」という、路線の選択もうまくいっている。ただこの3連勝は、自分の形に持ち込んでのレースであり、依然として馬群に揉まれたらどうなのか、という不安は残している。今回は真ん中の枠に入ったものの、外の枠にこの馬より前に行きそうな馬はおらず、出遅れさえしなければという安心感はあっただろう。今後、シゲルカガのような、何が何でもという逃げ馬が1、2頭でも外の枠に入ったときには疑ってかかる必要はあるかもしれない。次走は北海道スプリントCを予定しているとのこと。村山調教師は黒船賞のときから目標をJBCスプリントに定めており、今回、本番と同じコースを経験できた意味は大きい。

 2着にはシゲルカガが粘った。千葉Sでは最後脚色が一杯になって後続勢に一気に詰め寄られ、それでも何とか逃げ切ったというレースだったが、今回は前半のラップが同じでも馬場状態的にペースが楽だったぶん、ダノンレジェンド以外の馬は振り切った。2歳時の2勝がいずれも芝の短距離だっただけに、その路線を使ってきたのだろうが、父がパイロでもあり、ダートのほうが力を発揮できるのではないか。ただ、芝・ダートとも1400mでは4着が最高という成績で、1400mでも長いということであれば、ダートの、特に地方の交流重賞で1200m以下だけを選択していくということは難しく、レースの選択に悩むことになるかもしれない。

 昨年のこの路線で中心的存在だったノーザンリバーは3着。昨年終盤のJBCスプリント、カペラSはレースの流れに乗れず、らしくないレースが続いた。今回は4カ月ぶりの休み明け。中団追走はいつものことで、上り3Fは勝ったダノンレジェンドを上回るメンバー中最速の36秒1で、昨年の好調時ほどではないものの、この馬の持ち味は発揮した。ただ昨年のかきつばた記念でも水の浮くどろどろの馬場に脚をとられ、まともに脚を使ったのがゴール前の100mだけだったということもあり、水が浮くほどの不良馬場は不得手ということはありそうだ。さらに今回は1、2着馬より1kg重い57kgという斤量的なこともあっただろう。それを考えれば、次走以降あらためて期待のもてる内容ではあった。

 4着グレープブランデーは3番手を追走していたが、前2頭が直線を向くまで楽な手ごたえだったのに対して、3コーナー手前から追い通しだった。マーチSにも登録があり、1800mか1200mかの選択でこちらを選んだとのことだが、7歳になって初めての1200mで、58kgを背負ってということで、いきなりスピード競馬に対応するのは難しかった。予想でこの馬を無印としたのは、それゆえ。それでもノーザンリバーにクビ差の4着は、さすがにGI馬の底力だろう。

 これまで地方のダートグレードで6戦オール連対だったドリームバレンチノはまさかの6着。JBC以来の休み明けを黒船賞でひと叩きされ、しかもその黒船賞より1kg軽い58kgということで条件的にはよくなっていただけに意外な惨敗だった。ただ残り300mのあたりで、苦しくなって内に寄れてきたグレープブランデーと、内で行き脚をなくしていたピエールタイガーとの間で狭くなったところをこじ開けるようにして抜け出し、一旦は3番手という場面があった。ところがその後に急激に失速。グレープブランデーと接触していたようにも見え、そうした何らかの要因で馬が走る気をなくしてしまったということはありそうだ。

 地方馬では、ダートグレード2着の実績がある小久保厩舎の2頭、ジョーメテオが5着、サトノタイガーが7着と、地方馬の中では上位を確保。ダートグレードで上位を争うには、ともに条件や展開などの助けが必要なのかもしれない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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