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今こそ、騎手目線

  • 2015年07月17日(金) 18時00分


◆ネットで拡散され話題になったレース中継企画

 最近欧米の競馬で、騎手のヘルメットにカメラをつけた騎手目線の映像をよく目にするようになった。

 今年の英国ロイヤルアスコット開催のG1ダイアモンドジュビリーSでは、人気薄ながらカメラをつけていたデットーリ騎手のアンドラフテッドが勝ったため、その映像がネットで拡散され話題になっていた。これは、イギリスの公共放送のひとつ、チャンネル4のレース中継の企画だったようだ。

 ぼくが初めて騎手目線の映像を見たのはアメリカの競馬で、定かな記憶ではないのだが、たしか2000年ごろだったような気がする。今のようにありとあらゆる映像がネット上に落ちているという時代ではないので、見たのはESPNでやっていた競馬ダイジェストの番組だったと思う。当時よりカメラの小型化、高性能化の技術が格段に進歩し、またパソコンさえあれば手軽にネットで映像を公開できるようになったので、そうした映像を目にする機会も増えたのだろう。ちなみにYouTubeで「Jockey Cam」や「Helmet Cam」などのキーワードで検索すると、騎手目線の映像を見つけることができる。

 実は地方競馬でも騎手のヘルメットに小型カメラをつけてという実験をやったことがある。2006年度、開幕前の盛岡競馬場。その年の4月からオッズパークで地方競馬の馬券が発売されることになり、オッズパークの親会社であるソフトバンクプレイヤーズの企画として実験的に行われたもの。いずれ実際のレースでもという期待はあったが、日本ではまだ実現していない(と思う)。検索してみたところ、中央競馬ではデビュー前の騎手候補生の模擬レースでの騎手目線の映像を公開したことがあるようだ。

 なぜそんなことを思ったかというと、電車に乗っていて「ネイマール目線」という広告を見たから。サッカーのネイマール選手を起用した某家電メーカーの広告だ。目の横というか耳の上につけるウェアラブルカメラで、これを騎手がつければ簡単に騎手目線の映像が撮れるだろうなあと思った次第。重さはわずか45gで、大きさ的にも騎手の負担になると思えない。実売価格は25,000円前後で、値段的にもお手頃だ。

 日本では、まず公正確保というところが問題になるのだろうが、どこかにやってみるという勇気のある主催者はいないだろうか。最近のスポーツの中継では、さまざまに迫力のある映像が見られるようになってきているだけに、競馬でもそのくらい思い切ったことをしてみてもいいのではないか。競馬中継のレース映像でも、ワイプ(映像の一部に別の映像を表示すること)で見せるなどすれば、おそらくファンは「おっ!?」と思うだろうし、普段はあまり競馬に興味がないという人の目には新鮮に映るに違いない。

 写真判定やスターティングゲート、新種馬券など、日本の競馬で“初めて導入”をいくつもやってきた大井競馬さん。とりあえず今年開催されるJBCあたりで、いかがでしょうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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