スマートフォン版へ

ダート適性以上に経験が生きた勝利/兵庫ジュニアGP

  • 2015年11月26日(木) 18時00分


◆戸崎圭太騎手の落ち着いた手綱捌き

 中央4頭のうち3頭が初ダートということで、ファンだけでなく記者など予想の専門家の多くがその判断に迷っていたようだったが、結果的に勝ったのは、中央でも唯一ダートを経験していたサウンドスカイだった。

 芝で結果が残せず、ダートで2連勝だったのだから、適性があったのは当然なのだが、それ以上にダートでの2戦で砂をかぶる経験が大きかったように思う。あらためて前走のなでしこ賞を振り返ってみると、最内枠からのスタートでラチ沿いで折り合い、直線を向くと前がカベになっていたためか横にスライドするように4頭分ほども外に持ち出し、並ぶ間もなく前の馬たちを交わし去った。

 今回は、前がカベになって行きたがるオデュッセウスのうしろをまったく動じることなく追走。2走前、初勝利のときに手綱をとっていた戸崎圭太騎手も落ち着いていた。3コーナー手前で一気にレースが動いて中央4頭の勝負に絞られたときも、他の3頭を前に見て追い出しのタイミングを見計らっていた。4コーナーで外に持ち出したときの手ごたえの違いは明らかで、直線を向いて抜け出していたコウエイテンマを余裕を持って交わし去るという完勝。

 勝ちタイムの1分28秒6は平均的なもの。エーデルワイス賞から北海道2歳優駿を連勝したタイニーダンサーはすでに中央に移籍し年内は出走しない予定で、仮にサウンドスカイが全日本2歳優駿に出走するのであれば、北海道2歳優駿でクビ差2着だったスティールキングとダート2歳チャンピオンを争うことになるのだろう。デビュー3戦目の未勝利勝ち(11月22日京都第2レース)で圧巻のレースを見せたラニが出てくれば強敵となりそうだが、1勝馬での選出は難しいだろう。

 初ダート3頭の中でもっともスムーズな競馬をしたのが、2着のコウエイテンマだった。1コーナーを回るところでハナを獲りきると、3コーナーで一旦はオデュッセウスに前に出られたものの、それでもラチ沿いのコーナーワークもあって、完全に前に出られることなくクビほどの差で抵抗。すぐにハナを奪い返した。直線で単独先頭。最後に勝ち馬に交わされるまで、一度も砂を被ることがなかった。予想でも触れたように、父カジノドライヴ、母父ミルジョージという血統的な面で初ダートをこなしたということもいえそうだ。

 力を発揮できなかったのが3着のオデュッセウス。最内枠ゆえ、逃げることも考えられたが、5番枠のタケマルリートが行く気を見せたため控えることになった。しかし砂を気にしたのか、前に馬を置いたことで1周目のゴール板過ぎで完全に掛かってしまった。岩田騎手は外に持ち出そうとしたが、さらに外からはコウエイテンマが来ていて、前には2頭のカベ。馬と喧嘩するような形になり、向正面までずっと掛かったまま。3コーナーで先頭に立ったが、さすがに直線では余力がなかった。

 マシェリガールはスタートこそほぼ互角に出たものの、ダッシュがつかず後方から。向正面で一気に動いて行ったのは、勝つにはそれしかなかったのだろう。しかしサウンドスカイ以外の中央2頭が譲らなかったため一気にペースアップ。マシェリガールは行ききれなかったところでギブアップ。中央4頭の中では唯一単勝が10倍台だっように、能力面でも差があったのだろう。

 期待されたマイタイザンは、地元最先着ではあったものの、浦和のジョーフリッカー、北海道のナイスヴィグラスに先着されての7着。デビュー以来楽にハナを獲っての逃げ切りで連勝し、前走兵庫若駒賞では外枠もあって初めて2番手からの競馬になったが、それでも能力差から逃げているのと同じようなマイペースの競馬だった。それが今回は、ある程度予想されていたことだが、一転して厳しい展開。実は前半800mの通過は、兵庫若駒賞の49秒9に対して、50秒4と今回のほうがわずかではあるが遅かった。しかしその後の急激なペースアップにはさすがに対応できなかった。デビュー6年目、兵庫若駒賞が重賞初制覇だった杉浦健太騎手ともども、これを経験しての成長に期待したい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング